13日(月)のLPSAのマンデーレッスンは、ベルサイユ高田尚平六段がゲスト講師だった。昨年の石垣島旅行のとき、台風で時間を持て余していた私は「第1回 八重山子ども将棋まつり」にお邪魔し、そこに講師で来ていた高田六段に、たいへんよくしてもらった。その日から、もし高田六段がLPSAサロンのゲスト講師に来られることがあったら、指導対局を受けようと決めていたのだ。1年余が経ったが、きょうついにその日がやってきた、というわけだ。
駒込へ行く前に、自宅最寄駅近くにある松屋(牛丼専門店)に入る。牛丼(並)は通常320円だが、現在はキャンペーン中で、250円である。これに生野菜(100円)をつけても計350円という安さだ。
券売機でチケットを買い、かっ食らう。しかしその途中で、何かがおかしい、と気づいた。牛丼に無料でついてくる、みそ汁が出ていないのだ(吉野家のみそ汁は有料である)。あの中国人の女性店員、うっかりしやがって、ボケ…とイライラしながら、牛丼をかっ食らう。牛丼はお上品に食べていてはダメだ。「かっ食らう」のがいい。
牛丼を半分くらい食べたころか、その店員が気づいて、そっとみそ汁を出した。
こういう場合、どうするか。
いまごろ出てきたって遅いよ、という態度で、私はみそ汁には箸をつけない。店員は自分の落ち度に気づいてないだろうが、アンタしっかりしろよ、と箸をつけないことで無言の指摘をするのが、私流である。
午後6時少しすぎ、気分を害したまま、サロンに入る。駒込でマンデーレッスンを受けるのはこれが最後だ。きょうの受付は藤森奈津子塾長(女流四段)と船戸陽子女流二段。17日の金曜サロンのコンビでもある。
高田六段出題の実戦次の一手のプリントが配られ、それをムッツリしたまま考える。牛丼の件が頭から離れないのだ。まったくケッタクソわるい。そこへ、大沢さん、と声をかけられたので、ああン? という態度で振り向いたら、声の主は高田六段で、私は思わず居ずまいを正してしまった。
昨年の石垣島での御礼を述べ、今年の子供大会をお手伝いできなかったことをお詫びする。
定刻より少し早く、指導対局開始。私は角落ちを所望した。戦型は、戦前の予定どおり三間飛車にした。ガッチリ美濃囲いに組んで、あとはガンガン攻めていくハラである。
しかし15手目に☖2二飛と振られ、やや予定が狂った。それでも私は☗7五銀~☗7六飛~☗9七角と攻撃態勢を整え、☗6五歩と仕掛ける。やや無理攻めだったが、角落ちのハンデがあるので、何とかなりそうな気はした。
ここで中盤の局面を記す。
上手(角落ち)・高田六段:1一香、1三歩、2一飛、3三桂、3四歩、4二王、4三銀、4四歩、5三銀、5四歩、6二金、6三金、6四歩、7四歩、8一桂、8三歩、9一香、9六歩 持駒:歩2
下手・一公:1七歩、1九香、2七歩、2八銀、2九桂、3七歩、3八玉、4七歩、4八金、5六歩、6五歩、6九金、7五銀、7六飛、8六角、8七歩、8九桂、9九香 持駒:歩
☖7四歩(打)まで。以下の指し手を、思い切って終局まで書いてしまおう。
☗6四銀☖同金☗同角☖7五銀☗同飛☖同歩☗9一角成☖7三桂☗8二馬☖6六歩☗5八銀☖6五桂☗8三馬☖6四銀☗7四金☖5三銀☗6四香☖4五桂☗6二香成☖6七歩成☗6三成香☖5七桂右成☗5三成香☖同王☗3三銀☖5二銀☗7三馬☖4三王☗3二金☖3五歩 まで、高田六段の勝ち。
☗6四銀と切り込み、☖同金に最初は☗同歩と取るつもりだった。以下☖7五銀には☗同角☖同歩☗6六飛で、次の☗6三歩成が受けにくい。
しかしこんな駒損の攻めが通るだろうかと考え、その順は見送ったのだが、☗6四同角は明らかに自爆だった。ここで高田六段はしばらく考えて☖7五銀としたが、☗同飛☖同歩☗9一角成の振り替わりは、一応こちらの主張も通った形だ。☖7五銀ではふつうに☖6四同銀と角を取られていたら、☗同歩のあとに☖7五銀と打たれ、こちらが指し切っていた。
☖6四同銀ははじめに浮かぶ手。それを上手が見送ったのは、それだと大勢が決してしまう(下手負け)からだ。対局時は気づかなかったが、いまこうして並べ返してみると、随所で上手が緩めてくれているのが分かる。
高田六段は「うん…」「なるほど…」と、こちらの指し手に感心したように、ゆったりした手つきで応じてくるが、本当のところは、どうやって下手が分からないように緩めようか…と頭を悩ませていたに違いない。
数手進み、私は☗6四香と金取りに打ったが、これはよくなかった。高田六段は構わず☖4五桂と跳ねてきたが、これが駒の損得よりスピードを地でいく一手で、まったく考慮の外だった。
私は勢い☗6二香成。上手☖6七歩成。上手が攻め合いにきたので、私は喜んで☗6三成香と引く。ここで上手が☖5八とと銀を取らず、☖5七桂右成と攻めをためてきたのが、これまた唸る一手だった。自分の考えてない手をこう何度も指されては、さすがに才能の差を感じて、戦意を喪失してしまう。
戻って☗6四香では☗7五金と引き、あくまでも☖6五桂を取りにいくのがよかった。打ったばかりの金を引くのは気が利かないが、次に☗6五馬と桂を取る手が実現すれば、盤上はこちらが制圧する。☖4五桂と跳ねられたあたりで☗7五金に気づいたのだが、遅かった。
最後は下手の細い攻めを上手に凌がれ、無念の投了となった。上手に何度も緩めてもらいながら、それでも勝てない。相手がプロなのだから当然といえば当然だが、上手をまったく追い込めない自分の未熟が情けなかった。
(つづく)
駒込へ行く前に、自宅最寄駅近くにある松屋(牛丼専門店)に入る。牛丼(並)は通常320円だが、現在はキャンペーン中で、250円である。これに生野菜(100円)をつけても計350円という安さだ。
券売機でチケットを買い、かっ食らう。しかしその途中で、何かがおかしい、と気づいた。牛丼に無料でついてくる、みそ汁が出ていないのだ(吉野家のみそ汁は有料である)。あの中国人の女性店員、うっかりしやがって、ボケ…とイライラしながら、牛丼をかっ食らう。牛丼はお上品に食べていてはダメだ。「かっ食らう」のがいい。
牛丼を半分くらい食べたころか、その店員が気づいて、そっとみそ汁を出した。
こういう場合、どうするか。
いまごろ出てきたって遅いよ、という態度で、私はみそ汁には箸をつけない。店員は自分の落ち度に気づいてないだろうが、アンタしっかりしろよ、と箸をつけないことで無言の指摘をするのが、私流である。
午後6時少しすぎ、気分を害したまま、サロンに入る。駒込でマンデーレッスンを受けるのはこれが最後だ。きょうの受付は藤森奈津子塾長(女流四段)と船戸陽子女流二段。17日の金曜サロンのコンビでもある。
高田六段出題の実戦次の一手のプリントが配られ、それをムッツリしたまま考える。牛丼の件が頭から離れないのだ。まったくケッタクソわるい。そこへ、大沢さん、と声をかけられたので、ああン? という態度で振り向いたら、声の主は高田六段で、私は思わず居ずまいを正してしまった。
昨年の石垣島での御礼を述べ、今年の子供大会をお手伝いできなかったことをお詫びする。
定刻より少し早く、指導対局開始。私は角落ちを所望した。戦型は、戦前の予定どおり三間飛車にした。ガッチリ美濃囲いに組んで、あとはガンガン攻めていくハラである。
しかし15手目に☖2二飛と振られ、やや予定が狂った。それでも私は☗7五銀~☗7六飛~☗9七角と攻撃態勢を整え、☗6五歩と仕掛ける。やや無理攻めだったが、角落ちのハンデがあるので、何とかなりそうな気はした。
ここで中盤の局面を記す。
上手(角落ち)・高田六段:1一香、1三歩、2一飛、3三桂、3四歩、4二王、4三銀、4四歩、5三銀、5四歩、6二金、6三金、6四歩、7四歩、8一桂、8三歩、9一香、9六歩 持駒:歩2
下手・一公:1七歩、1九香、2七歩、2八銀、2九桂、3七歩、3八玉、4七歩、4八金、5六歩、6五歩、6九金、7五銀、7六飛、8六角、8七歩、8九桂、9九香 持駒:歩
☖7四歩(打)まで。以下の指し手を、思い切って終局まで書いてしまおう。
☗6四銀☖同金☗同角☖7五銀☗同飛☖同歩☗9一角成☖7三桂☗8二馬☖6六歩☗5八銀☖6五桂☗8三馬☖6四銀☗7四金☖5三銀☗6四香☖4五桂☗6二香成☖6七歩成☗6三成香☖5七桂右成☗5三成香☖同王☗3三銀☖5二銀☗7三馬☖4三王☗3二金☖3五歩 まで、高田六段の勝ち。
☗6四銀と切り込み、☖同金に最初は☗同歩と取るつもりだった。以下☖7五銀には☗同角☖同歩☗6六飛で、次の☗6三歩成が受けにくい。
しかしこんな駒損の攻めが通るだろうかと考え、その順は見送ったのだが、☗6四同角は明らかに自爆だった。ここで高田六段はしばらく考えて☖7五銀としたが、☗同飛☖同歩☗9一角成の振り替わりは、一応こちらの主張も通った形だ。☖7五銀ではふつうに☖6四同銀と角を取られていたら、☗同歩のあとに☖7五銀と打たれ、こちらが指し切っていた。
☖6四同銀ははじめに浮かぶ手。それを上手が見送ったのは、それだと大勢が決してしまう(下手負け)からだ。対局時は気づかなかったが、いまこうして並べ返してみると、随所で上手が緩めてくれているのが分かる。
高田六段は「うん…」「なるほど…」と、こちらの指し手に感心したように、ゆったりした手つきで応じてくるが、本当のところは、どうやって下手が分からないように緩めようか…と頭を悩ませていたに違いない。
数手進み、私は☗6四香と金取りに打ったが、これはよくなかった。高田六段は構わず☖4五桂と跳ねてきたが、これが駒の損得よりスピードを地でいく一手で、まったく考慮の外だった。
私は勢い☗6二香成。上手☖6七歩成。上手が攻め合いにきたので、私は喜んで☗6三成香と引く。ここで上手が☖5八とと銀を取らず、☖5七桂右成と攻めをためてきたのが、これまた唸る一手だった。自分の考えてない手をこう何度も指されては、さすがに才能の差を感じて、戦意を喪失してしまう。
戻って☗6四香では☗7五金と引き、あくまでも☖6五桂を取りにいくのがよかった。打ったばかりの金を引くのは気が利かないが、次に☗6五馬と桂を取る手が実現すれば、盤上はこちらが制圧する。☖4五桂と跳ねられたあたりで☗7五金に気づいたのだが、遅かった。
最後は下手の細い攻めを上手に凌がれ、無念の投了となった。上手に何度も緩めてもらいながら、それでも勝てない。相手がプロなのだから当然といえば当然だが、上手をまったく追い込めない自分の未熟が情けなかった。
(つづく)