日経新聞のWebサイトに、「倍速消費」という話題の記事があった。
日経新聞:ヒット曲「サビまで待てない」倍速消費、企業も走る
有料会員向けの記事なので、全文を読むことはできないのだが、「イントロがない楽曲が、ヒットする」という話は、数年前からあったような気がする。
理由として挙げられているのが、サブスクリプションを利用してストリーミング再生で音楽を聴くようになったから、という内容がほとんどだったように記憶している。
1ヵ月の定額で、より数多くの楽曲を聴き倒そうと思えば、サビと呼ばれる「楽曲の一番盛り上がるパート」だけ聞けば良い、ということになるのかもしれない。
逆に、自分の好きなミュージシャンの楽曲だけをフルで繰り返し聴き続けたい、というユーザーもいるはずだ。
そう考えると、「イントロ0秒」の楽曲だけがヒットしているのか?というと、決してそうではない、ということに気づくはずだ。
実際2021年のヒット曲を分析したデータがあるのだが、「イントロ0秒」という楽曲も多いが、10秒以上の楽曲もそれなりの数があり、ヒットをしている。
note 藤田太郎:『2021年ヒットソングTOP100』のイントロ秒数を調べてみました
ではなぜ「イントロ0秒」という点に注目されるのか?というと、それが「倍速消費」の象徴のように扱われているからだろう。
あくまでも個人的な考えとして、「イントロ0秒」と「倍速消費」は、別だと考えている。
例えば、「登録後3か月間無料」というサブスクリプションサービスがあるとする。
この「無料期間」により数多くの利用を考えれば、「倍速消費」をする必要がある。
以前、FM番組のMCの方が「ネットの漫画サイトの登録をして、大ヒット漫画を読み始めたのですが、連載から時間が経っているので、無料サービスの間で読み切れそうもない」という趣旨の話をされていたことがあった。
「倍速で読む」理由が「無料期間中に読み切りたい」という、動機があるということなのだ。
そして記事中で指摘されている、「無駄な時間を過ごしたくない」ということにも、注目してみる必要があると考えている。
「無駄な時間」と考えて、倍速消費をしているとすれば、「無駄な時間」と感じているものは何だろう?ということなのだ。
何等かの目的があり、それらのサービスを受けているはずだ。
ニュースサイトをネットで見た時、「倍速消費」の中心となっているのは、中高校生~20代前半(=Z世代)が多く、彼らは「友達と話しを合わせるため」という理由で、倍速消費をしているというインタビュー内容だったと記憶している。
とすれば、ポイントとなるのは「Z世代」、ということだろう。
ご存じの方も多いと思うのだが、今の消費の中心として多くの企業が「Z世代」に注目をしている(らしい)。
「Z世代」に限らず、中高校生~20代前半という年代は、友人との関係性が生活の中心となる傾向がある。
それはいつの時代でも同じだろう。
ただ彼らがそれ以前の世代と大きく違うのは、「デジタル・ネイティブ」と呼ばれる、生まれた時からスマホやインターネットがあり、それらをコミュニケーションツールとして使ってきている、という点だ。
「デジタル」の世界は、情報等の伝播が秒速だ。
遠い海外の出来事であっても、数秒後には日本でその情報を知ることができる、そんな社会が当たり前となった時代に、生まれ・育ってきている世代、ということなのだ。
そのような社会背景があるからこそ、ことさら「倍速消費」ということに注目してしまうのではないだろうか?
むしろ、彼らが「倍速消費」をした結果、生み出された「余った時間を、何に使っているのか?」という点に、注目すべきなのでは?
彼らが「倍速消費」をする動機が、そこにあるからだ。