日々是マーケティング

女性マーケターから見た日々の出来事

顧客との良好な関係とは

2023-06-09 21:51:31 | ビジネス

記憶から遠ざかり始めている感のある、東京五輪・パラリンピックでの大手広告代理店の談合事件。
談合を行った電通の第三者機関からの報告があったようだ。
朝日新聞:電通の第三者委「過剰なまでにクライアント・ファースト」五輪談合 

クライアント獲得の為に、無理をしてまでクライアントのお願いを聞いてきた、というようにも思える見出しとなっている。
事実、記事でははっきりとは書かれていないにしても、無理を承知でクライアントの希望に沿うように、いろいろやってきた、というニュアンスを受け取ることができる。

この「電通クライアント・ファースト」で、思い出したことがある。
それは、電通に務めていらした女性の自殺をされた事件だ。
事件と言ってしまってよいのかわからないが、この時問題になったのは「超過勤務+セクハラ+パワハラ」という点だったように記憶している。
「セクハラ+パワハラ」に関しては、今でも多くの企業が抱える内情的問題なのでは?と、感じている。
背景にあるのは「パターナリズム」と呼ばれる、家長主義や権威主義というモノが、潜在的に容認されており、加害者側にとっては一つのステータス的な意味合いを含んでいるのでは?と、感じる部分がある。

そしてもう一つの超過勤務だが、背景にある一つが「クライアントとの関係」だったのでは?ということなのだ。
広告に限らず、企画などを専門企業に丸投げする企業は、決して少なくない。
丸投げするときに、方向性や市場性などを把握しているクライアントであれば、まだよいのだが、そのようなモノも決められず本当に丸投げをするクライアントに限って、無理難題を押し付けてくる(傾向があるように感じている)。

そのようなクライアントのいうことを聞く=クライアント・ファーストということが、当たり前になってしまっていると、必ずどこかにしわ寄せがくる、ということは誰にでも分かる事だろう。
誰にでも分かる事であっても、当事者となった時わからなくなる、というのが「丸投げするクライアント」の特徴でもある。

問題なのは、「餅は餅屋」という専門部分を任せるのではなく、「餅屋から教えてもらう」というパートナー感覚を持っていない企業が、日本には多いということだと思う。
だからこそ、電通のいう「クライアント・ファースト」が企業文化として育ってしまうのではないだろうか?

そして「クライアント・ファースト」という文化が生まれてしまう理由として「お客様は神様」という思考なのではないだろうか?
この「お客様は神様」という言葉は、歌手の故三波春夫さんの言葉だが、本来の意味は違っていたはずだ。
それが、都合よく解釈され「お客様は偉いのだから、なんでもいうことを聞け」というような解釈がされるようになった。
そのような歪曲化された意味で、ビジネスパートナーとなるべき相手を見るような考えが「クライアント・ファースト」でもあったのでは?という、気がしている。

本来「顧客との良好な関係」というのは、「対等な関係」のはずだ。
顧客から教えてもらうことも数多くあるが、顧客もまた企業から教えてもらうことが多いはずだ。
そのような関係性の中で生まれてくるのが「信頼関係」であり「企業価値を高める資源」なのではないだろうか?

電通の「鬼十則」は、有名で、企業によってはこの考えを取り入れようとする企業も少なくなかった。
しかし今という時代、このような「鬼十則」が「クライアント・ファースト」という企業文化を生む土壌となったとすれば、時代遅れの考え方である、ということが分かるだろう。
「クライアント・ファースト」という考えは、決して企業同士のパートナー関係を良好にするものではない。
そのことに、日本の企業も生活者も気づく時期にきているのだと思う。



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