一公の将棋雑記

将棋に関する雑記です。

金曜サロン・大庭美夏女流1級③+掟破りの大盤解説

2010-04-25 20:00:36 | LPSA金曜サロン
2月19日のLPSA金曜サロン、昼は藤森奈津子女流三段(当時)、夜は大庭美夏女流1級の担当だった。
大庭女流1級はいつも穏やかで、指導を受けていてイヤな気持ちになったことが一度もない。LPSA一の癒し系女流棋士である。
大庭女流1級とは3ヶ月ぶりの指導対局。
「久しぶりですねえ」
と挨拶を交わして、対局開始。☗7六歩☖3四歩☗2六歩。ここで大庭女流1級が
「私分かりました。振り飛車は角道を止めちゃいけないんですネ」
と言う。☖4四歩を否定しているわけではなく、消極的に指してはいけない、ということだろう。
大庭女流1級はしばらく考え、
「公式戦じゃないんだものね」
と☖8四歩。これは指導対局を軽んじているわけではない。公式戦ではないのだから、もっと気楽にいろいろな将棋を指そう、ということだ。
以下☗2五歩☖8五歩…☗3四飛と、女流の指導対局では珍しい。横歩取りの将棋となった。
「(角交換から)☖4五角の将棋しか知らないしなあ」
と大庭女流1級。それも温故知新で面白そうだが、大庭女流1級は☖3三桂と跳ねた。これも面白い将棋になりそうである。
以下☗8七歩☖7六飛☗8四飛☖4五桂…と進行したが、前例のない将棋に進み、一手一手を自力で考える将棋は楽しかった。終局後、
「先生、いい将棋でしたよねえ」
「そうですねえ」
と、私たちはお互い満足したのだった。

午後5時半からの大盤解説は、王将戦七番勝負第4局・羽生善治王将対久保利明棋王の一戦を取り上げた。既報のとおり、解説は藤森女流三段と私が務めた。といっても、藤森女流三段は棋譜の読み上げに回る。実質私がひとりで「解説」するという、掟破りの企画だった。私が指名されたのは、すでに指導対局を2局終えていて、暇を持て余していたこともあると思う。
戦型は久保棋王のギキゲン中飛車。この3日前の2月16日、第3期マイナビ女子オープンの挑戦者決定戦があり、このときも戦型はゴキゲン中飛車だった。レポーターとして参加していた私は、「勝又講義」を拝聴していたので、序盤の解説?はごまかせたが、中盤になるともういけない。
「はああ…そうですか」
「なるほど」
と、棋譜を追うばかり。しかしだんだんエンジンがかかってきて、羽生王将が☗3三馬と桂を食いちぎり、久保棋王が☖8七桂と打ち返したあたりでは、
「ここで☗3三馬がスゴイ手でした。終盤は駒の損得よりスピードといいまして、相手の玉を目指さなければいけません。久保先生の☖8七桂もその意味で、☖3三同馬と取っている場合ではないんですね」
さらに私は続ける。
「この手が案外厳しかったです。しかしこの手は当然羽生先生も読んでいるわけで、むずかしい変化はありません。ここで羽生先生が長考しているのは明らかにおかしい。これは羽生先生、変調ですね」
「この将棋を見ていると、ちょっと第5局以降の将棋もアブナイです」
と、言いたい放題だった。何の実績もないアマ有段者が、トッププロのタイトル戦を斬りまくる。我ながら恐れ知らずの解説だった。
それはともかく、藤森女流三段をアシスタントにしての解説は、一生の思い出になった。ただ、大庭女流1級の仕事を横取りしてしまい、申し訳ないことをしたとも思う。ともあれLPSA関係者の粋な計らいに、改めて感謝する次第であった。
コメント
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