ケイの読書日記

個人が書く書評

ジョン・スラデック「見えないグリーン」

2009-11-05 11:31:22 | Weblog
 法月綸太郎がやたら褒めていたので読んでみる。

 「見えないグリーン」という題名なので、緑の保護色でも使ったトリックだろうか?と勝手に思っていたら、これはMr.グリーン、つまり人の名前。

 ストーリーはこうだ。
 40年余り昔、ミステリ好きの7人の男女が集まって『殺人クラブ』という名の読書会を開いていた。やがて第二次世界大戦。時は移り、今ではメンバーは互いに疎遠になっている。
 そうしたある日、グループの一人が旧交を温めようとして昔の仲間に再会を呼びかけると、それに連動したかのように仲間が次々と殺されていって…。

 こう書くと、すごく面白そうだが実際は…そうでもない。
 第一第二第三と3件の殺人がおこる。特に第一の殺人のトリックは意表をついたもの。作品を通じてトリックは優れていると思う。細かい伏線があちこちに張ってあり、作者のフェアであろうとする姿勢がよく現れている。

 しかし、致命的な欠点は、ミステリとしての雰囲気が無い。トリックは秀逸でも小説としてつまらない。
 これは訳が悪いのか、それとも元々こういう文章なのかなぁ。作者のスラデックという人はSF作家が本職だそうです。

 すごく平坦なホームドラマの中に、斬新なトリックが投げ込まれている、という感じ。

 これは、登場人物の、特に名探偵役のサッカレィ・フィンのキャラが薄いということも関係しているんだろうね。
コメント (4)
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