ケイの読書日記

個人が書く書評

泡坂妻夫「11枚のとらんぷ」

2011-05-03 23:12:28 | Weblog
 名作といわれるだけあって、非常に凝ったつくりの贅沢な作品。

 アマチュアマジシャンサークルが公民館で発表会を開いていた。そのフィナーレで美人マジシャン・志摩子が、一発の銃声を合図に舞台中央の人形の家から飛び出す…はずだった。しかし、その志摩子は、同刻頃、自分のマンションで殺害されていた。なにがあった?

 本筋のミステリの間に『11枚のとらんぷ』という奇術短篇小説集が挟まれていて、これがまた奇抜なマジックトリックの連続で、すごく面白い。
 私のような、奇術にあまり興味の無い人間でも、十分楽しめる。
 こんなにネタをあれこれバラしてしまったら、マジシャンの人、やりにくくなるよね、と陰ながら心配してしまうほど。

 もちろん、ここにも伏線がいっぱい張ってある。
 まあ、犯人はだいたい雰囲気で分かる。ただ、何を決め手に、その人を犯人とするか、という所が難しい。

 殺される直前、志摩子が取った不可解な行動(初夏の暑い日にガスストーブのスイッチをひねってガスを漏れ出させる)を、ダイイングメッセージとして、探偵役が犯人を追及するが、いくらなんでも無理がある、滅茶苦茶だと思いながら読み進んだら、最後に犯人の告白でその行動が解決してスッキリした。
 それだったら志摩子の不可解な行動が理解できる。ちなみに、電気ストーブでは不可。ガスストーブじゃないと。
コメント
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