ケイの読書日記

個人が書く書評

群ようこ 「老いとお金」 角川文庫

2023-05-07 14:44:16 | 群ようこ
 書き下ろしエッセイ。私にしては珍しくブックオフではなく本屋で購入。群さんが弟さんやお母さんから無心され続けた顛末を書いてある。
 家族の中で突出して稼ぎがいい人がいると、その人を皆が金銭的に頼るようになるのはよくある話だが、それにしても頼りすぎ。ひどい。
 お母さんは、ちゃんと年金を貰っているのに、ゆとりある暮らしがしたいといって、群さんに月40万円送金させるし、弟さんは一流大学を出て一部上場企業に勤めているのに、趣味の高額なギターを群さんに買わせたり、頼るというよりタカッてる。
 
 どうして私がこうも憤慨しているかというと、前々回ブログでUPした山本文緒さんの事を思い出すからだ。山本さんは、直木賞を受賞してからも売れ続けている小説家だが、やはり不安定な職業なので、先々の事を考え、90歳まで働かなくてもそこそこの生活ができるだけのお金を貯めていた。(とはいっても彼女は58歳で亡くなったが)どうしてそんなことができたかというと、山本さんの収入が多いからという事だけじゃなく、彼女の身内にお金をせびってくるような人はいなかったからだ。旦那様は出版社勤務だし、子どもはいない。お父様は亡くなっているし、お母さんお兄さんはちゃんとした人で、娘や妹に金銭的に依存したりしない。だから山本さんはせっせとお金を貯めることができた。

 それに比べ、群さんのお母さんや弟さんは何だよ!!!いつまで仕事があるかわからない群さんに「しっかりした個人年金に入ったら?」とか「この先どうなるかわからないから貯金をしっかり!」とかアドバイスできないのかな?それとも「変な男にひっかかってお金をだまし取られるより、僕たちが使ってあげよう」なんて思ってるのかな?もちろん群さんはそんな男には引っ掛かりません。
 一番散財したのは実家を建てたこと。お母さんが群さんに「弟が家を建てて母親と同居したいと言っている。お金を援助してくれないか?」もう一方で弟さんに「お姉ちゃんが、弟が家を建てるなら援助すると言っている」と両方を丸め込み、億を超える家を建てた。その2/3を群さんがローンを組んで支払ったのに、群さんの部屋もないし鍵もくれない。これ、ひどいよね!? 大もめにもめ、最終的に群さんは自分の2/3の権利を弟さんに売ることにするのだが、弟さんは家はもらったのだから支払わないと再び大荒れ。

 この弟さんとお母さんは、群さんの初期エッセイによく登場する愛すべき人たちなんだが、お金が絡むと人間はこうなってしまうんだね。悲しいです。
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