一公の将棋雑記

将棋に関する雑記です。

ブログ開設1,000日特別企画・一公ブログカルトクイズ(解答編)

2011-12-26 23:04:27 | 将棋雑記
きょう2011年12月26日で、一公ブログを開設してから1,000日になる。月日の経つのは早い。
では、きのう出題した問題の正解を発表する。

Q1.このブログに初めてコメントをくれた人は誰?(5点)
A1.2.まるしお
・参考ブログ:2009年5月3日「下蒲刈島へ行く(後編)=コメント欄」
2009年5月16日に初コメントを戴いた。うれしいような、恥ずかしいような気がした。皆さまからのコメントが、ブログを書く原動力になっている。

Q2.このブログを始めるきっかけとなった、私にブログを勧めてくれた人は誰?(5点)
A2.3.将棋ペンクラブ幹事・M氏
・2009年5月26日「もしM氏が言わなかったら」
「将棋ペン倶楽部」の発送作業のあと、飲み会の席でM氏に勧められた。M氏の勧めがなかったら、このブログの誕生は確実に、数ヶ月遅れていただろう。

Q3.「女流棋士スーパーサロン」の指導対局で、私が上田初美女王に指した鬼手は?(5点)
A3.3.▲9三銀
・2010年11月16日「会心の一手」
いまをときめく女王との初指導対局。終盤、▲9三銀の鬼手を指して、上田女王を「オオーッ!!」と絶叫させた。結果も私の勝ち。しかしその後の指導対局は5連敗。本気を出された。

Q4.私のココロの兄弟子は植山悦行。ではココロの師匠は?(3点)
A4.2.真部一男
・2011年11月24日「真部一男九段との思い出」
私の高校時代の文化祭で、真部九段は毎年指導対局に来てくださっていた。九段の文才も合わせ、私のココロの師匠となっている。

Q5.私のココロの女性師匠は藤田麻衣子。では、ココロの姉弟子は?(3点)
A5.2.松尾香織
・2011年12月5日「12月2日のLPSA芝浦サロン・松尾香織を応援してるんだから!」
松尾女流初段のセンスのよい将棋に、大いに感心した。ひそかに姉弟子にさせていただいている。

Q6.このブログの連続投稿日数は何日?(5点)
A6.3.704日
・2011年4月28日「第2回 信濃わらび山荘信濃合宿4・704日でストップ」
2009年5月19日から連続投稿を続けていたが、2011年4月の合宿では、2日目にどうしてもブログの更新ができず、ストップした。いまはスマホを持っているので、どこにいても連続更新は可能となっている。

Q7.2009年夏、私が沖縄県石垣島で会った棋士は誰?(5点)
A7.2.高田尚平六段
・2009年8月10日「龍王」
高田六段は将棋の指導で、八重山に何度も足を運んでいる。この年から「八重山子ども将棋まつり」が始まり、台風で時間を持て余していた私は、顔を出した。高田六段は誠実な方で、いっぺんにファンになってしまった。

Q8.中井広恵女流六段は北海道稚内市出身ですが、中井女流六段が持っている同市の肩書はどれ?(5点)
A8.1.観光大使
・2009年9月24日「稚内→旭川→網走→北浜→釧路」
2のふるさと大使は、かなりの人がなっているらしいが、観光大使は、数えるぐらいしかいないらしい。また稚内に行きたいものだ。

Q9.「LPSA金曜サロン」で、私が初めて指導対局を受けた女流棋士は誰?(5点)
A9.1.藤森奈津子女流四段
・2009年4月25日「金曜サロン・藤森奈津子女流三段1」
2009年3月14日が初対局。その前の週にも行こうとしたのだが、雨なので、やめた。ちなみに女流棋士との初指導対局は、同年1月、LPSAの大阪イベントで、藤田麻衣子さん(当時女流1級)に角落ちで教えていただいた。

Q10.「私が勝手に選ぶ女流棋士ファンランキング」に、ただひとりランクインした女性アマチュアは誰?(5点)
A10.2.成田弥穂
・2011年10月26日「再び大野カウンセリング教室に行く(前編)・午前5時まで眠れなかった」
成田アマは勝ち急がない将棋で、一般の女流棋士とは一味違う。これからの活躍も期待したい。

Q11.私が学生時代に旅先で出会った「角館の美女」の誕生日は、何月何日?(5点)
A11.3.7月31日
・2010年1月31日「角館の美女(第3回)」
「角館の美女」は、まだ完結していない。早く続きを書こうと思っているのだが、どうも筆が重い。

Q12.このブログは基本的に写真を載せませんが、一度だけアップしたことがあります。その写真とは何?(5点)
A12.2.庭の桃の木に実った桃
・2010年7月28日「ピーチ」
2010年4月3日に庭の桃の花のことを書いたのだが、その実がたくさんなったので、写真を載せてみる気になった。女流棋界でも、今年は2人の「桃」が話題になった。

Q13.「主人より先に大沢さんと知り合っていたら、私、大沢さんと結婚していたと思う」と言った人妻は誰?(5点)
A13.3.A氏の奥さん
・2011年9月22日「A氏夫妻と飲む(後編)・結婚相手に求めるものとは」
A氏夫妻はとても温かみがあって、話していると癒される。私が結婚したら、彼らのような夫婦になりたいと思う。

Q14.社団戦で、私が時間切れで負けたのは何回?(5点)
A14.3.3年連続3回
・2011年6月30日「社団戦第1日(前編)」
社団戦のときは、秒読みの音が聞こえず、時間切れで負けてしまうことがある。やはり相当なプレッシャーがかかっているのだろう。でもこれからは、時間切れ負けは絶対にない。

Q15.私が新卒で入った会社で、同僚の女性に振られたときのセリフは何?(5点)
A15.1.私があなたを嫌いだということを、あなたは気付いてると思ってた。
・2009年9月5日「角館の美女(第2回)」
私が彼女に嫌われていることは薄々気づいていたが、これはキツイ言葉だった。でも、このくらいキッパリ振られたほうが、後に引かなくてよい。いまでは彼女の幸せを、心から願っている。

Q16.2011年9月1日に開かれた「LPSA木曜ワインサロン」の帰りに、私が途中下車した駅はどこ?(5点)
A16.1.錦糸町
・2011年9月15日「サヨナラ、ワインサロン(後編)・お幸せに…」
こんなに辛くて悲しくて、惨めで情けなくて、切ないひとときはなくて、とてもまっすぐ帰る気にはなれなかった。

Q17.駒込ジョナサンに務める私たちのマドンナ・Ayakoさんの出身地はどこ?(5点)
A17.3.沖縄県
・2011年3月27日「第7回・駒込ジョナサン研究会」
Ayakoさんのことは、フルネームと出身地しか知らない。もっと、彼女のことが知りたい。

Q18.信濃わらび山荘将棋合宿「最恐戦」で、まだ実現していないカードはどれ?(3点)
A18.2.中井広恵-大野八一雄
・2011年11月16日「第3回 信濃わらび山荘将棋合宿(第7譜)・中井広恵女流六段との朝食」
プロの真剣勝負を、間近で見られるありがたさ。私は本当に幸せだと思う。

Q19.私が「LPSA芝浦サロン」の近くで摂る、立ち食いそば屋の名前は?(3点)
A19.1.小諸そば
・2011年4月16日「復活! ワインサロン」
小諸そばで小腹を満たして、LPSA芝浦サロンに臨むのが定跡。

Q20.私がこれまで、「マイナビ女子オープン」に出した懸賞金は、総額いくら?(5点)
A20.2.324,000円
・2011年8月2日「残念な話」
いままで懸賞金を出したことに全然後悔はしていないが、ヒトのブログにケチをつけるような会社が主催している棋戦には、今後一切協力しない。

Q21.「将棋ペン倶楽部」に掲載された「運命の端歩」で、親戚のおじさんが得意にしていた戦法は「原始中飛車」と、もうひとつはどれ?(3点)
A21.3.原始棒銀
・2011年11月4日「運命の端歩(第1回)」
「原始棒銀」。いまでは活字を見るのも辛い戦法だ。

Q22.「私が勝手に選ぶ女流棋士ファンランキング」第1位の室谷由紀女流初段に、私が勝手に付けている枕詞はどれ?(5点)
A22.2.パーフェクト
・2011年9月26日「パーフェクト室谷由紀女流初段に告ぐ」
室谷女流初段は、容姿だけでいえば、歴代女流棋士の中で最強であろう。これからもっともっと活躍すれば、芸能界が放っておかないと思う。

正解:
Q1=2 Q2=3 Q3=3 Q4=2 Q5=2 Q6=3 Q7=2 Q8=1 Q9=1 Q10=2 Q11=3 Q12=2 Q13=3 Q14=3 Q15=1 Q16=1 Q17=3 Q18=2 Q19=1 Q20=2 Q21=3 Q22=2

いかがでしたか。以下に、一公ブログマニア度を示します。

0~50点…倉敷藤花。あなたは健全です。これからも、一公ブログをよろしくお願いいたします。
51~70点…女流王将。一公ブログを覗くのは、1日1回がいいでしょう。
71~85点…女流王位。ほかにおもしろい将棋サイトはないのでしょうか。ちょっと、一公ブログを見過ぎです。
86~99点…女流名人。午前0時を過ぎると、ブログの更新を確認していますね? そんなに一公ブログを楽しみにされると、困ってしまいます。
100点…女流王座。あなたは将棋中毒です。もっと時間を有効に使いましょう。
100点(30分以内に解答)…女王。あなたはもはや病気です。このブログから、しばらく離れたほうがいいでしょう。でも、ありがとうございます。

このブログがいつまで続くか分かりませんが、これからも、一公ブログをよろしくお願いいたします。
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ブログ開設1,000日特別企画・一公ブログカルトクイズ(問題編)

2011-12-25 00:05:03 | 将棋雑記
2009年4月1日にこのブログを開設してから、あす26日で1,000日になる。
そこで、きょう25日とあす26日は、開設1,000日特別企画として、「一公ブログカルトクイズ」をお届けする。
問題は全部で22問。すべて三者択一で、100点満点。いままでこのブログを楽しんでこられた方なら、満点も不可能ではない。
試験時間は60分。解答の際は、過去エントリのカンニングもOKである。正解はあす、お知らせする。ではガンバッテ、どうぞ。

Q1.このブログに初めてコメントをくれた人は誰?(5点)
1.猫柳 2.まるしお 3.よっしー

Q2.このブログを始めるきっかけとなった、私にブログを勧めてくれた人は誰?(5点)
1.植山悦行七段 2.W氏 3.将棋ペンクラブ幹事・M氏

Q3.「女流棋士スーパーサロン」の指導対局で、私が上田初美女王に指した鬼手は?(5点)
1.▲2四銀 2.▲6八銀 3.▲9三銀

Q4.私のココロの兄弟子は植山悦行。では、ココロの師匠は?(3点)
1.二上達也 2.真部一男 3.大野八一雄

Q5.私のココロの女性師匠は藤田麻衣子。では、ココロの姉弟子は?(3点)
1.大庭美夏 2.松尾香織 3.中倉宏美

Q6.このブログの連続投稿日数は何日?(5点)
1.304日 2.504日 3.704日

Q7.2009年夏、私が沖縄県石垣島で会った棋士は誰?(5点)
1.野月浩貴七段 2.高田尚平六段 3.安西勝一六段

Q8.中井広恵女流六段は北海道稚内市出身ですが、中井女流六段が持っている同市の肩書はどれ?(5点)
1.観光大使 2.ふるさと大使 3.旅行大使

Q9.「LPSA金曜サロン」で、私が初めて指導対局を受けた女流棋士は誰?(5点)
1.藤森奈津子女流四段 2.大庭美樹女流初段 3.藤田麻衣子さん

Q10.「私が勝手に選ぶ女流棋士ファンランキング」に、ただひとりランクインした女性アマチュアは誰?(5点)
1.鈴木真里 2.成田弥穂 3.渡部愛

Q11.私が学生時代に旅先で出会った「角館の美女」の誕生日は、何月何日?(5点)
1.4月23日 2.6月24日 3.7月31日

Q12.このブログは基本的に写真を載せませんが、一度だけアップしたことがあります。その写真とは何?(5点)
1.中井広恵女流六段とのツーショット写真
2.庭の桃の木に実った桃
3.沖縄・鳩間島全景

Q13.「主人より先に大沢さんと知り合っていたら、私、大沢さんと結婚していたと思う」と言った人妻は誰?(5点)
1.中井広恵 2.湯川恵子 3.A氏の奥さん

Q14.社団戦で、私が時間切れで負けたのは何回?(5点)
1.1回 2.2年連続2回 3.3年連続3回

Q15.私が新卒で入った会社で、同僚の女性に振られたときのセリフは何?(5点)
1.私があなたを嫌いだということを、あなたは気付いてると思ってた。
2.私に彼がいることを、あなたは気付いてると思ってた。
3.私が婚約していることを、あなたは気付いてると思ってた。

Q16.2011年9月1日に開かれた「LPSA木曜ワインサロン」の帰りに、私が途中下車した駅はどこ?(5点)
1.錦糸町 2.高円寺 3.巣鴨

Q17.駒込ジョナサンに務める私たちのマドンナ・Ayakoさんの出身地はどこ?(5点)
1.北海道 2.三重県 3.沖縄県

Q18.信濃わらび山荘将棋合宿「最恐戦」で、まだ実現していないカードはどれ?(3点)
1.中井広恵-植山悦行 2.中井広恵-大野八一雄 3.植山悦行-大野八一雄

Q19.私が「LPSA芝浦サロン」の近くで摂る、立ち食いそば屋の名前は?(3点)
1.小諸そば 2.富士そば 3.ゆで太郎

Q20.私がこれまで、「マイナビ女子オープン」に出した懸賞金は、総額いくら?(5点)
1.124,000円 2.324,000円 3.524,000円

Q21.「将棋ペン倶楽部」に掲載された「運命の端歩」で、親戚のおじさんが得意にしていた戦法は「原始中飛車」と、もうひとつはどれ?(3点)
1.鬼殺し戦法 2.角頭歩戦法 3.原始棒銀

Q22.「私が勝手に選ぶ女流棋士ファンランキング」第1位の室谷由紀女流初段に、私が勝手に付けている枕詞はどれ?(5点)
1.スレンダー 2.パーフェクト 3.ビューティー
コメント (5)
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冬の九州旅行7・サイキック喫茶店「あんでるせん」に行く(後編)・マスターに感謝

2011-12-24 02:27:52 | 旅行記・九州編
マジックは快調に進む。マスターは、ときに小道具を取り出して、笑いを取る。
いまはやっていないが、以前はポラロイドカメラを使って、念写をやっていた。客のひとりに1枚のカードを憶えさせ、客を写真に撮る。すると、現像された写真に、そのカードが心霊写真のように写っている、というものだ。
驚くのはこれだけではない。写真の中にはもうひとつ、何かが写っているのだ。
それは人のときもあったり動物のときもあったりする。私が12年前に撮ってもらったときは、かわいらしい女性が写り込んでいた。撮影の瞬間、被写体の脳内のどこかから、記憶の画像を取り込んでしまうのだと言う。
マスターは「彼女」を、高校時代の同級生ではないか、と言ったが、確かにウチの高校にいそうな雰囲気があった。
人は、一瞬目にしたものでも、脳のどこかにそれを記憶するという。この女性は、確かに私のタイプだった。
3の女性が、整理番号を引く。当たった番号の女性にマスターが、あなたは将来結婚します、と言った。マスターには、これから結婚する人、もしくは結婚した人の横には、伴侶となる人の影が見えるという。ちなみに私は、39歳と42歳のときに言われた。
39歳のときは、次に番号が当たった人は、将来結婚しますと言われ、当たった私が自分の生年月日と任意の絵を描いたのだが、その後マスターが用意した紙には、私が描いた絵と寸分違わぬ絵が描かれていた。マスターは、私が描く絵を予知していたのだ。
また生年月日のほうは、思いもよらぬ方法でピタッと当てられた。
こんなことがあったから、私は将来結婚すると信じたのだ。しかし、とんだスットコドッコイだった。繰り返すが、自分は何てピエロだったのだと思う。
今回当たった女性にマスターは、彼氏の名前を当てると言った。マスターは結婚相手の名前まで分かるらしいのだが、現在付き合っている人と名前が違うとマズイので、結婚相手の名前は言わない。付け加えれば、マスターはその人の一生も分かる、と聞いたことがある。
マスターが女性にメモ用紙を渡す。彼女が名前を書き始める。もちろんマスターからは、彼女の書く字は見えない。そのときマスターが私に、「りょうちゃん」と囁いた。
彼女の書いた字は「亮二」。マスターは名前ばかりか、漢字まで当てていた。
続いて番号が引かれ、今度は私の後ろにいる男性に当たり、彼の生年月日と姓名を当てると言った。当然、両方とも当たった。名前は漢字までピタリ。マスターは、その人を見ればだいたいの名前がイメージできるという。
マスターのパフォーマンスを見た中には、「超能力だ」と驚く客もいて、私もそのひとりなのだが、実際はMr.マリックやセロがやったのと同じネタもある。だからこのブログでも「超能力」という単語は使わず「マジック」で通しているのだが、中にはマスターの超能力を僻んで? あれはマジックだ、と反論する手合いもいるわけだ。
しかしこの、名前や生年月日を当てる能力。これらはどう考えても、マジックとは思われない。もしマリックやセロが、赤の他人の名前をピタリと当てるようなら、そのときこそマスターのマジックを、「マジック」と考えよう。
マスターがカレースプーンを出す。
「いままではメンタルでしたけど、ここからはサイキックですよ」
と言うと、スプーンをスッと曲げてしまった。さらにスッスッとやって、スプーンをグニュグニュに曲げてしまう。
五寸釘を私に渡される。曲げてみてと言われるが、曲がらない。しかしマスターは、これも軽く曲げてしまう。
「スプーンはね、食べると美味しいんですよ。軸のほうはマズイですけど」
そう言ってスプーンをかじり、バリバリ食べる。玉の部分が3分の1ほどなくなり、綺麗な歯形が残った。
先ほど出された500円玉もかじってしまう。やはり3分の1がなくなる。しかし客に返さなければいけないので、マスターがフッと息を吐く。すると500円玉は元に戻ってしまった。
ほかのお金も、いろいろやってしまう。10円玉の拡大縮小も自由自在である。狭いビール瓶の口から、ポンと10円玉を入れてしまう。
100円玉に紙を巻いて、上から爪楊枝を刺すと、そのまま貫通してしまう。それと同じことを、客の女性にもやらせてしまう。もちろん成功する。
千円札に50円玉を当てると、そのままスーッと入ってしまう。50円玉は、千円札の中を自由に泳ぐ。
カウンターの女性は口をあんぐりして、もう言葉も出ない。私は見慣れているので、まだ余裕がある。客の様子を見て、ゲラゲラ笑うだけだ。
「病気はね、自分が治すんですよ。病気を治したい。これはいけません。本人の願望が入っている。治った、と思うのです。医者が薬を出してくれるけど、それは補助的なもので、本質は自分の体が治すんです」
「お客さんの中には、背が低いことで悩んでいる人がいますね。5センチの物差しで1センチを測ると、1センチ誤差があっても大変ですね。だけど10メートルの物差しで測れば、1センチの違いは何でもありません。
身長もそうで、長い距離から見たら、人と比べて数センチ低いことなんて、なんでもありませんね」
マスターがそう言いながら、千円札から50円玉を抜き取ると、そのナニに、サインペンでサインを書いた。いままで硬貨に書いたのは何度も見たが、ナニに書いたのは初めて。もちろんこのナニを出したのは私だから、これは私の物になる。
今年はマスター、何か私に、手厚くしてくれたような気がする。
「最後にひとつ、笑い話を紹介します」
マスターが言う。おっ、これは私が初めて聞く話ではないか? それからマスターは、興味深い話をした。
「ある貧乏な親子が、海に釣りに行きました。小舟を借りて、沖に出ます。でも何時間経っても、ちっとも魚が釣れません。いよいよ陽も沈みかけてきたころ、やっと魚が釣れました。そこはいっぱい魚が釣れて、入れ食い状態です。そこで子供がお父さんに、『ねえ、竿を置いてあるこの位置に、印を付けておこうよ。そうして次もこの位置に竿を置けば、またいっぱい魚が釣れるよ!』と言いました。
でも、ここは海です。やっぱり子供の考えることなんだなあ、とお父さんは苦笑いしながら、子供に言いました。
『バカだなあ。次に来る時、小舟を借りられるおカネがあるかどうか、分からないじゃないか』」
みんなはちょっと考えたあと、クスリと笑った。
「アメリカンジョークですね。これは、子供が考えているほど、大人は利口じゃない、という笑い話ですね。
――ここでは2つの考え方があります。親は自分が思っているほど利口じゃないので、人生もむずかしく考える必要はない。だからおもしろおかしく生きていこう。
もうひとつは、親がこの程度なんだから、自分があとちょっと努力すれば、親を越えられるんだ、ということです。どちらを選ぶかは、あなた方次第ですよ」
一同、しんみりとする。何か私に、これからの生き方を諭されたような気がした。
時刻は午後9時40分。実に2時間半にもおよぶマジックショーが終わった。
大小数えて、約50のマジックを見せてもらった。繰り返すが、それでこのマジックショーは無料である。言うまでもなく、先に払ったおカネは、飲食代だったからだ。
グニュグニュ曲げたスプーンとフォークは何本か用意され、それは300円で売ってくれる。買う、買わないは私たちの自由だ。冒頭に使ったESPカードも販売されており、私が11年前に買ったときは、1,800円だった。
ショーが終わっても、みんな立ち去り難く、マスターと次々に握手を交わす。そのたびにマスターは、客の頭に中指を触れ、疲れを取ってくれる。あるいは元気を注入してくれているのだろうか。
「今年も、ありがとうございました」
「だんだんいいオーラになってきてますよ」
私が御礼を言うと、マスターはすかさず返してくれた。昨年は、私に癒しのオーラが出ていると言ってくれたが、それからオーラの質が変わったのだろうか。
私は、いまさらという気もするが、本日聞きたかったことを、あらためて問うた。
「私…この歳になって失恋しちゃったんですけど、どうやって克服すればいいでしょうか。やっぱり、いまを充実して生きる、ということでしょうか」
マスターは何か言ったが、私のセリフが長かったのでかぶってしまい、言葉がよく聞き取れなかった。ただし最後に、
「いい人が現われますよ」
と言った。この言葉に、どれくらいの重みがあるのだろう。そもそも数年前に言われた私の結婚の運命は、まだ生きているのだろうか。自分の行動が消極的すぎて、結婚の運命が変わってしまった、ということはないのだろうか。
まあいまは、マスターの言葉を信じて、前向きに生きていくしかない。
ここで、マスターの主張をまとめておく。

・過去なんて生ゴミだ。くよくよ考えない。
・いまを充実して生きる。
・物事は何でもいいほうにいいほうに考える。
・物事はイメージしてみる。
・努力は、とりあえず3ヶ月続けてみる。
・夫婦仲が悪くなったら、奥さんをヨソの女性と考える。
・物事をひとつの方向から見ない。多角的に見る。
・固定観念に捉われない。
・自分には出来ない、とハナから否定しない。
・「願望」の言葉は使わない。「完了形」にして使う。

さて、私もマスターを真似て、予言をしておこう。
このブログを読んで、あんでるせんに行く人が何人か出るであろう。
そしてこのブログのコメント欄に、新規の読者からの御礼のコメントが、2012年12月31日までに、一通は来るだろう。また、男性棋士・女流棋士・将棋ファンなど、古参の読者からも、一通は御礼のコメントが入るだろう。
さらに、私に直接会って、あんでるせんに行ってきましたと報告する人が、ひとりはいるだろう。
あんでるせんへの予約は2ヶ月前から、電話にて受け付ける。このブログを読んでいる人なら、電話番号を調べることは容易だろう。予約が取れたあとで早割の飛行機便を決めれば、安くあがる。
なお、第1、第3日曜日は休みだから注意。ショーは1日2回だが、夜の部は遅くなるので、電車利用の人は注意したい。

――マスターの予言どおり、今夜ショーを見た人は、らんらんと目を輝かせて、あんでるせんを後にした。
私が川棚駅前に戻ると、21時57分発の長崎行きがあった。今夜の宿は諫早に取ってある。一度通った路線を引き返すのは旅のポリシーに反するが、やむを得ない。
でも、今年も楽しかった…。店に入る前は傷心だったけれど、少しだけ生きる勇気をもらった。快速電車の中で私は、年に一度の、夢のような出来事を思い返していた。
(27日につづく)
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冬の九州旅行6・サイキック喫茶店「あんでるせん」に行く(中編)・失恋の痛手を克服する方法とは

2011-12-23 01:33:27 | 旅行記・九州編
先にも書いたが、マスターの風貌は、俳優の丹波義隆に似ている。マスターに初めてお会いしたのはいまから12年前だが、それから全然変わっていない。せいぜいメガネを掛けたくらいだ。
「こんばんは。きょうはようこそお越しくださいました」
マスターが挨拶をする。ここから約2時間、この狭い空間で、華麗なるマジックショーが展開されるのだ。ああ、わくわくする。
ここで、このブログ恒例の、席の配置を記しておこう。

   マスター
――――――――――
男 女 女 女 女 一公
○ ○ ○ ○ ○
○ ○ ○ ○ ○
○ ○ ○ ○ ○

私の列はカウンターの前なので、みんな着席している。後方の客は立っており、最後列は椅子の上に長板を置いて、その上に立つ形だ。カウンターの中から見ると、雛壇のように見えるはずだ。整理番号は私が1番。以下左に2、3…と進む。
後方は背の高さも勘案して配置されているので、順番どおりにはなっていない。ベストの席は2と3で、3の人が、整理番号が書かれたカードを引くのだ。
開演。まずはお客様から指環を借りる。2の女性が指環を渡した。マスターはそれを掌に乗せ、10度浮かせます、と言う。すると、指環の端が、ククッ…と浮き上がった。
「次は35度」
また指環が浮き上がる。オオーッ、と歓声が上がる。「磁石か何かで浮かせてると思われるので、これに入れますよ」
と、プラスチック製の筒を出し、その中に指環を入れた。
そこでマスターが念を入れると、また指環の端が、ククッと持ち上がった。今度はその指環を、小さな木箱に入れる。後方の男性から100円ライターを借り、下から軽くあぶると、指環のカラカラとした音が消えた。
と、マスターが首からネックレスを外す。その先には、いまの指環がくくりつけられてあった。指環の瞬間移動だ。またもみんなが歓声を上げる。
「これで、この指環にはパワーが入りました」
とマスターが言う。指環は人間の邪気を吸収してくれるという。
ナットが嵌まったボルトを、筒に入れる。再びマスターが念を入れると、ボルトがくるくる回り、ナットが外れた。
恐ろしい能力だが、マスターはこれを習得するのに、何ヶ月もかかったという。
「ボルトとナットが外れた絵をイメージするんです。
一流のスポーツ選手は、『繰り返しの大切さ』を知っていますね。毎日毎日、同じことを繰り返す。皆さんも、何かやろうと思ったら、3ヶ月間、続けてみるといいですね。そうすると、必ず効果が現れてきます」
マスターがESPカードを取り出す。○、+、□、△、波形の5枚のカードが5セット入っているものだ。世の中はすべて、これら5つの記号で成り立っているらしい。
マスターがカードを5枚持ち、私たちにも5枚渡す。これをお互いが順番に1枚ずつ出し合い、同じマークを当てるという趣向だ。私たちは、整理番号2~5の女性が代表して、これはと思うマークを出す。
なぜ、1番の私が選ばれなかったか。それはマスターに私の顔を憶えられているからだ。ウソかホントかは分からぬが、マスターは1度来た客の顔は憶えているという。私は年1回しか訪れていないが、さすがに13年も連続で来れば、マスターでなくとも、私のことを憶えるだろう。
私は、これから行われるであろうマジックのほとんどを、すでに拝見している。私が外されたのは、お互い暗黙の了解があった。
マスターが1枚カードを裏のまま、布の上に置く。その手前に、2の女性が1枚置く。ここでマスター、早くも両方を開けてしまう。それらは「□」で、当たりだった。
続いて3の女性と同じことをする。必ずマスターが先に置き、それから客が置く。これなら不正のしようがない。
4の女性とも同様にする。5の女性のとき、
「あなたの持っているカードは○か△のはずです」
とマスターが言う。
女性が見ると、確かにその2枚が残っている。マスターが、じゃあ私はこちらを置きます、と言い、4の女性も、選んだカードを裏向きに置いた。
あらためて、5ペアのカードを次々と表に返してゆく。
□、波形、+、○、△。
すべてがドンピシャリだった。
「私は未来の映像を見て、この結果を知っていたのです」
とマスターが言う。「だから皆さんがどんなカードを出そうとも、私にはこの結果になることが分かっていました」
と続けた。
いつもながら、見事な手際である。
「みなさん改めまして、私がHisamura Shuneiです。Shunちゃんと呼んでください。みなさんがいまここにいるのは奇跡ですよ。こんな九州の片田舎まで来て、みなさんがこうして顔を合わせたんですから。それは平安時代でも江戸時代でもない。いまの時代に生きて、ここに来たからこそ出会えたのです。
これはほんの名刺代わりです。いまは皆さんボンヤリしてますけど、マジックが終わってこの店を出るときには、皆さんシャキッとしてますよ」
マスターは滑らかな口調で語る。
私が毎年あんでるせんに訪れているのは、もちろんマジックショーを楽しむためだが、マジックの合間にさりげなく盛り込まれる、人生を生きるための訓話を拝聴すること、がある。とくに私は今夏、人生最大の「勝手な失恋」をした。それを癒すにはどうすればいいか、その答えを聞きたい、という目的があった。
むろんショーの最中はこちらから話しかけることはできないので、ショーが終わったあとの雑談時に聞くつもりだ。東京のジョナ研の仲間は、失恋なんか忘れて、これからを前向きに生きろよ、と言ってくれているが、マスターなら、私の思いもよらない言葉で諭してくれるような気がした。
マスターが、お札と硬貨を貸してくれませんか、と言う。マスターのコインマジックも絶品で、からくりが全然分からない。これまで見たものでは、500円玉を掌の上でペロンと湾曲させる。100円玉を3つに割り、それを元に戻す。100円玉にタバコを貫通させる。50円玉を親指と人差し指で半分に折る。10円玉を500円玉大に大きくしたり、1セント大の大きさに縮めたりする。
お札を使ったものでは、千円札の中に、50円玉がスーッと通る、などがあった。
私の財布の中には、まあその、その結果になった硬貨が、いまも御守り代わりに入っている。
今回私は、おカネを出すつもりはなかったのだが、後ろがグズグズしているので、千円札1枚と50円玉、10円玉、5円玉を出した。各種おカネはすぐ出せるよう、ポケットにしのばせているのだ。結局私は、出したかったんじゃないか、と思う。
マスターが壱万円札を取り、それを空中に浮かせた。みんなビックリしているが、驚くのはこれからである。だが物には順番がある。マスターはその前に、トランプマジックを始めた。
見事なマジックにみんなが驚く。その合間に巧みなジョークが入り、みんなが笑う。
「人間は、可笑しいから笑うんじゃありませんよ。可笑しいと思う心があるから笑うんです。忙しい忙しいと言ってる人がいますけど、忙しいとは心を亡くす、と書きます。あれはよくありませんね。
本屋に入って本棚から1冊の本を取って買う。これは宿命です。だけどそれを面白いと思うか面白くないと思うかは運命です」
それからマスターは、たかだか喫茶店なのに、予約制にしてしまって申し訳ありません、と謝った。しかし予約制にする前は、朝早くから店の前に長蛇の列ができ、バス会社や近隣に、迷惑を掛けどおしだったという。
「過去なんてね、生ゴミですよ」
さらにマスターが言う。これは私の好きなフレーズで、毎年聞いている。私がこのブログを始めたころ、エントリのタイトルにも使ったし、「駒音掲示板」にも書いたことがある。
マスターは続けた。
「失恋をしてくよくよしている人は、過去を忘れて、現在を充実させてください」
ええっ!? これは早くも、私が聞きたいことの答えを、ズバッと言われてしまった形だ。しかし…。「過去なんて生ゴミだ」は毎年聞いているが、その後に失恋話を加えたケースは一度もなかった。
マスターは、悩みを持ってここに来る人には、それを察知して、その回答をさりげなく言うことがあるという。ということは、今回は私への回答だったのではなかろうか!? マスターは続ける。
「人間は過去には戻れませんね。いま30代の人は、20代のころは若かった、と言う。40代の人は、30代のころはよかった、と嘆く。50代の人は、40代が楽しかった、という。60代の人は、50代に戻りたい、と言う。70代、80代…人間はいつになっても同じことを言うんですね。
だけど過去には戻れない。でも、ひとつだけ戻れる方法がありますよ。いま30代の人が、40代になった自分を想像する。それからいまの自分を思えば、現実は30代。10年間戻っているわけですね。そうなったら、いまの自分が何をすべきか、分かりますよね。うかうかしていられないですね」
これは12年前にも聞いて、なるほどなあと思ったのだが、それから12年、私は何も進歩していない。成長していない。この間私は、何をしていたのだろうか。あんでるせんでの有意義なひとときが、まったく活かされていない。
マスターはトランプを取り出して、いくつかマジックを行うが、話は快調に続く。
「男性と女性は、物の考え方が違いますね。会社で、上司が部下の男性と女性に、ホッチキスを買ってきて、という。それをもらって、上司が『これ、どこで買ってきた?』と聞くと、男性は『コンビニです』とか答える。だけど女性は、『私、間違った物を買ってきたでしょうか』と言って、別の物を買い直してくるんですね。同じ言葉を聞いても、人によってこれだけ受け取り方が変わるのです。
ある旅館で、客がポンポンと手を叩く。仲居さんは、なにか用かと思って部屋に来る。池の鯉はエサが貰えると思って寄ってくるけど、電線にとまっていたスズメは驚いて逃げてしまう。
同じ音を聞いても、これだけ反応が違うのです。物事を一面的に見ないで、あらゆる方向から見る、これが大切です」
みんながうんうんと頷く。
「あなたは1回結婚しましたね」
マスターが3番の女性に言う、女性は恥ずかしそうに頷いた。どうも、バツイチらしい。マスターは、何もかもお見通しなのだ。
「人生は何事もいいほうに考えなければいけません。離婚したって、それまでの生活で学ぶことがあったんだから、プラスだったと考えるべきです。
夫婦仲が冷えるときがありますね」
来た。これは私の最も好きな話だ。「あれはね、旦那さんが奥さんを、隣の家の奥さんだと思えばいいのです。隣の奥さんが、自分のためにわざわざ夕ご飯を作って、ご相伴までしてくれる。これで帰るのかと思ったら、さらにはお風呂まで沸かしてくれる。もう帰るだろうと思ったら、布団まで敷いてくれる。こんな有難いことはありませんねえ。
もしふたりの仲が悪くなったら、あの子供をごらん。仲が良かったころに出来た子よ、って!」
そこでマスターがテーブルをパン! と叩いて、ドッと笑いが起きる。上質の漫談を聞いているようだ。
もう、マジックショーを見に来たんだか、笑い話を聞きに来たんだか分からない。そう、あんでるせんの楽しみ方はマジックショーにあらず。その真骨頂は、マスターの訓話にあるのだった。
先の失恋・過去-現在-未来の話に戻る。
「失恋をしてもね、過去は忘れて、つねに現在と未来を見ることです。いまを充実させれば、それが明るい未来にも繋がっていくし、過去のつらい出来事も、楽しい思い出に変わります」
そうか…。そうだよなあ。いや、確かにそうだ。
しかしこれ、ジョナ研のメンバーも同じようなことを言っていた。だが、将棋バカの言葉だから全然有難味がなく、私は右から左へ聞き流していたのだ。
それが同じ言葉でも、マスターが言うと、スッと胃の腑に落ちる。ここが不思議なところだ。
もっとも将棋だって、プロの解説とヘボアマチュアの解説では、同じ変化を言っていても、納得の度合いが違う。だからそれは、やむを得ないことなのだ。
「いまを充実させれば、過去のつらい出来事も楽しい思い出に変わる」
私は今回、実に有難いアドバイスをいただいたのだった。
(つづく)
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冬の九州旅行5・サイキック喫茶店「あんでるせん」に行く(前編)・マスター登場!!

2011-12-22 00:16:09 | 旅行記・九州編
予約は午後5時。その時間にならないと店内には入れないので、それまで時間をつぶすことになる。国道を挟んだ向かいにも別の喫茶店があり、そこに入って気分を高めるのが一公定跡である。
ところが、その喫茶店「ゆめうさぎ」のシャッターが閉まっている。貼り紙があり、店の裏手にある古民家に移転したという。
早速そこに向かうと、確かに古民家だ。ただしその外観は、ウチに雰囲気が似ている。ということは、ウチは古民家ということか。
店に入ると、カウンター3席、4人掛けのテーブル1つの、簡素な造りだった。カウンターには女性がふたり座っているので、私はテーブルにつくが、いささか居心地がわるい。
私は和風きのこパスタを注文する。外が見えないので、備え付けの長崎新聞を読む。脚本家・市川森一のお通夜が長崎市で行われたという。市川森一は、諫早市の出身だ。私が昼に通ってきた場所である。
読者欄に、「肥前小浜-千々石間の廃線跡を歩いた」という投稿があった。この廃線跡付近も、きょうバスで通ってきている。あの場所に鉄路が敷かれていたのかと思うと、感慨深い。
パスタは美味だったが、店からサイキック喫茶店が見えず、いささか消化不良だった。この店に訪れることはもうないと思う。
4時50分、会計を済ませ、川棚駅のすぐ向かいにある、西肥バスターミナルの待合室に入る。ここから2階のサイキック喫茶店が見える。1階のお菓子屋は、数年前に、コインランドリーに変わった。
外で待っている客は見当たらない。すでに何人かは、階段のところで待っているようだ。5時になった。私もはやる心を抑えて、喫茶店に向かう。
前の人に続いて階段を上がり、私も中に入る。こここそが、私が毎年12月に訪れているサイキック喫茶店『あんでるせん』である。
店内は広くもなく狭くもない。旧LPSA金曜サロンの対局スペースと同じくらいか。
右奥に5人分のカウンターがある。この向こう側で、マスターがマジックを行うのだ。あとは4人掛けのテーブルが5つに、6~7人が座れる大テーブルが設えられている。
マスターの奥さんと思しきママさんに名前を告げると、カウンターに座るよう言われた。私は一番右の席。ここは「整理番号1番」の席で、予約の早い順に番号が振られるから、私が最初に予約したことになる。ちなみに予約は2ヶ月前から可能で、私は10月29日に取った。しかし、もっと前に予約した人がいるはずだが…。まあいい。
あんでるせんでは、この整理番号が重要である。通常3番の席に座った人が整理番号を引くのだが、その番号に当たった人が、マジックショーのアシスタントのような役目をするのだ。この時マスターが、
「次に番号を引かれた人は、これからの人生で結婚します」
とか言うわけだ。
ここは、ただマジックを行うだけでなく、こんな突飛なことも予言してしまうのだ。これで私は過去に2回、マスターにそれを言われたというわけである。だから私が船戸陽子女流二段に一目惚れをした時、私は彼女と結婚すると信じて、疑わなかった。まあいまでは、自分のバカさ加減を嗤うしかないのだが。
すでに他の客も着席しており、数えてみると14人いた。定員は31人なので、かなり少ない。
それにしても、1年ぶりのあんでるせんが、懐かしい。私の旅行は、2月のさっぽろ雪まつり、5月の博多どんたく、8月の八重山諸島など、毎年行くところが決まっているから、旅先ではいつも「ああ、今年もこの地に帰って来た」と思う。
あんでるせんもそうで、1年間を無事に暮らし、今年もここに来られたことを、とてもうれしく思うのだ。
目の前にあるテレビには「さんまのまんま」の再放送が流れていた。ゲストは仲里依紗(なか・りいさ)。将棋ドラマ「ハチワンダーバー」の巨乳真剣師・中静そよ役で出演していた女性だ。
彼女は長崎県東彼杵(そのぎ)郡の出身とのこと。ここ大村湾の反対側にある島だ。彼杵半島は一度訪れてみたいのだが、いまだその機会がない。
壁には無数のポラロイド写真が貼られている。この店の噂を聞きつけて、多くの芸能人が訪れているのだ。列記してみると、
Aiko、杏里、いきものがかり、石原真理子、風間トオル、川渕三郎、クリスタルキング、ミスター都市伝説・関暁夫、竹村健一、ダチョウ倶楽部・上島竜兵、原田知世、藤岡弘、、舞の海、武藤敬司、MEGUMI、森山愛子、吉村作治、両国(力士)、若村麻由美、などなど。
藤岡弘、などは7回も訪れたという。圧巻はIBMの元会長で、わざわざ自家用ジェット機で長崎空港に降り、あんでるせんに訪れたらしい。
私の読みが正しければ、羽生善治王位・棋聖も、あんでるせんの存在はご存じのはずだ。もし羽生二冠が訪れれば、記念写真を撮られるに違いない。
ママさんがメニューを持ってくる。ここは喫茶店…軽食喫茶なので、飲食物の注文をしなければならない。それを食べ終えたあとマジックショーが始まるのだが、これは「マスターの余興」という位置付けなので、追加料金は一切かからない。私が毎年通っている大きな理由のひとつは、ショーの観戦料金を取らない、いうところにある。
私はスパゲティミートソース(788円)とアイスコーヒー(525円)を注文する。あんでるせんに訪れるのは13年連続13回目だが、意識はしていないのに、毎年違うメニューを注文している。ミートソースとアイスコーヒーは単品で頼んだことはあるが、両方頼んだのは今年が初めてだった。
遅刻組が何人か来て、私の横に年配の女性の3人組が座った。あんでるせんに来る客は圧倒的に2人組以上だ。私のようなさびしいひとり旅の人間は、とんと見たことがない。
ミートソースが運ばれてきた。味はふつうである。もう少し量があるとうれしいが、マジックショーを無料で見られるのだから、文句を言ってはいけない。
しばらく経って、アイスコーヒーが運ばれてくる。隣の女性に話しかけるわけにもいかないし、ひとりでは間が持たない。去年はこの待ち時間に、「LPSA詰め将棋日めくりカレンダー」の問題を作った。しかし今年は、そんな気力はない。
お客は最終的に、21人になった。どうも、団体のキャンセルがあったようだ。それで私の整理番号が、「繰り上げ1番」になったらしい。
宿泊施設などと違って、あんでるせんはキャンセル料を取らない。もちろん取りようがないからだが、ということはお客のほうも、一度予約を入れたらキャンセルをしてはいけない、ということである。
ふだんの生活でもそうだが、私は約束をホゴにする人を信用しない。
以前Ayakoさんに、飲み会の約束をすっぽかされたことがあったが、あれは私に言わせれば大減点で、これから私と彼女との仲が親密になったとしても、私は彼女を全面的に信じない。
会計の時間である。マジックショーの前に、済ませるものは済ましておこう、ということだ。私は1,313円。これ以上はもう1円も払う必要なく、安心してマジックショーを堪能できるのだ。
ママさんがチャンネルを変え、7時のNHKニュースが始まった。長崎県彼杵郡で起こった殺人事件を報じている。これは全国ニュースだから、かなりの事件である。きょうは妙に長崎県が取り上げられるな、と思う。
7時10分になった。カウンターにマスターが現われ、テレビのスイッチを切った。
彼こそがあんでるせんのマスター・Hisamura Shunei、その人であった。
(つづく)
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