1日、ふたりのクリエーターが亡くなった。
ひとりはマンガ家の内山まもる。享年62。代表作に「ひょうたん」「ザ・ウルトラマン」「リトル巨人くん」「番外甲子園」など。
小学館の学習雑誌に「ウルトラマンシリーズ」を連載していたので、私と同年代の読者は、一度は内山まもるのマンガを読んでいるはずである。氏の人柄を表わすような、温かみのある絵だった。
もうひとりは、アニメーターの荒木伸吾。アニメ「キューティーハニー」のキャラクターデザインを手がけたことで知られる。こちらも、「ハニー、フラッシュ!!」の変身シーンで、心を躍らせた少年も少なくなかったはずである。数年前に「キューティーハニー」のDVD-BOXが発売されたが、荒木伸吾がパッケージデザインを手がけ、話題を呼んだものだった。享年72。
ご冥福を、お祈りします。
(きのうのつづき)
「中井広恵研究室」は、実戦解説に入っていた。題材は、少し前に指された女流名人位戦A級リーグ、対矢内理絵子女流四段戦である。やうたんのゴキゲン中飛車に、中井広恵女流六段が急戦で対抗していた。
一局の将棋を鑑賞するとき、解説なしで観るのと、解説あり、とくに自戦解説を聞きながら観るのとでは、大きな差がある。やはり当事者の解説があったほうが、対局当時の心理状態や枝葉末節の読みまで知ることができ、有意義である。本局の中井解説もその例にもれず、とても内容の濃い解説となった。
ところでその中井女流六段、黒系の服がオシャレである。10月はハロウィンのネイルアートを施していたが、いつも中井女流六段は、こんなに身だしなみにチカラを入れていただろうか。たぶん、私が気付いていなかっただけなのだろう。
解説が終わると、もう午後9時を過ぎていたが、20日(日)に行われた女流最強戦のウラ話が出たりした。あの将棋は渡辺弥生女流1級が「横歩取り△4五角」の趣向に出て、一時は必勝の態勢にまでなった。さすがの中井女流六段も負けを覚悟したらしい。しかしそこを逆転するあたりが、中井女流六段の貫禄なのだろう。
当日は将棋会館での対局だったが、中井女流六段いわく、「パソコンでの対局のときは、何かのときの用心のために、20秒あたりでクリックする」らしい。記録係の秒読みより、はるかに短い考慮時間になるわけで、女流最強戦は、ハタで思うより厳しい棋戦なのだった。
時刻は9時半近くになり、ここから遅い食事会である。近くの「笑笑(わらわら)」で。参加者は7人。
案内された場所は、畳席の隅。長方形のテーブルで、キチキチだった。
席の配置は、中井女流六段から時計回りに私、Fuj、W、Kaz、Is、ミスター中飛車の各氏。後に石橋幸緒女流四段が合流し、Is氏の右に座った。私は四角形の短い辺の、角のところに位置した。別に意識したわけではないが、中井女流六段とは、隣同士になる。この「意識しない」のがいいのであって、ヘンに意識すると、かえって席が離れてしまったりするのだ。
というわけで、今回は中井女流六段の左の顔を拝む形である。中井女流六段は、私の左にも右にも座ったことがあるが、個人的には、私の右手に座ってくれたほうが、私自身が落ち着くようである。以前、川口駅前の海鮮居酒屋で、4人掛けのテーブルに座ったとき、私が居飛車穴熊の席、中井女流六段がその右隣に座ったことがあったが、あれがベストだったと思う。うん、あれはいい席だった。
8人もいるから、豊富な話題が出る。 石橋女流四段のツイッターに、「先日の日本シリーズで、新聞の見出しに『逆王手』と書かれていたが、あれはおかしい」というフォロワーがあったらしい。
この「逆王手」は、新聞業界の悪しき慣習で、天下の読売新聞までが使っていた。かつて田邊チューコー氏も専門誌に書いていたが、王手はどちらか一方がするもの。3勝3敗ではどちらも「王手」がかかっているので、「逆王手」はあり得ない。
それはもっともなのだが、「逆王手」という響きが、切り返しの代名詞にも聞こえて、つい使いたくなるフレーズなのも確かだ。
「将棋倒し」は事故のイメージがあるけれども、「逆王手」は短期決戦の接戦を表わす。せっかくマスコミが将棋用語を使ってくれているのだから、将棋ファンはもう少し寛容になってもいいかな、と思う。
中井女流六段が、最近また私のブログを読んでくれているという。中井女流六段はかつて当ブログの愛読者で、LPSA金曜サロンに植山悦行七段が見えていたころは、
「大沢さん、また何かヘンなこと書きました? ウチのが文句言ってましたよ」
が挨拶代わりだった。
だが、当ブログの内容があまりにも変態的なので、中井女流六段もついていけず、当ブログから離れた。
ところが今回合宿があったため、中井女流六段がその内容を読むべく、久々に当ブログを覗いた、ということらしかった。一旦離れた読者が戻ってくれる、というのはありがたいことである。もう、中井女流六段を当ブログから離さない。
と思っている矢先、中井女流六段が不満を漏らす。
「でも大沢さん、ウソばっかり書くんだもん」
どこかで聞いたフレーズである。私がブログを始めたころ、藤田麻衣子さんに同じことを言われた気がする。
「合宿のクルマの中で、私がかけていた曲は、中森明菜じゃありませんよ。アイドルのヒット曲集です」
ああ、そうだったか。このブログは、ウソは書かないようにしているが、私の記憶はいつも曖昧で、細部で間違っていることがよくある。また、激しい脚色もあるので、読者はそのサジ加減を考慮しながら読んでくれるとありがたい(中井女流六段とのやりとりなどは、特にそうである)。
あっちこっちで話し声が飛び交う。そんな中、中井女流六段と私は、ふたりでひっそりと話す。
「中井先生、だから長崎に行きましょうよ」
私は中井女流六段を誘う。
「今年はひとりで行くんですか?」
と、中井女流六段が聞き返した。
(つづく)
ひとりはマンガ家の内山まもる。享年62。代表作に「ひょうたん」「ザ・ウルトラマン」「リトル巨人くん」「番外甲子園」など。
小学館の学習雑誌に「ウルトラマンシリーズ」を連載していたので、私と同年代の読者は、一度は内山まもるのマンガを読んでいるはずである。氏の人柄を表わすような、温かみのある絵だった。
もうひとりは、アニメーターの荒木伸吾。アニメ「キューティーハニー」のキャラクターデザインを手がけたことで知られる。こちらも、「ハニー、フラッシュ!!」の変身シーンで、心を躍らせた少年も少なくなかったはずである。数年前に「キューティーハニー」のDVD-BOXが発売されたが、荒木伸吾がパッケージデザインを手がけ、話題を呼んだものだった。享年72。
ご冥福を、お祈りします。
(きのうのつづき)
「中井広恵研究室」は、実戦解説に入っていた。題材は、少し前に指された女流名人位戦A級リーグ、対矢内理絵子女流四段戦である。やうたんのゴキゲン中飛車に、中井広恵女流六段が急戦で対抗していた。
一局の将棋を鑑賞するとき、解説なしで観るのと、解説あり、とくに自戦解説を聞きながら観るのとでは、大きな差がある。やはり当事者の解説があったほうが、対局当時の心理状態や枝葉末節の読みまで知ることができ、有意義である。本局の中井解説もその例にもれず、とても内容の濃い解説となった。
ところでその中井女流六段、黒系の服がオシャレである。10月はハロウィンのネイルアートを施していたが、いつも中井女流六段は、こんなに身だしなみにチカラを入れていただろうか。たぶん、私が気付いていなかっただけなのだろう。
解説が終わると、もう午後9時を過ぎていたが、20日(日)に行われた女流最強戦のウラ話が出たりした。あの将棋は渡辺弥生女流1級が「横歩取り△4五角」の趣向に出て、一時は必勝の態勢にまでなった。さすがの中井女流六段も負けを覚悟したらしい。しかしそこを逆転するあたりが、中井女流六段の貫禄なのだろう。
当日は将棋会館での対局だったが、中井女流六段いわく、「パソコンでの対局のときは、何かのときの用心のために、20秒あたりでクリックする」らしい。記録係の秒読みより、はるかに短い考慮時間になるわけで、女流最強戦は、ハタで思うより厳しい棋戦なのだった。
時刻は9時半近くになり、ここから遅い食事会である。近くの「笑笑(わらわら)」で。参加者は7人。
案内された場所は、畳席の隅。長方形のテーブルで、キチキチだった。
席の配置は、中井女流六段から時計回りに私、Fuj、W、Kaz、Is、ミスター中飛車の各氏。後に石橋幸緒女流四段が合流し、Is氏の右に座った。私は四角形の短い辺の、角のところに位置した。別に意識したわけではないが、中井女流六段とは、隣同士になる。この「意識しない」のがいいのであって、ヘンに意識すると、かえって席が離れてしまったりするのだ。
というわけで、今回は中井女流六段の左の顔を拝む形である。中井女流六段は、私の左にも右にも座ったことがあるが、個人的には、私の右手に座ってくれたほうが、私自身が落ち着くようである。以前、川口駅前の海鮮居酒屋で、4人掛けのテーブルに座ったとき、私が居飛車穴熊の席、中井女流六段がその右隣に座ったことがあったが、あれがベストだったと思う。うん、あれはいい席だった。
8人もいるから、豊富な話題が出る。 石橋女流四段のツイッターに、「先日の日本シリーズで、新聞の見出しに『逆王手』と書かれていたが、あれはおかしい」というフォロワーがあったらしい。
この「逆王手」は、新聞業界の悪しき慣習で、天下の読売新聞までが使っていた。かつて田邊チューコー氏も専門誌に書いていたが、王手はどちらか一方がするもの。3勝3敗ではどちらも「王手」がかかっているので、「逆王手」はあり得ない。
それはもっともなのだが、「逆王手」という響きが、切り返しの代名詞にも聞こえて、つい使いたくなるフレーズなのも確かだ。
「将棋倒し」は事故のイメージがあるけれども、「逆王手」は短期決戦の接戦を表わす。せっかくマスコミが将棋用語を使ってくれているのだから、将棋ファンはもう少し寛容になってもいいかな、と思う。
中井女流六段が、最近また私のブログを読んでくれているという。中井女流六段はかつて当ブログの愛読者で、LPSA金曜サロンに植山悦行七段が見えていたころは、
「大沢さん、また何かヘンなこと書きました? ウチのが文句言ってましたよ」
が挨拶代わりだった。
だが、当ブログの内容があまりにも変態的なので、中井女流六段もついていけず、当ブログから離れた。
ところが今回合宿があったため、中井女流六段がその内容を読むべく、久々に当ブログを覗いた、ということらしかった。一旦離れた読者が戻ってくれる、というのはありがたいことである。もう、中井女流六段を当ブログから離さない。
と思っている矢先、中井女流六段が不満を漏らす。
「でも大沢さん、ウソばっかり書くんだもん」
どこかで聞いたフレーズである。私がブログを始めたころ、藤田麻衣子さんに同じことを言われた気がする。
「合宿のクルマの中で、私がかけていた曲は、中森明菜じゃありませんよ。アイドルのヒット曲集です」
ああ、そうだったか。このブログは、ウソは書かないようにしているが、私の記憶はいつも曖昧で、細部で間違っていることがよくある。また、激しい脚色もあるので、読者はそのサジ加減を考慮しながら読んでくれるとありがたい(中井女流六段とのやりとりなどは、特にそうである)。
あっちこっちで話し声が飛び交う。そんな中、中井女流六段と私は、ふたりでひっそりと話す。
「中井先生、だから長崎に行きましょうよ」
私は中井女流六段を誘う。
「今年はひとりで行くんですか?」
と、中井女流六段が聞き返した。
(つづく)