まず、以下に局面の符号を記す。
上手・石橋天河:1一香、1三歩、2一桂、2三歩、3四歩、4一飛、4三銀、6一金、7二銀、7三歩、8一桂、8二王、8三歩、9一香、9四歩 持駒:金、銀、歩
下手・一公:1七歩、1九香、2八飛、2九桂、3六歩、4六銀、4七歩、5五歩、6四角、6五角、6七歩、6九金、7六歩、7七桂、7八玉、8七歩、9六歩、9九香 持駒:金、歩3
☖6四歩(打)に9七の角で☗同角と取ったところ。
もしこの局面を並べてくださった読者がいたら、今回は次の一手ではなく、ここで石橋天河が発したジョーク、さらに私が発した返し技を考えていただきたい。難問である。
6月18日のLPSA金曜サロンは、1部が藤森奈津子女流四段、2部が石橋幸緒天河の担当だった。この日は仕事がたて込み、サロンに入室したのは午後6時半だった。まだ藤森女流四段はいらしたが、指導対局はもちろんアガリ。石橋天河が代表理事になってから、初めての指導対局となった。
将棋は石橋天河の四間飛車。なんでも指す石橋天河だが、基本は居飛車党だろう。石橋天河に平手で指導対局を受けるのは本局で11局目になるが、四間飛車は初めてだった。
☖3二銀型で☖5四歩と突いたので、私は☗9七角とのぞく。山田定跡(道美九段)のひとつ、☗9七角戦法である。以下☖4一飛に☗7九角と引いたら、この将棋を観戦していた櫛田陽一六段(手合い係)が
「よくこの手を知ってますねえ」
と感嘆した。この角は従来、8六~6八のルートで2四の地点を狙っていた。ところが7九へ引く手が発見され、先手が一手トクをすることになったのだ。
「え? このくらい、みんな知ってるんじゃないでしょうか」
「いやいや、プロ棋士だって全員はこの手を知りませんよ」
「えーっ!? プロの先生なら全員ご存じでしょう」
「いやいや、植山さん(悦行七段)は、たぶん知りませんよ」
なんだかスゴイ会話になった。
「私はこれ(☗9七角)があるから、☖3二銀型で☖5四歩は指さないんですよ」
と、続けて櫛田六段は言った。
この日は6月18日。奇しくも山田九段の、40回目の命日であった。天国の山田九段が、この局面に導いてくれたのかもしれぬ。
なお蛇足ながら、植山七段の名誉のために書いておけば、「☗9七角~☗7九角」の新手順は、さすがにご存じだった。
数手後、☖5五歩☗5七金~☖7七角成(銀を取る)など、力強い指し手の応酬が続く。64手目、石橋天河が☖6四歩と打ち、☗同角と取ったのが冒頭の局面である。
ここで石橋天河が
「あの辺の香車を盗みたいなあ…」
とつぶやく。☖6二香の田楽刺しが狙いだ。
「それなら私は桂馬を盗みたいですよ」
と私は切り返す。桂を持てば☗7四桂以下、石橋王は詰む。
その後もむずかしい戦いが続いたが、最後は☗8三銀成☖同王に☗7四銀と歩頭に打つ好手があって、なんとか勝たせていただくことができた。
中井広恵女流六段、石橋天河は、LPSAの中で実力が頭ひとつ(ふたつ)抜きん出ている。両巨匠に勝たせていただくと、やはり喜びも大きい。
上手・石橋天河:1一香、1三歩、2一桂、2三歩、3四歩、4一飛、4三銀、6一金、7二銀、7三歩、8一桂、8二王、8三歩、9一香、9四歩 持駒:金、銀、歩
下手・一公:1七歩、1九香、2八飛、2九桂、3六歩、4六銀、4七歩、5五歩、6四角、6五角、6七歩、6九金、7六歩、7七桂、7八玉、8七歩、9六歩、9九香 持駒:金、歩3
☖6四歩(打)に9七の角で☗同角と取ったところ。
もしこの局面を並べてくださった読者がいたら、今回は次の一手ではなく、ここで石橋天河が発したジョーク、さらに私が発した返し技を考えていただきたい。難問である。
6月18日のLPSA金曜サロンは、1部が藤森奈津子女流四段、2部が石橋幸緒天河の担当だった。この日は仕事がたて込み、サロンに入室したのは午後6時半だった。まだ藤森女流四段はいらしたが、指導対局はもちろんアガリ。石橋天河が代表理事になってから、初めての指導対局となった。
将棋は石橋天河の四間飛車。なんでも指す石橋天河だが、基本は居飛車党だろう。石橋天河に平手で指導対局を受けるのは本局で11局目になるが、四間飛車は初めてだった。
☖3二銀型で☖5四歩と突いたので、私は☗9七角とのぞく。山田定跡(道美九段)のひとつ、☗9七角戦法である。以下☖4一飛に☗7九角と引いたら、この将棋を観戦していた櫛田陽一六段(手合い係)が
「よくこの手を知ってますねえ」
と感嘆した。この角は従来、8六~6八のルートで2四の地点を狙っていた。ところが7九へ引く手が発見され、先手が一手トクをすることになったのだ。
「え? このくらい、みんな知ってるんじゃないでしょうか」
「いやいや、プロ棋士だって全員はこの手を知りませんよ」
「えーっ!? プロの先生なら全員ご存じでしょう」
「いやいや、植山さん(悦行七段)は、たぶん知りませんよ」
なんだかスゴイ会話になった。
「私はこれ(☗9七角)があるから、☖3二銀型で☖5四歩は指さないんですよ」
と、続けて櫛田六段は言った。
この日は6月18日。奇しくも山田九段の、40回目の命日であった。天国の山田九段が、この局面に導いてくれたのかもしれぬ。
なお蛇足ながら、植山七段の名誉のために書いておけば、「☗9七角~☗7九角」の新手順は、さすがにご存じだった。
数手後、☖5五歩☗5七金~☖7七角成(銀を取る)など、力強い指し手の応酬が続く。64手目、石橋天河が☖6四歩と打ち、☗同角と取ったのが冒頭の局面である。
ここで石橋天河が
「あの辺の香車を盗みたいなあ…」
とつぶやく。☖6二香の田楽刺しが狙いだ。
「それなら私は桂馬を盗みたいですよ」
と私は切り返す。桂を持てば☗7四桂以下、石橋王は詰む。
その後もむずかしい戦いが続いたが、最後は☗8三銀成☖同王に☗7四銀と歩頭に打つ好手があって、なんとか勝たせていただくことができた。
中井広恵女流六段、石橋天河は、LPSAの中で実力が頭ひとつ(ふたつ)抜きん出ている。両巨匠に勝たせていただくと、やはり喜びも大きい。