先週金曜日のLPSA芝浦サロンは、石橋幸緒女流四段の担当だった。それに加えてきょうは、中井広恵女流六段の「中井広恵研究室」があった。
サロンの前まで来た時、帰宅途中の女性に「あー!」と声を掛けられた。藤森奈津子女流四段だった。永遠のアイドル・藤森女流四段にお目にかかるのは久しぶり。7月のマイナビ女子オープン・公開対局で目礼を交わして以来だ。「会話」となるともっと前で、ちょっと思い出せない。
そんな藤森女流四段、黄昏時だったせいか、妙に魅力的に見えた。藤森女流四段は、オフクロ的イメージがあるのだが、年齢的には私とさほど変わらない。ヒトは、他人に歳を重ねても、自分自身の年齢は止めたままだ。まことに自分勝手な生き物である。
きょうはすれ違っただけなので、哲也さんの四段昇段祝いを言いそびれた。もう、時期を逸したか。
いずれにしても、道を歩いていて女流棋士に挨拶されるのは、将棋ファン冥利に尽きる。また藤森女流四段に将棋を教えてもらえたらと思う。
午後5時に入室すると、先客の会員が10人はいた。盛況で何よりである。
受付にいた石橋女流四段に、お祝いを述べる。きょう11月25日は、石橋女流四段の誕生日なのだ。しかし石橋女流四段は、「私が勝手に選ぶ女流棋士ファンランキング」の圏外なので、プレゼントはない。
中井女流六段は指導対局を行っていた。中井女流六段は前日、女流名人位戦A級リーグの最終戦を清水市代女流六段と戦い、惜敗。順位の関係で、無念の降級となっていた。やはり元気がなく、顔色もよくなかったが、逆にゾクッとくる凄味があった。
と、かわいらしい女の子が入室し、中井女流六段の前にちょこん、と座った。LPSAでは土曜日に子供教室を開いているが、そこの生徒さんだという。
中井女流六段が十枚落とし、お嬢ちゃんに指導開始。△4二王に、お嬢ちゃんは▲4六歩。
「うん、ショウギは、まず大ゴマをはたらかせましょう。どの歩をうごかせば、角がとおくまでききますか? …そう、▲7六歩ね、セイカイ!」
中井女流六段は、優しく教える。あんなに柔和な顔の中井女流六段を見たのは初めてだ。女性はみんな女優だと、つくづく感じる。
と、そこにHi氏が乱入し、一緒に講義を始めた。コーチが2人いると、生徒が混乱する。それはHi氏も承知の上だろうが、口を出さずにはおれなかったようだ。
石橋ママがマドレーヌを配ってくれた。大庭美夏女流1級のお手製だそうで、甘さを抑えたスポンジが美味だった。
入室して30分が経った。指導対局は埋まっているし、とくに対局もつかないので、いったんサロンを出て、「小諸そば」に向かう。小諸そばに入るのも久しぶりで、よく考えたら、9月1日のLPSA木曜ワインサロン以来だった。あのときは絶望感と虚無感と自己嫌悪がないまぜになって、味もへったくれもなかったが、きょうはしっかりと味が分かり、蕎麦はコシがあって美味かった。
サロンに戻る。S夫(おっと)氏がいたので、対局をする。
「久しぶりですね」
と言われたが、返す言葉がない。いまは大野教室にシフトチェンジしているので、芝浦サロンには月に1回も行ければいいほうである。私はきょうも回数券は買わず、1回料金の3,500円を払っている。
S夫氏とは私の二枚落ちで、2局指した。S夫氏の棋力が着実に上がっているのが分かる。今度はS夫人とも指して、和解しなければならないな、と思う。しかしそれはいつになるのだろう。
中井女流六段は現在、Is氏と指導対局。お嬢ちゃんの指導は、Hi氏が行っていた。しかしHi氏、「角の頭は丸いから」とか「常に次の狙いを持って指すこと」とか、言ってることがイチイチ高度だ。どうも、Hi氏が指導者として適任とは思われない。
6時半になった。石橋女流四段の指導席は空いているのだが、Fuj氏が手空きなので、Fuj氏と指す。Fuj氏とはここのところ対局が多い。
私の先手で、▲7六歩△3四歩▲2六歩△4四歩▲4八銀△4二銀。
Fuj氏は最近、横歩取りの勉強中ということだったので、4手目は△8四歩を期待したが、△4四歩。横歩取りは先手番で指したいらしい。▲4八銀△4二銀となって、結局矢倉である。こうなるんだったら、▲4八銀で▲2五歩と決めちゃうのだった。
序盤で3筋の歩を切り、▲3六銀と立って指し易いと思ったのだが、Fuj氏も7筋の歩を切り、反撃する。△6二飛に▲6八飛。こちらもよく戦って十分の態勢だが、▲6四歩が緩着だった。当然△6四同角と取られ、これが存外厳しかった。▲1八飛は香を受けるだけの手だから指せず、泣きの涙で▲3七歩と受けたが、これも覇気のない一手だった。これでは3筋の歩交換がムダになる。こんな手を指すくらいなら、投了すべきである。
さらに局面が進んで、▲6五歩▲6八飛▲7七歩▲7八金▲8八玉▲9七歩・△6二飛△6四角・持駒銀歩2…の局面で、△8七歩が痛打だった。私は少考で▲同金と取ったが、以下△4二角▲7六歩△8六歩▲7七金△8二飛▲7九桂△8七銀▲同桂△同歩成▲同金△9五桂、まで私の投了となった。
最初の▲8七同金は粘りを欠いた。ここは苦しくとも▲7九玉と引くところで、△8八銀なら▲同金△同歩成▲同飛で、まだ戦える。本譜は△8六歩から△9五桂が厳しく、一遍に勝負がついてしまった。
これでFuj氏には、19日の大野教室に続いて、矢倉で連敗である。これは本当に矢倉の勉強をするべきなのか、それとも矢倉を避けるべきなのか…。
7時すぎ、ついに石橋女流四段との指導対局になった。石橋女流四段との指導対局も久しぶりで、7月29日に「芝浦まつり」のLPSAブースで教わって以来。芝浦サロンだと、4月15日以来となる。
早速将棋に入ったが、Fuj氏が12月のLPSAイベント2種の申し込みをする。きょうは手合い係が不在のようで、石橋女流四段が応対した。こんなに会員がいるのに、大庭女流1級はどこへ行ったのだろう。
さて、これで落ち着いて…と思うと、また石橋女流四段が席を外し、事務所へ向かった。
「中井広恵研究室」は、必至問題のミニ講座が始まっていた。指導対局と講座、両方教わりたいところだが、体はふたつない。
石橋女流四段が戻ってくる。一手指すと、また事務所へ向かう。それが数度繰り返される。お忙しいことである。戻ってくると、今度は中井講座のほうを注目していた。
対局が始まって30分が経った。しかし私の局面はまだ序盤である。「指導棋士がたびたび席を外す」。女流棋士スーパーサロンや大野教室では、考えられないことである。しかしこれが「石橋スタイル」なのだろう。ただちょっと、私の集中力が殺がれた。
石橋女流四段との指導対局が終わり、感想戦も短めに済ませて、私は中井女流六段の講座の席に向かった。
(つづく)
サロンの前まで来た時、帰宅途中の女性に「あー!」と声を掛けられた。藤森奈津子女流四段だった。永遠のアイドル・藤森女流四段にお目にかかるのは久しぶり。7月のマイナビ女子オープン・公開対局で目礼を交わして以来だ。「会話」となるともっと前で、ちょっと思い出せない。
そんな藤森女流四段、黄昏時だったせいか、妙に魅力的に見えた。藤森女流四段は、オフクロ的イメージがあるのだが、年齢的には私とさほど変わらない。ヒトは、他人に歳を重ねても、自分自身の年齢は止めたままだ。まことに自分勝手な生き物である。
きょうはすれ違っただけなので、哲也さんの四段昇段祝いを言いそびれた。もう、時期を逸したか。
いずれにしても、道を歩いていて女流棋士に挨拶されるのは、将棋ファン冥利に尽きる。また藤森女流四段に将棋を教えてもらえたらと思う。
午後5時に入室すると、先客の会員が10人はいた。盛況で何よりである。
受付にいた石橋女流四段に、お祝いを述べる。きょう11月25日は、石橋女流四段の誕生日なのだ。しかし石橋女流四段は、「私が勝手に選ぶ女流棋士ファンランキング」の圏外なので、プレゼントはない。
中井女流六段は指導対局を行っていた。中井女流六段は前日、女流名人位戦A級リーグの最終戦を清水市代女流六段と戦い、惜敗。順位の関係で、無念の降級となっていた。やはり元気がなく、顔色もよくなかったが、逆にゾクッとくる凄味があった。
と、かわいらしい女の子が入室し、中井女流六段の前にちょこん、と座った。LPSAでは土曜日に子供教室を開いているが、そこの生徒さんだという。
中井女流六段が十枚落とし、お嬢ちゃんに指導開始。△4二王に、お嬢ちゃんは▲4六歩。
「うん、ショウギは、まず大ゴマをはたらかせましょう。どの歩をうごかせば、角がとおくまでききますか? …そう、▲7六歩ね、セイカイ!」
中井女流六段は、優しく教える。あんなに柔和な顔の中井女流六段を見たのは初めてだ。女性はみんな女優だと、つくづく感じる。
と、そこにHi氏が乱入し、一緒に講義を始めた。コーチが2人いると、生徒が混乱する。それはHi氏も承知の上だろうが、口を出さずにはおれなかったようだ。
石橋ママがマドレーヌを配ってくれた。大庭美夏女流1級のお手製だそうで、甘さを抑えたスポンジが美味だった。
入室して30分が経った。指導対局は埋まっているし、とくに対局もつかないので、いったんサロンを出て、「小諸そば」に向かう。小諸そばに入るのも久しぶりで、よく考えたら、9月1日のLPSA木曜ワインサロン以来だった。あのときは絶望感と虚無感と自己嫌悪がないまぜになって、味もへったくれもなかったが、きょうはしっかりと味が分かり、蕎麦はコシがあって美味かった。
サロンに戻る。S夫(おっと)氏がいたので、対局をする。
「久しぶりですね」
と言われたが、返す言葉がない。いまは大野教室にシフトチェンジしているので、芝浦サロンには月に1回も行ければいいほうである。私はきょうも回数券は買わず、1回料金の3,500円を払っている。
S夫氏とは私の二枚落ちで、2局指した。S夫氏の棋力が着実に上がっているのが分かる。今度はS夫人とも指して、和解しなければならないな、と思う。しかしそれはいつになるのだろう。
中井女流六段は現在、Is氏と指導対局。お嬢ちゃんの指導は、Hi氏が行っていた。しかしHi氏、「角の頭は丸いから」とか「常に次の狙いを持って指すこと」とか、言ってることがイチイチ高度だ。どうも、Hi氏が指導者として適任とは思われない。
6時半になった。石橋女流四段の指導席は空いているのだが、Fuj氏が手空きなので、Fuj氏と指す。Fuj氏とはここのところ対局が多い。
私の先手で、▲7六歩△3四歩▲2六歩△4四歩▲4八銀△4二銀。
Fuj氏は最近、横歩取りの勉強中ということだったので、4手目は△8四歩を期待したが、△4四歩。横歩取りは先手番で指したいらしい。▲4八銀△4二銀となって、結局矢倉である。こうなるんだったら、▲4八銀で▲2五歩と決めちゃうのだった。
序盤で3筋の歩を切り、▲3六銀と立って指し易いと思ったのだが、Fuj氏も7筋の歩を切り、反撃する。△6二飛に▲6八飛。こちらもよく戦って十分の態勢だが、▲6四歩が緩着だった。当然△6四同角と取られ、これが存外厳しかった。▲1八飛は香を受けるだけの手だから指せず、泣きの涙で▲3七歩と受けたが、これも覇気のない一手だった。これでは3筋の歩交換がムダになる。こんな手を指すくらいなら、投了すべきである。
さらに局面が進んで、▲6五歩▲6八飛▲7七歩▲7八金▲8八玉▲9七歩・△6二飛△6四角・持駒銀歩2…の局面で、△8七歩が痛打だった。私は少考で▲同金と取ったが、以下△4二角▲7六歩△8六歩▲7七金△8二飛▲7九桂△8七銀▲同桂△同歩成▲同金△9五桂、まで私の投了となった。
最初の▲8七同金は粘りを欠いた。ここは苦しくとも▲7九玉と引くところで、△8八銀なら▲同金△同歩成▲同飛で、まだ戦える。本譜は△8六歩から△9五桂が厳しく、一遍に勝負がついてしまった。
これでFuj氏には、19日の大野教室に続いて、矢倉で連敗である。これは本当に矢倉の勉強をするべきなのか、それとも矢倉を避けるべきなのか…。
7時すぎ、ついに石橋女流四段との指導対局になった。石橋女流四段との指導対局も久しぶりで、7月29日に「芝浦まつり」のLPSAブースで教わって以来。芝浦サロンだと、4月15日以来となる。
早速将棋に入ったが、Fuj氏が12月のLPSAイベント2種の申し込みをする。きょうは手合い係が不在のようで、石橋女流四段が応対した。こんなに会員がいるのに、大庭女流1級はどこへ行ったのだろう。
さて、これで落ち着いて…と思うと、また石橋女流四段が席を外し、事務所へ向かった。
「中井広恵研究室」は、必至問題のミニ講座が始まっていた。指導対局と講座、両方教わりたいところだが、体はふたつない。
石橋女流四段が戻ってくる。一手指すと、また事務所へ向かう。それが数度繰り返される。お忙しいことである。戻ってくると、今度は中井講座のほうを注目していた。
対局が始まって30分が経った。しかし私の局面はまだ序盤である。「指導棋士がたびたび席を外す」。女流棋士スーパーサロンや大野教室では、考えられないことである。しかしこれが「石橋スタイル」なのだろう。ただちょっと、私の集中力が殺がれた。
石橋女流四段との指導対局が終わり、感想戦も短めに済ませて、私は中井女流六段の講座の席に向かった。
(つづく)