15日(木)に行われた女流王将戦予選で、小学6年生の竹俣紅(たけまた・べに)アマが女流棋士2人を連破し、本戦トーナメントに進出したことは、世間では大ニュースだったようだ。
LPSA主催の棋戦で成田弥穂アマが大活躍をしたとき、負けた女流棋士に苦言を呈した人がいたが、私は女子アマの実力は女流棋士と遜色ないと感じていたので、今回の結果も私にとっては、それほどの驚きではない。
前日も記したが、竹俣アマを初めて拝見したのは、LPSA発足直後の新宿イベントで石橋幸緒女流四段とお好み対局を戦ったときだ。
竹俣アマは多くの観衆の前でもアガることなく、堂々とした指し回しで、石橋女流四段に快勝した。石橋女流四段は目隠し将棋だったし、小学生相手だから緩めちゃおう、という雰囲気はあったが、それを割り引いても、下手が勝ちきったことは称賛に値する。
実はこのときのイベントのレポートを、私は「将棋ペン倶楽部 通信29号」(2007年6月発行)に投稿している。キーボードを叩いているとき、
(この少女は将来大物になる。彼女が女流棋士になったとき、この「観戦記」は、きっと貴重な資料になる)
と、力を入れたのを覚えている。
そこで今回は、その対局部分を転載する。本来なら編集幹事・湯川博士先生の了解を取るべきなのだが、湯川先生の顔と声が恐ろしくて、電話をかける気にならない。だからそのまま転載する。
「LPSAの未来はバラ色」
…そして2時30分からは、本イベントの目玉企画、目隠し将棋対局である。
目隠し側は、濃紺の浴衣姿も艶やかな石橋プロ。対するは小学3年生の天才少女・竹俣紅(たけまた・べに)アマ三段。こちらはもちろん目隠しなしだ。
大盤解説は中井プロ、聞き手は引き続きベガスさん。記録・読み上げは島井プロが務め、石橋プロの飛車落ちで対局が始まった。
浴衣姿の女子プロが手ぬぐいで目隠しをし、その傍らで小学生の女の子が将棋を指すという光景は、やはり道行く人の興味を惹いたようだ。老若男女問わずどんどん人が集まり、徐々に会場が無言の熱気に包まれていく。
注目の将棋は、序盤で石橋プロにポイントを稼ぐチャンスが訪れたが、「最初のチャンスは見送る」方針か、石橋プロが自ら角道を止めて持久戦模様となった。そこで私もカフェへ飲み物を買いに行く。日曜の昼間に新宿の通りで将棋観戦。ああ、なんという至福の時間であろう。
それにしても、紅ちゃんが将棋を指す手つきは女子プロのそれと遜色なく素晴らしい。また数百人に上る大観衆のなか緊張の素振りを見せず、一手一手少考しながら指し手を進めているのも、小学生とは思えない落ち着きぶりだ。
対する石橋プロは、衆人環視の状況と、中井プロの笑いを誘う解説を否応なく聴かされて思考が乱れてきたか、形勢が押され気味になってきた。
いっぽう紅ちゃんは、中盤の難所で一手20秒の秒読みとなってからも、角を只捨てする強手を指したり、成り駒をヒタヒタ寄せていったり、相手角の利きを遮るためにじっと歩を突いたりと緩急自在の指し回しで、さらに石橋プロを翻弄していく。
目隠し将棋は手数が伸びるほど、目隠し側の指し手が混乱する。最後は紅ちゃんに寄せの名角が出て、たまらず石橋プロの投了となった。
緊張して前夜は眠れなかったという紅ちゃん。しかし観客の大拍手を浴びながらも、「落ち着いて指せたのがよかったです」と、局後も冷静な紅ちゃんであった。将来は女子プロになりたいという彼女、これからが大いに楽しみである。
また石橋プロも惜敗したものの、目隠し将棋をライブで披露できたことで、大役を果たせたという充実感があったのだろう。局後も実にさわやかな笑顔であった。……
私の文章は重たくて、あとで読み返すと自己嫌悪に陥るのだが、このレポートは短時間で書いたわりには、まあまあ読める文章だった。たった17人で船出するLPSA女流棋士の皆さんにエールを送りたいという気持ちが、見えない力に昇華したのだろうか。
LPSA主催の棋戦で成田弥穂アマが大活躍をしたとき、負けた女流棋士に苦言を呈した人がいたが、私は女子アマの実力は女流棋士と遜色ないと感じていたので、今回の結果も私にとっては、それほどの驚きではない。
前日も記したが、竹俣アマを初めて拝見したのは、LPSA発足直後の新宿イベントで石橋幸緒女流四段とお好み対局を戦ったときだ。
竹俣アマは多くの観衆の前でもアガることなく、堂々とした指し回しで、石橋女流四段に快勝した。石橋女流四段は目隠し将棋だったし、小学生相手だから緩めちゃおう、という雰囲気はあったが、それを割り引いても、下手が勝ちきったことは称賛に値する。
実はこのときのイベントのレポートを、私は「将棋ペン倶楽部 通信29号」(2007年6月発行)に投稿している。キーボードを叩いているとき、
(この少女は将来大物になる。彼女が女流棋士になったとき、この「観戦記」は、きっと貴重な資料になる)
と、力を入れたのを覚えている。
そこで今回は、その対局部分を転載する。本来なら編集幹事・湯川博士先生の了解を取るべきなのだが、湯川先生の顔と声が恐ろしくて、電話をかける気にならない。だからそのまま転載する。
「LPSAの未来はバラ色」
…そして2時30分からは、本イベントの目玉企画、目隠し将棋対局である。
目隠し側は、濃紺の浴衣姿も艶やかな石橋プロ。対するは小学3年生の天才少女・竹俣紅(たけまた・べに)アマ三段。こちらはもちろん目隠しなしだ。
大盤解説は中井プロ、聞き手は引き続きベガスさん。記録・読み上げは島井プロが務め、石橋プロの飛車落ちで対局が始まった。
浴衣姿の女子プロが手ぬぐいで目隠しをし、その傍らで小学生の女の子が将棋を指すという光景は、やはり道行く人の興味を惹いたようだ。老若男女問わずどんどん人が集まり、徐々に会場が無言の熱気に包まれていく。
注目の将棋は、序盤で石橋プロにポイントを稼ぐチャンスが訪れたが、「最初のチャンスは見送る」方針か、石橋プロが自ら角道を止めて持久戦模様となった。そこで私もカフェへ飲み物を買いに行く。日曜の昼間に新宿の通りで将棋観戦。ああ、なんという至福の時間であろう。
それにしても、紅ちゃんが将棋を指す手つきは女子プロのそれと遜色なく素晴らしい。また数百人に上る大観衆のなか緊張の素振りを見せず、一手一手少考しながら指し手を進めているのも、小学生とは思えない落ち着きぶりだ。
対する石橋プロは、衆人環視の状況と、中井プロの笑いを誘う解説を否応なく聴かされて思考が乱れてきたか、形勢が押され気味になってきた。
いっぽう紅ちゃんは、中盤の難所で一手20秒の秒読みとなってからも、角を只捨てする強手を指したり、成り駒をヒタヒタ寄せていったり、相手角の利きを遮るためにじっと歩を突いたりと緩急自在の指し回しで、さらに石橋プロを翻弄していく。
目隠し将棋は手数が伸びるほど、目隠し側の指し手が混乱する。最後は紅ちゃんに寄せの名角が出て、たまらず石橋プロの投了となった。
緊張して前夜は眠れなかったという紅ちゃん。しかし観客の大拍手を浴びながらも、「落ち着いて指せたのがよかったです」と、局後も冷静な紅ちゃんであった。将来は女子プロになりたいという彼女、これからが大いに楽しみである。
また石橋プロも惜敗したものの、目隠し将棋をライブで披露できたことで、大役を果たせたという充実感があったのだろう。局後も実にさわやかな笑顔であった。……
私の文章は重たくて、あとで読み返すと自己嫌悪に陥るのだが、このレポートは短時間で書いたわりには、まあまあ読める文章だった。たった17人で船出するLPSA女流棋士の皆さんにエールを送りたいという気持ちが、見えない力に昇華したのだろうか。