一公の将棋雑記

将棋に関する雑記です。

中井広恵と行く稚内ツアー(第1手)・突然のデート

2012-06-13 00:40:23 | 将棋イベント
機内のスッチー(客室乗務員)は6人。うちひとりは、中村桃子女流1級と月見栞を合わせたような美人だった。
席が後方中央なので、外の景色は見えない。私はヘッドホンを付けるが、音楽が聴こえてこない。ヘッドホンに問題があるようだ。
私は「将棋クイズ」を解く。常識問題からマニアックな問題までバラエティに富んでいて、大いに楽しむことができた。いくつか掲げてみよう。

問11 男性棋士で連勝記録第2位は誰で何連勝?
問12 同一タイトル通算獲得数が一番多い棋士は誰でいくつ?
問16 初めて行われた海外対局の場所は?
問20 息子さんがカメラマンとして活躍する棋士は?
問28 陣屋事件のあった温泉地は何温泉?
問47 第二次大戦後、GHQに派遣された棋士は?

全50問で、自己採点は25~30点だった。
右のKub氏のヘッドホンを借りて音楽を聴く。9チャンネルは「オールナイトニッポンClassics」。石川ひとみの「まちぶせ」を少し聴いた。名曲には違いないが、詩の内容は、いまでいうストーカーである。
飲み物は、コーヒーが今月から無料になり、私はそれを頼んだ。香り高く、美味かった。

問44の、現在、現役の九段は何人? を改めて考えていたら、13時59分、ボーイング767は稚内空港に滑り込んだ。
空港のゲートを抜けると、稚内支部の人が3人ほど迎えに来てくれていた。移動用のクルマを用意してくれたのだ。早くも恐縮してしまう。
植山悦行七段は私を確認していないようで、支部の人に
「もうひとり、大沢さんていうキョーレツな人がいて…」
とか言っている。私もせいぜい静かにしなければならない。
お互い自己紹介したあと、出発する。…いやその前に、年配の男女がまだいるが、あの方々は? それを中井広恵女流六段に聞くと、何と中井女流六段のご両親だった。それなら真っ先に紹介してくれよ、と思う。
ご両親に丁重に挨拶する。私の場合、ほかの棋友よりも意味合いがちょっと違うのだが、その理由をここに書くと、このブログが消滅する。
お父さんはニコッと笑うと中井女流六段そっくりで、さすがに親娘だと思った。
稚内空港はいかにも地方空港という佇まい。付近に背の高い建物は一切なく、そこが北海道らしい。6月に北海道を訪れたのは初めてだが、暑くもなく寒くもなく、ちょうどいい陽気だ。
クルマは3台に別れ、稚内観光となった。こちらのクルマの運転は大矢順正氏。大矢氏は年間2万キロも運転するという、ベテランドライバーだ。
「私は大沢さんのブログは読んだことないんだけど…」
と大矢氏が口を開く。聞くと、その内容は驚くべきものだった。
私は今年の1月、旅行で飯山線に乗車した。そのとき戸狩野沢温泉から越後川口行きの列車に乗ろうとしたら、森宮之原から先が豪雪で不通になっていた。そこから先の代行バスが保証されていなかったが、それでも私は森宮之原に向かった。このとき戸狩野沢温泉駅でやりとりした駅員さんが何と大矢氏と知り合いで、しかも駅員さんは当ブログを読んでいたという。
駅員さんは、列車が不通なのに無謀な乗客がいると、印象に残っていたらしい。
私のブログは外国に在住している人にも読まれているが、世間は狭いものだと心底驚いたものだった。
稚内駅近くにある、稚内港北防波堤ドームに着いた。1936年に建設された歴史ある建物で、現在は北海道遺産にも指定されている。ドーム内は綺麗に補修がなされ、ローマ建築のようだ。
以前はなかった、岸壁の遊歩道に立つ。稚内湾の海が綺麗だ。
続いてノシャップ岬に向かう。稚内には何度も訪れているが、観光したのは宗谷岬と駅周辺ぐらい。今回はクルマの利用なので小回りが利き、いろいろなところが観光できそうだ。
午後3時15分、ノシャップ岬に着いた。ここでは自由時間を取っている。近場の食堂に入り遅い昼食を摂るもよし、隣接する水族館に入るもよし、だ。
私はどうするかだが、ここに来る途中、鄙びた郵便局があった。きょうは木曜日。旅行貯金をしたいところである。
私はHon氏に、郵便局に連れてってくれるよう頼むが、Hon氏はハッキリしない。するとW氏が、中井先生に運転してもらえば、と言った。
中井女流六段も快諾。私が拒絶する理由もないので、お言葉に甘える。結果、ふたりだけのドライブが実現することになってしまった。
これ、いま思えば、郵便局までは私が運転して、ひとりで行けばよかったのである。ただ、将棋合宿では運転手が中井女流六段、W氏、Hon氏と決まっていて、運転はこの3人がするものという固定観念が出来上がっていた。今回はこの錯覚が幸いした。
助手席に私が乗って出発。まさかの展開に私の心臓は早鐘を打っているが、どこか安心感もある。中井女流六段の運転で旅行貯金とは光栄である。稚内はいいですねー、広いですねー、を連発して、中井女流六段のご機嫌を取った。
郵便局には数分で着いた。思ったより距離があったが、それが北海道である。
当初はここからひとりで歩いて戻るつもりだったが、それは無理のようだ。中井女流六段に待っていてもらい、郵便局に入る。しかし局のオバちゃんは通帳に記された各地の郵便局をしげしげと眺め、なかなか作業に入ってくれない。きょうばかりは早く済ませてほしいのだが。
「稚内恵比寿簡易郵便局」、607円。
オバちゃんはハンコを捺すと、ハンドタオルを2枚くれた。ポケットティッシュをくれることはよくあるが、タオルは初めてだ。感激である。
私はクルマに戻ると、その1枚を中井女流六段に差し上げた。
「…?」
「旅行貯金をするともらえるんです」
「えっ? 旅行貯金って、見ただけで分かるの?」
「いえ、それはもちろん分かりません。でもほら、ハンコ見ると各地に旅行してるのが分かるでしょ。郵便局は旅行者に優しいですからね。それで、サービスでくれることがあるんですよ。でもタオルを貰ったのは初めてだった」
用が済んだから、引き返すしかない。せっかくふたりきりになれたのに、もうみんなと合流か。何かハプニングがないものかと思う。
再びノシャップ岬に着いた。しかし辺りには誰もいない。W氏はウニ丼を食べたいと言っていたから、何人かは食堂に入ったのだろう。あとは水族館に入ったのだろうか。
中井女流六段は水族館が気になるようである。
「な、な、中井先生、す、水族館に、は、入りませんか?」
「うん」
やった…!! もう少し、中井女流六段とのデートが楽しめる。私は逸る心を抑えて、「ノシャップ寒流水族館」に入った。
(つづく)
コメント (3)
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