ケイの読書日記

個人が書く書評

宮部みゆき「楽園㊤㊦」

2011-02-01 11:08:47 | Weblog
 かなり長い小説だが、一気に読めた。なんといっても導入部がミステリアス。

 フリーライター前畑滋子のもとに、萩谷敏子という女性が現われる。12歳で死んだ息子に関する不思議な依頼だった。
 少年は16年前に殺された少女の遺体が発見される前、それを絵に描いていたといいう。
 
 ねねね、本当にそそられる書き出しでしょう?

 その少女は、素行の悪さに悩む両親によって殺され、16年も自宅の下に埋められていた。ところが火事で自宅が半焼。隠し切れないと思った両親は自首するが、時効が成立し罪には問われない。
 しかし、事件はそれでは終わらなかった。

 ミステリーの部分も面白いが、それだけでなく、親の心情も丁寧に書かれてあって、本当に身につまされる。

 愛情を注いで、懸命に育ててきた我が子が、自分の手から離れ、親の目には見えない流れにすくいとられ、みるみるうちに遠ざかっていく。手が届かない。声が届かない。
 振り返ってくれた子どもと目が合っても、そこには理解しがたい暗い色が見えるだけ。

 本当に刺し違えるしかないと覚悟を決めかねない時が、子どもを育てていると、あるんだよね

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