ケイの読書日記

個人が書く書評

芥川龍之介「彼」

2012-02-06 12:53:13 | Weblog
 先回読んだ「歯車」は、ちくま文庫の芥川龍之介全集6に入っていた。芥川は基本的には短編作家だから、「歯車」以外にも多数入っている。

 「河童」とか「或阿呆の一生」とか、有名な作品もあるが…私は「彼」という小品が好きだな。

 これは、芥川の学校友達・平塚逸郎という人の事を書いた作品。
 芥川という人は、すごく取っ付き難い孤高の人、というイメージがあるが、彼の私小説っぽいものを読むと、そうでもない。
 案外、友達が多いのだ。

 この平塚君とは、旧制中学の頃からの友人で、旧制高校へ行ってからも、平塚君の下宿に度々遊びに行き、平塚君が岡山の六高へ入学してからも、文通していたようだ。
(芥川と文通!!! すごい人だね。その手紙は残っているんだろうか?)
 芥川も平塚君が身近にいないのを物足りなく思い、共通の友人Kと、どうしているんだろうかと噂をする。

 そうそう、友人Kによると、平塚君はホモエロティッシュな気を起こさせない美少年らしい。

 しかし、平塚君は1年もたたないうちに腎臓結核にかかり、東京に戻って来た。芥川はたびたび彼を見舞う。恋愛話で盛り上がったりして。
 でも、平塚君は病状が悪化して海辺に転地した。その彼を、芥川は冬休みを利用し、はるばる尋ねていく。

 この時代、伝染病の結核患者はすごく忌み嫌われた。だから、泊りがけで見舞いに行くという事は、仲の良い友人にしても大変だったと思うよ。

 その後、平塚君は大喀血して亡くなった。まだ若いのに気の毒な事だ。

 しかし、芥川はすごく不衛生な一高の寄宿舎にいても結核にならなかったんだから、見た目より丈夫だったのかもしれない。


 こういった、学生時代の幸せな思い出を芥川が持っていたと思うと、少しほっとしますね。

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