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熾烈な開発競争となり始めた「免疫療法」

2019-03-26 21:29:07 | ビジネス

今日付けの日経新聞のWEBサイトに、「がん免疫療法」についての記事が2つあった。
同じ日に同じテーマの違う記事が重なってある、というのはとても珍しいような気がする。
日経新聞:ノバルティスがん治療薬、日本で承認 米で5000万円超
日経新聞:武田、新型がん免疫薬「CAR-T」の治験へ

ノバルティスも武田も「CAR-T(=キメラ抗原受容体T細胞)」という、細胞に着目した新しい免疫治療薬であることには変わりない。
ただノバルティスの場合、血液のがん(=白血病)を対象としているのに対し、武田をはじめとする他の製薬企業は「固形がん」と呼ばれる、乳がんや肺がんを治療の対象としている、という点で大きく違う。
確かに対象としているがんは違うのだが、治療の基本的な考えは同じだと思う。
そして今なぜこの「CAR-T細胞」による免疫治療が注目されているのか?と言えば、これまでの抗がん剤治療に比べ遥かに副作用などが少ないと言われているからだ。
昨年聞いた「CAR-T細胞療法」の講演会では、骨髄移植をしても効果が無かった白血病(お子さんに多い「急性白血病」)患者のお子さんに、この「CAR-T細胞療法」の治験を行ったところ、午前中の治療で、午後には通常通りの食事などを一般病室ですることができた、というレポートもあった。
これまでの抗がん剤治療であれば、激しい副作用と戦いながら2週間程度の治療を受けなくてはならない。もちろん免疫機能そのものが低下しているために、無菌室で過ごさなくてはならない。
それほど、体力的にも精神的にも負担が少ない、と言われているのが「CAR-T細胞療法」ということのようだ。
何故なら「CAR-T細胞」による治療は、患者本人の細胞を使うからだという。

そしてこの「CAR-T細胞療法」は、ノバルティスのような企業だけではなく、中国の製薬企業なども参入しているという。
実はこの「CAR-T細胞」についての治療に向けての研究は、米国と中国が競い合っている、という話も講演会ではあった。
それほど国レベルで熾烈な研究・開発競争をしているのが「CAR-T細胞」による免疫治療薬だともいえるのだ。
もし、日本の企業にとって優位な点があるとすれば、「固形がん」に対する「CAR-T細胞療法」である、という点かもしれない。

今後のがん治療は「CAR-T細胞療法」のような、免疫療法へと変わっていく可能性は高いだろう。
ただその過程においては、治療への期待とは裏腹に、製薬企業間・国の研究への投資など、多くの市民には分からない熾烈な闘い(のようなもの)があり、そう簡単ではないと思っている。