一公の将棋雑記

将棋に関する雑記です。

長い1日②・将棋会館道場にて

2010-09-19 00:41:26 | 将棋会館道場
藤田綾女流初段との指導対局が終わって、引き続き将棋会館道場で将棋。平日なのに小学生が何人かいる。奨励会は土・日曜に行われるので奨励会員ではない。では研修会員だろうか。分からない。
会館道場の傍らで藤田女流初段との将棋を思い出して棋譜をつけていると、手合い係嬢に私の名前を呼ばれた。
「(大沢さんの)飛車落ちでいいですか」
大駒落ちの手合いで申し訳ありません、というニュアンスが感じられた。しかしLPSA金曜サロンでは、このくらいの手合いはいつものことである。
1級の相手氏は穴熊に囲い、銀損の猛攻をかけてきたが、うまく受けて切らし、快勝した。
続いて中学生低学年と思しき少年と一局。学校のほうはいいのだろうか。段位を見ると「五段」とある。私は連盟道場と駒込サロンでは、駒込のほうが段位が厳しいと思っている。同じ段位ならば、私はサロンの会員のほうを「持つ」。しかし「中学生の(アマ)五段」となれば話は別だ。将来プロ棋士を目指しているかもしれず、私が容易に勝てる相手ではない。ともかく全力を尽くすのみである。
私の先手で☗7六歩。対して少年は王道の☖8四歩。以下☗2六歩☖8五歩☗2五歩☖3二金☗7八金☖8六歩☗同歩☖同飛☗2四歩☖同歩☗同飛☖2三歩☗2六飛☖8四飛☗9六歩、と進んだ。
長手順を書いたが、私はひねり飛車を目指している。と、ポンポン指し手を進めていた少年の手が、ここで止まってしまった。☖8六歩と垂らす手が利くかどうかの考慮だと思うが、私には少年がこの局面を初めて見て、どう指していいのか戸惑っているように見えた。いつぞや渡部愛アマ(LPSAツアー女子プロ)と同じ将棋を指したときも、似た反応だった。
かつて先手必勝の戦法があるとすれば、それは「ひねり飛車」と云われたものだったが、現在は廃れてしまった。現代の将棋界は情報化が進んでいるが、もし最新戦法以外の手を指されて硬直していたのだとしたら、それは地力がない証でもある。プロ棋界でそんなことはあるまいが、もし新人棋士にウイークポイントがあるとしたら、カギはそのあたりにありそうな気がする。
結局少年は☖8六歩と垂らした。以下は☗8五歩☖同飛☗7七桂☖8四飛☗8五歩☖2四飛と進む。☖8六歩のところで少考しただけあって、さすがの手順である。私は勢い☗2四同飛☖同歩☗8四飛と打ったが、ここで☖2五飛と打ち返されていたら、歩切れの私が苦しかったと思う。こうなると☖8六歩の存在も大きい。
しかし少年は☖7二銀。以下☗2四飛☖3四歩☗4八玉☖8九飛☗6五桂と進み、激しい攻め合いに突入した。このまま棋譜をダラダラ書いていると将棋が終わってしまうが、せっかくなので続けて記そう。
☗6五桂以下は☖8八角成☗同銀☖3三角☗2一飛成☖8八角成☗同金☖同飛成☗5八桂☖4二銀打☗1一竜☖8七歩成☗5六香☖5四歩☗1五角☖6二王☗5四香☖7七と☗8二角☖5三歩☗4二角成☖同銀☗4一竜、と進んだ。
角を切り、☗4一竜と回った手が詰めろ金取り。ここでこの将棋は勝ったと思った。少年はやむなく☖6四歩。王の懐を拡げてこの一手だが、イヤなところに逃げ道を開けられたとは思った。しかし☗3二金とボロッと金を取れては、依然として先手快調である。
少年、☖5二金。さすがにいい粘りだ。ここで私が間違える。以下、わずか14手で終わる。偶数手ということは、すなわち私が負けたということだ。もしここまで棋譜を並べた方がいらっしゃったら、ここで後手王を寄せる手を考えてください。
本譜は、☗9一角成☖6七と☗5三香成☖同銀☗同桂成☖同王☗5六香☖5四歩☗4一銀☖2七角!☗3八銀☖5八と☗同金☖6六桂 まで、72手で五段氏の勝ち。
☗9一角成と香を補充したが、一手を争う終盤でこの手は甘いと思いながら指してしまった。後手は☖6七とと一歩を補充しつつ先手玉に迫る。この交換は先手が大損だった。
5手後の☗5六香に☖5四歩がピッタリ。☗4一銀には☖2七角が逆転の一打で、ここは少年の手に力が入った。最後は☖8六に垂れていた歩で☗5八の桂を取られ、その桂を☖6六に打たれて投了した。何とも情けない投了図である。
「こちらがわるかったですよね」
と少年が言う。
「うん」
実際こちらがよかったのだから、否定はしない。短い感想戦をやったが、少年は☗8二角で☗2六角打!がいやだったという。これに☖3五金なら☗3六歩と催促し、☖2六金☗同角は王のラインが受けにくい。
私はまったく考えておらず、私は彼との才能の差を感じた。結果は残念だったが、私も気鋭の五段にここまで善戦できたのだから、佳とすべきだろう。
それにしても☖5二金での局面、後手王に何か寄せはなかったものだろうか。絶対あるはずだが、私には分からなかった。金曜サロンに行ったら、きょう登板の櫛田陽一六段にお聞きしよう、と思った。
窪田義行六段が現われる。昼休みの息抜きだろうか。窪田六段は物心両面から将棋ペンクラブを支援してくださる、数少ない棋士だ。ペンクラブの中でも窪田六段のファンは多い(はずだ)。
「窪田先生、きょうのペンクラブ大賞贈呈式は行かれますか」
「きょうはちょっと順位戦があるので…」
「ああっ、そ、それは行けませんね、し、失礼しました!!」
「いえいえ、行ってもいいんですけれども」
「いえいえいえいえ、そ、それは順位戦に集中していただかないと…」
そうか…昼休みだから道場に顔を見せたのに、私もつまらぬ質問をしたものである。
窪田六段とはそのほかにも二言三言話をさせていただいたが、内容を記すのは控える。
3局目は二段氏との香落ち。将棋を指していると、しばらくして窪田六段が、日本将棋連盟付で送られてきた「将棋ペン倶楽部」最新号を見せに来た。きょう事務所で受け取ったらしく、まだ封は開けられていない。しかしなんで私に見せに来たのか分からない。分からないが、なんとなく分かるような気がした。
二段氏との将棋を再開する。と、また窪田六段がいらした。
「ペンクラブ大賞受賞者の皆さま、会員の皆さまにくれぐれもよろしくお伝えください」
と丁重に言葉をいただく。礼儀正しい先生である。なんだか恐縮してしまう。
またまた二段氏との将棋を再開する。…ウワッ! また窪田六段がいらっしゃる。今度は便箋を私に見せる。
「手紙を書きましたので、これを関係者の方にお渡しください」
いま、わざわざ書いてくれたのだ。しかしそれを私にはくれず、また窪田六段は場を離れる。??
またまたまた二段氏との将棋を再開する。…ウワワッ!! ま、またもや窪田六段のおでましである。先ほどの便箋を入れた封筒に、糊づけしてきたのだ。
「ではこれを、関係者の方にお渡しください」
窪田ワールド全開である。私は、ヘヘーッ、とお預かりした。
ところで対局相手の二段氏、大の長考派で恐れ入った。名将戦の持ち時間(チェスクロック使用で2時間)と間違えてるんじゃないの? というくらい、のんびり考えている。しかも考える時間にメリハリがないから、さらに長く感じる。
形勢は駒得の下手が十分。しかし決めるとなると大変で、そこを模索しているらしい。だが有段者だったら、一連の読みはあるだろう。ところがこの二段氏、私の応手がその読みにない手だと、またその局面から新たに読み直しているふうなのだ。こっちは早いところカタをつけて駒込に向かいたいのだが、相手がこの姿勢だからどうしようもない。時間は刻々と過ぎていく。
今日中に終わるのだろうか、と半ば本気で心配したが、徐々に局面は終盤に入っていく。途中、ハッキリと私がわるい局面があったが、肝心なところで二段氏が寄せ損ねて、私が勝勢になった。しかしそこからもまた長く、終わったのは2時42分だった。この将棋、12時40分には始まっており、私は早指しだったから、二段氏がほとんど考えていたことになる。
連盟道場では原則的にチェスクロックを使用しないが、その弊害がモロに出た形だ。
ともかく想定外のできごとで、大幅に予定が狂った。これでは駒込で指導対局を2局も教えてもらうのは無理だ。私は諦めモードで、千駄ヶ谷駅に向かった。
(つづく)
コメント (4)
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