ケイの読書日記

個人が書く書評

小栗虫太郎「完全犯罪」

2007-03-07 10:38:41 | Weblog
 「黒死館殺人事件」のスケールを一回り小さくしたという感じの作品。
 もちろん「黒死館―」ほどのページ数はないし「黒死館―」ほど衒学趣味は強くないので、ちょっぴり読みやすいが、やはり最初から最後まで小栗虫太郎です。


 193x年、南支那の湖南の西端にある異人館で奇妙な事件が起こる。
 売笑婦くずれの女の部屋から狂ったような笑い声がおこり、彼女一人しかいないはずなのに男の忍び笑いがする。女の笑い声が不意にやんだので、不思議に思い部屋に入ってみると、男はおらず彼女は死体となっていた。
 死因は自然死を目的にした他殺。
 しかし、部屋の扉の前には4人の男がマージャンをしていたし、窓の外には見張りの者がいた。つまり完全な密室。


 トリックは、現実には不可能だろうが、なかなか独創的。
 色んな医学用語や薬品名が飛び交っているが、これって本当だろうか? ちょっと信憑性が低いような…。


 戦前の作品なので、固有名詞が非常にわかりにくいし、その時代の中国南部の政治状況がどうなっているのかも、私にはサッパリわからない。

 なにしろ、探偵役のザロフという男はウズベクユダヤ人らしいのだが、モスクワ大学を出て秘密警察に入り「プラウダ」誌幹部毒殺事件を解決したらしい。
 つまりソ連の人なんだが、どうして中国南部にいるの? 中国南部を共産化しようということなんだろうか? でも中国には毛沢東がいただろうし…。 

 「黒死館―」の時も感じたが、どうして注釈をつけないんだろうか? 注釈ばかりになってしまうから? いいじゃない。ヴァン・ダインもそうです。

 

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2 コメント

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たかさんへ (kei)
2007-03-08 11:12:13
 横溝正史の代わりで世に出た、という話は聞いたことありますが、この作品がそうなんですか。ふーん、記念すべき作品ですね。

 抹殺すべき劣悪な遺伝子を持つ家系、というのはユダヤ人虐殺を思い出させますね。
 音楽家の家系があるのですから、犯罪者の家系があっても不思議はないですが…。
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Unknown (たか@ヒゲ眼鏡)
2007-03-08 02:14:54
ザロフはコミンテルンの共産勢力の指導に来た人なんじゃないですかねえ?
しかし、日本人が全く出て来ないのも珍しいですよね"(^^;"。

この作品、横溝正史が急病で原稿を落としたため、急遽代りに載せられたそうですね。
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