日々是マーケティング

女性マーケターから見た日々の出来事

「カツマー」的と「しがみつかない生き方」に見る、日本

2009-12-09 17:20:06 | 徒然
この夏、話題になった本がある。
精神科医の香山リカさんが書かれた「しがみつかない生き方」と言う本だ。
話題になった理由の一つは、次々と出される著書が話題になり、メディアなどにも積極的に登場する経済評論家・勝間和代さんについての記述があったからだ。

勝間さんの本も香山さんが書かれたこの本も、実は立読み程度で、シッカリ読んでいるわけではない。
ただ、どちらもある種の違和感を感じている。
特に勝間さんのある種の断定的な本のタイトルと、言い回しには「それほど、スッパリ割り切れたら良いですね~。現実は、もっと複雑なんですけど・・・」という気がしていた。

ところが、この勝間本の愛読者~勝間さん信望者のコトを最近は「カツマー」と呼ばれるらしい。
残念ながら、私の周囲(40代後半~50代の女性)には「カツマー」と思しき女性がいないので、実際の「カツマー」とはどんな人たちなのかは分らない。
ただ、世間一般に呼ばれる「カツマー」と呼ばれる人たちは、「人生にHowtoを求めているのかな?」と言う気がするコトがある。

もう一つ思うコトは、「カツマー」と呼ばれる人たちが求めているのは、姿を変えた「ロールモデル」なのでは?と言うコトだ。
私が学生だった頃、「JJ」と言う雑誌が持て囃された。
「JJ」に登場する読者モデルは、地方の学生にとってある種の憧れでもあり、ライフスタイルの目標のようなトコロがあった。
それが、今では黒田知永子さんに代表されるような、「若々しく、オシャレな勝組ママである私」へと変化していった。
数年前に持て囃された「シロガネーゼ」と呼ばれる、実業家や弁護士と言った職業の夫と白金に住む専業主婦像も同じだろう。
それが「カツマー」へと、変化しただけなのではないだろうか?

ただ「カツマー」と「シロガネーゼ」や黒田知永子さんと大きく違うのは、「How to」が紹介され、「目標を持ち、努力すれば誰でもなれる」と思い込ませているコトだろう。
言い換えれば「カツマー」は、「現実的な生き方のロールモデル」なのかも知れない。
少なくとも黒田知永子さんや「シロガネーゼ」と呼ばれる、富裕層(?)の奥様たちを見て、「自分も努力すれば、同じようになれる」とは、考えたりはしなかったからだ。
そして、相反する考えである香山さんの本が紹介されると、そちら側になびいてしまう。

香山さんにしても勝間さんにしても、今の社会の中では恵まれた側の人だろう。
そして、今一番戸惑い、社会の片隅で困っている人たちとは、対極にある人たちなのではないだろうか?
その人たちが、自分と対極にある人を、現実的ロールモデルのように考えるというコト自体が、今の日本の思考力低下と閉塞的状況のような気がする。