ケイの読書日記

個人が書く書評

恩田陸 「MAZE」(メイズ)  双葉文庫

2018-11-11 17:30:57 | 恩田陸
 神原恵弥シリーズの第1作。以前読んだ「ブラックベルベット」が第3作ながら良かったので、このシリーズを読んでみたくなった。映画でもTVドラマでも、第1作が一番面白いから期待して読んだが、期待を裏切らない秀作。

 アジアの西の果て(イラクと国境を接していて米国とも良好な関係というから、トルコかヨルダン?)地元の人でもめったに訪れない荒野の果てに、ポツンと白い直方体の建物が建っている。遺跡のようにも見えるが、何の文献も残っていない。ただ、不気味な言い伝えだけが、地元で囁かれている。

 一度その建物の中に入ると、出てこれない人間が多数いるらしい。内部は細い通路になっていて、迷路のような構造で、2人並んで進むことはできない。1人ずつ数珠つながりのように入るしかない。しかも出入り口はひとつだけ。
 昔、地元の軍の偵察部隊が30人、この建物に入り、そっくり消失してしまったらしい。
 ただ、一緒に入っても、出て来れる人と出てこれない人がいる。3人で入っても、真ん中の1人が、いつのまにかいなくなる、といったような。動物も同じ。

 その「人間消失のルール」を解明すべくやってきた4人の男。1人は本シリーズの主人公・神原恵弥で、他は彼の友人でコック兼雑用係の満(彼は「ブラックベルベット」にも登場)あとの2人は米軍関係者と地元の有力者。

 ね?! 本当にそそられる設定でしょ? 
 あそこら辺は、地面からニョキニョキ岩の塔が生えているみたいな、どう考えてもこんな物、自然に作れる訳がないと思うような奇観が、あちこちにあるんだもの。吹きさらしの荒野の少し小高くなっている場所に、直方体の白い建物があって、その周りには、サボテンが進化した鉄条網のような灰色の植物が生い茂っている、そんな景色がいかにもありそう。
 「世界ふしぎ発見!」で、ミステリーハンターが、丘の上の建物らしきものを指さして、「皆さん、あれはなんでしょうね?」と叫んでいる姿を想像しちゃうなぁ。

 コック兼雑用係の満が、持ち前の推理力を働かせて、いろんな仮説を立てていく。特に「この建物は一種の食虫植物説」は怖かったなぁ。食虫植物の口の中に、匂いに誘われやってきたハエがポトッと落ち込んで、どんどん溶けていく。うわーーー! もしこの説が本当だったら、オカルト小説じゃないか! 私、オカルトは嫌いなんだ。恩田陸はオカルトを書かないから絶対違う!大丈夫! と自分を励ましながら、読み進んだ。

 最後は、あっと驚くというか、そりゃそうだ、米軍関係者がいるんだもの、という結末。満が真相に肉薄する。

P.S. そうそう、「MAZE」って迷路という意味です。
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