ケイの読書日記

個人が書く書評

橘由歩「身内の犯行」

2009-09-06 16:35:44 | Weblog
 いまや殺人事件のうち、2件に1件は「身内」で起きている、らしい。(あ、この本は推理小説ではありません。現実の事件のルポ)

 しかし、考えてみればうなづける。「通り魔殺人」「無差別殺人」もあるが、人間関係のもつれが殺人事件の原因になるなら、身内こそふさわしい。
 だいたい金がらみの犯行なら、身内の方が遺産なり保険金を受け取りやすいので動機があるのだ。

 亭主が殺されたら女房を、女房を殺されたら亭主を、まず疑えって言うじゃないか。

 筆者は「いまや…」と書いて昔よりも現代の方が身内の殺人事件は多くなっているような書きぶりだが、統計的にはどうなんだろう。
 昔の方が家族関係が濃密な分、ただの喧嘩ですまなくなって、行き着くところまで行ってしまう気がする。
 昔の方が、鎌とか斧とか、凶器になりそうなものが身近に転がっているしね。

 しかし、つまらない事で親を殺しているなぁ。
 ある男は、買ってきて欲しい食べ物リストをメールで母親に送る。母親は買って来てくれた。お礼を言いに母の部屋へ行くと、母は一人で食べていた寿司をそそくさと隠した。これが殺害のキッカケだ。
 もちろん、そこに行くまでには、子どもの頃の虐待があり、自分自身が抱えている病気があり、現在の自身の不遇な状況がある訳だが、「おまえも食べるかい?」と母親がエビやイカのお寿司を別の小皿に取り分けていたら、彼女は死ななかった。
 でも身内の犯行なんて、そんなものかもしれない。

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