ケイの読書日記

個人が書く書評

明野照葉 「汝の名」

2015-11-18 10:08:40 | Weblog
 犯罪小説…というべきか。
 わがまま、自己チューの派手女と、失恋して会社を辞め派手女のマンションに転がり込んだ地味女、という二人のヒロインがいる。
 前半は、会社を経営している派手女の、イライラの捌け口が地味女に向かい、暴力も振るわれるが、ひここもって働いていない地味女は収入もなく、ひどい扱いにもじっと耐えている。しかし、それだけでは終わらない。
 以前は製薬会社に勤めていた地味女は、その知識を使い、派手女を圧倒し支配するようになる…。

 この支配・被支配の関係の逆転を、興味深く読むことができるが、それ以上に私が面白く感じたのは、二人の女の仕事の内容。

 派手女は、人材派遣というと聞こえはいいが、偽者を派遣するのだ。
 例えば、結婚式を挙げるのに、相手側と人数をそろえるのが一般的だが、親や親せきと疎遠だったり、式に来てくれそうな友人がいない場合、その親せきや友人になりすまし、式に参列する偽者を派遣。
 リッチな有料老人ホームに入居しているお婆さんには、面会に来てくれる身内がいない。周囲のホーム仲間に見栄をはりたいので、かっこいいニセの孫息子を派遣する。 
 これらなどは罪がないが、もっと悪どいこともやる。
 経営がキビシイ会社が、辞めさせたい社員を、ニセのヘッドハンティングで離職させ、リストラ完了!なんて手口もある。その、ニセのヘッドハンティングをするのが、派手女の経営する会社。
 もちろん新しく入社した会社はペーパーカンパニーに近いもので、毎日の無意味な仕事や上司のパワハラに耐え切れず、すぐ辞めることになる。
 違法スレスレ…というか、違法?

 地味女のやってる事は、犯罪そのもの。偶然知り合った近所の年寄り連中が、意外にお金を多く持っていることを知り、それをくすねることに成功する。
 例えば、銀行のお金を他の銀行に預け替えるとき、歩くのが億劫な老人の代行をし、その利子をちょろまかすのだ。(いつも、孤独な年寄りの話し相手になってあげているんだもの、このぐらい貰うのは当然だわ)と。
 だんだん大胆になってきて、老人に一括払いで保険に加入させ、その手続きを自分で代行し、勝手に解約し、解約金を自分の口座に入金させようと画策する。

 少子高齢化の日本において、この地味女の犯罪は、増えていくだろうなぁ。
 みぃ太郎、悪い奴をひっかいてやれ!!

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