一公の将棋雑記

将棋に関する雑記です。

ありがとうⅡ

2010-04-01 01:16:59 | 女流棋士
昨日(3月31日)午後6時すぎ、LPSAのホームページを見ていたら、新着記事に「藤森奈津子三段、引退のお知らせ」とアップされていて、ビックリした。
藤森女流三段には、29日のマンデー・レッスンでお会いしたばかり。当然とはいえ、そのときは引退のそぶりはまったく窺えなかった。このときのゲスト棋士は、渡部愛ツアー女子プロ。笑いの絶えない和気藹藹の雰囲気の中では、切り出しにくかったのかもしれない。
本文を読んでみると、藤田麻衣子女流1級とは違い、規定による引退だという。藤森女流三段は、崖っ淵の状態で平成21年度を迎えていたのだ。

いままでにも何度かこのブログに書いたが、2年前の3月2日、「第1回武蔵の国 府中けやきカップ」で、蛸島彰子女流五段に指導対局を受けた際、
「ゼヒ駒込サロンへお越しください」
と言われ、金曜サロンの門を初めて叩いたのがその月の14日だった。その前の週にも行けたのだが、女流棋士(プロ棋士)の常駐する将棋サロンは敷居が高く、その日は小雨が降っていることを理由に、翌週に延ばしたのだった。
ところが14日も、ドシャ振りの雨。天はそんなに私を駒込に行かせたくないのかと思うと逆に反骨心が芽生え、私は駒込に向かったのだった。
サロンに入ると横一列に机が並べられており、4面指しが行われていた。その週の夕方担当の女流棋士が藤森女流三段だった。しかしほかに客はひとりしかおらず、閑散としていた。もちろん雨のせいもあるだろうが、当時はそのくらいの人数だったのだ。
蛸島女流五段に指導対局を受けたときもそうだったが、私が子供のころから存じ上げている女流棋士は、芸能人と変わらない。席が空き、「永遠のアイドル」藤森女流三段が私の前にいらして駒を並べ始めたときは、夢心地だった。
このときは角落ちを所望した。藤森女流三段は私の緊張を和らげるためか軽口を交えながら進めてくれ、私もリラックスして指すことができた。
勝敗は、私が幸いした。緊張はしたが、こんなに将棋を指すのが心地いいとは思わなかった。そして次も来たいと思った。もしこのとき、担当が藤森女流三段でなかったら…もし負かされていたら…私は次回以降サロンに訪れていなかったかもしれない。
ちなみに植山悦行手合い係が着任し、金曜リーグが始まったのがこの年の4月だから、際どいタイミングだった。その意味で、藤森女流三段が「新入会員には優しく」を実践してくれたのは、有難かった。
その何回かあとの金曜サロンで、藤森女流三段と、大内延介八段(当時)講師、中瀬(当時)女流2級の聞き手による、昭和54年放映「NHK将棋講座」の話をさせていただいたときは、30年近くも前の出演者が眼前にいることが信じられず、私はまたも感激したのだった。これ、「ウルトラセブン」に例えれば、友里アンヌ隊員役のひし美ゆり子(当時は菱見百合子)と話をさせていただく感慨と同じと思ってよい。
その後私は、1年前のきょう、ブログを開設する。当初は固い話ばかり書いていたので、途中でレースクイーンや特殊な女優の話を書いたら、このブログの読者である藤森女流三段には受け入れられず、間接的にたしなめられた。
しかしもし藤森女流三段の諌言がなかったら私はそのまま暴走し、このブログも閉鎖になっていたかもしれない。いまでは藤森女流三段に感謝している。
そして今年の、2月19日の金曜サロンでのこと。この日は昼が藤森女流三段、夜が大庭美夏女流1級の担当で、仲入りの大盤解説では、王将戦第4局・羽生善治王将対久保利明棋王の対局を取り上げることになった。そこへ植山悦行手合い係が、
「オオサワ君、解説やってよ」
と言うではないか。
バカな。将棋バカの一アマチュアが、タイトル戦の解説などできるわけがない。しかしそこは私も図々しいので、では…と解説役を引き受けた。もちろん聞き手は、藤森女流三段である。
人生、何が起こるか分からない。大内八段と中瀬女流2級の将棋講座を拝見してから30余年。まさか自分が大内八段と同じ位置に就くとは、夢にも思わなかった。
その大盤解説は、プロ棋士の指し手の意味を私が分かるはずもなく、ただ棋譜を並べるだけの薄っぺらいものだったが、藤森女流三段を「聞き手」にしての解説は、一生の記念になった。
肝心の指導対局だが、藤森女流三段とのそれは10数局に上った。平手では私の7勝6敗。最後の6局は偶然扇子サイン勝負が重なり、3連敗のあと3連勝した。つまり途中までは4勝6敗だったわけで、この時点では私と女流棋士との対戦成績の勝率を2割以上も下回っていたことになる。
藤森女流三段は三間飛車か石田流の愛好者なので軽快な棋風だが、中盤で不利になると、自陣に駒を打ちつけて粘るという実戦的な指し方もされ、その呼吸が大いに参考になった。かように変幻自在の棋風でありながら、どうして公式戦での勝ちに結び付かなかったのか。
藤田さんと同様藤森女流三段も、中盤のワカレで形勢がよくなると、安心してしまうタイプだったのかもしれない。
藤森女流三段は現役を引退されるが、LPSAには残る。マンデー・レッスンや金曜サロンでの指導対局はもちろん、中井広恵代表理事の片腕としての業務もある。これからもLPSAと私(たちファン)のために、さらなる活動をお願いいたします。
藤森新女流四段の公式戦通算勝利は186勝。「186→一ハム→一公」と変換できて、私には覚えやすい。藤森先生、31年間の現役生活、お疲れ様でした。
コメント (8)
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