一公の将棋雑記

将棋に関する雑記です。

加藤圭女流1級、女流名人戦リーグ入り

2020-03-21 00:29:00 | 女流棋士
第47期女流名人戦予選は順調に消化し、加藤桃子女流三段、千葉涼子女流四段、山根ことみ女流二段のリーグ入りが決まった。
加藤女流三段のリーグ入りは当然。千葉女流四段の7期ぶりの復帰や、山根女流二段の帰り咲きも見事である.。
しかし特筆すべきは最後のひとりで、なんと加藤圭女流1級が水町みゆ女流1級に勝ち、リーグ入りと、女流初段昇段を決めた。いやまったくのダークホースで、意外に思った将棋ファンも多いはずだ。
実は、圭女流初段は研修会時代の2017年ごろから大野教室に通っており、私も何局か指したことがある。そのすべてを当ブログに記しているが、まあ面倒くせぇので調べないが、私の2勝2敗か3敗だったと思う。ただ初戦は、私が負けた。
対局前、圭さんは中飛車党ということは聞いていた。女性相手の場合、私は相手の得意は外さないが、何局目だったか、圭さんの▲5六歩に△5四歩とやったら、苦笑いされたことがある。中飛車封じと取られたのだ。そのくらい圭女流初段は、中飛車オンリーだった。
話を初戦に戻すが、圭さんの中飛車に私は力戦風の囲いで対抗した。しかし圭さんはじりじりとリードを拡げ、最後は私が明確に負けた。
感想戦で、中盤から終盤の入口にかかったころ、「ここではもう私がいいと思いました」と圭さんが言った。
その局面は確かに私の模様が悪かったが、まだ「断定」されるほどではない。ましてやその将棋は私が負けたわけで、例えば男同士だったら「まだ難しいと思いました」と、心にもないことを言うだろう。私は彼女のことを「自分の形勢判断に自信を持つ人なんだな」と思った。
実際彼女の将棋は、強いと思った。指し手はふわっとしているが、中に鋼鉄をしのばせているような強靭さがある。上田初美女流四段が女流初段時代に、スーパーサロンで何局か教わったが、その時感じた強さに似ていた。よって圭さんも、上田女流四段並みに強くなると思った。
圭さんとはその後も何局か指し、私が2勝(は、している)したのだが、その2局とも、投了局面から圭さんに粘る手があった。つまり私に快勝の将棋はないのだった。この事実は結構キツかった。
あとは圭さんが、ヘンに諦めのいいところを改めれば、さらに勝率は上がると思った。
その後圭さんは研修会で規定の成績を挙げC1に昇級、女流3級(現在は廃止)の資格を得た。だが圭さんは、なかなかプロ申請しない。圭さんに年齢制限が迫っていたのに、である。
だが圭さんは、すぐにプロデビューして痛い目に遭うより、研修会でもう少し力をつけたい、の思いがあったようだ。その用心深さに、私は唸った。
圭さんは2018年2月、女流棋士3級となる。そして6月に規定の成績を取り、女流2級に昇進した。正式な女流棋士となり、これで憂いはなくなった。
しかしその後は勝ったり負けたりだった。前述したように、圭女流2級の戦法は中飛車のみ。まあ蛸島彰子女流六段の例もあるから中飛車一本も悪くはないが、事前に戦法がバレていては都合が悪く、対戦相手に対策を練られたのだ。私は、圭女流2級がもう一皮むけるには、新たな戦法を指さなければダメだと思った。
そんな中、圭女流2級が女流王位戦で上田女流四段に勝ち、女流1級に昇級した。元女王の上田女流四段に勝つとは大したものだが、しかも居飛車で勝利したというので、驚いた。圭女流1級は、居飛車も勉強していたのだ。上田女流四段に勝つくらいなら、もう誰に勝っても不思議でない。
そして今回のリーグ入りである。実力はごく一部の関係者が認めてはいたが、やはり快挙である。おめでとうございます。
最後に確認しておくが、圭女流初段は加瀬純一七段門下である。プロ入り後は加瀬七段のもと、よほど研鑽を積んだに違いない。
女流名人戦リーグは、9局も指せるのがとてつもなく大きい。リーグでの戦いが楽しみである。
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22日は「テセウスの船」最終回!!

2020-03-20 00:13:08 | プライベート
TBS系・日曜劇場「テセウスの船」が22日に最終回を迎える。
平成元年、ある田舎町で「小学生21人毒殺事件」が起きる。その容疑者として、警察官の佐野文吾(鈴木亮平)が逮捕される。家族は悲惨な状況に置かれるが、令和2年、息子の田村心(竹内涼真)は、ふとしたことから31年前の事件現場にタイムスリップしてしまう。
父親は本当に事件を起こしたのか⁉ 心は事件を未然に防ぐべく行動する。
いわゆるタイムスリップもので、これはアニメ「ドラえもん」でもお馴染みである。
「テセウスの船」では、心の行動で過去が変わり、現在の状況も変わってしまう。ドラえもんでは、過去の世界を変えることは御法度だが、テセウスではそれをやってしまった。
心は途中で一度現在に戻ってくるのだが、現在の状況が変わり、タイムスリップ前には亡くなっていた妻(上野樹里)が、雑誌記者として生きていた。また、母親(榮倉奈々)と息子(番家天嵩)は自殺していた。
同じ日曜劇場では、2015年1月~3月に放送された「流星ワゴン」も、広義のタイムスリップものだ。
主人公の永田一雄(西島秀俊)は人生をはかなみ、駅前のロータリーで自殺を考える。そこに、ワゴン車に乗った橋本父子(吉岡秀隆・高木星来)が通りかかり、一雄を過去の世界に連れ戻す。そこには、父親・忠雄(香川照之)の38歳の姿があった。
一雄は過去を変えようと奮闘するが、目が覚めても現在の世界は変わっていない。そこで主人公は絶望する。ただこれを繰り返すうち、一雄は生きる希望を見出す。
また、2018年4月~6月に放送されたフジテレビ系・「シグナル 長期未解決事件捜査班」は、三枝健人警部補(坂口健太郎)が、無線機を使って過去の先輩刑事・大山剛志巡査部長(北村一輝)とやりとりする、という設定だった。
しかも、三枝のアドバイスで行動した大山により過去が変わり、こちらも現在の状況が変わってしまう。この原作は韓国だが、韓国にも鬼才がいた。
大山は、過去の世界では行方不明で死んでいたが、生存した人生に変わる。
さて、「テセウスの船」である。22日の放送ではもちろん、すべての謎が解明されるが、どういう収束になるのだろう。まったく先が読めず、とても楽しみである。
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川上七段の順位戦復帰の目を考える・緊急特別版「怒濤の王手」

2020-03-19 00:17:03 | 目を考える
18日の当ブログに読者からコメントがあり、読むと、川上猛七段が来期のNHK杯予選で3連勝した、とのことだった。
これは予想外の快挙である(失礼)。そこで、「川上七段の…」シリーズの緊急特別版を記す。
分かりやすくするため、2019年度の成績のみを掲げよう。

4月2日 第45棋王戦予選2回戦 ●青嶋未来五段
4月10日 第32期竜王戦ランキング戦5組昇級者決定戦1回戦 ○瀬川晶司六段
5月27日 第91期棋聖戦一次予選1回戦 ●日浦市郎八段
5月31日 第69期王将戦一次予選決勝 ●近藤誠也六段
6月3日 第32期竜王戦ランキング戦5組昇級者決定戦2回戦 ○窪田義行七段
6月27日 第5期叡王戦七段戦予選1回戦 ○大石直嗣七段
6月27日 第5期叡王戦七段戦予選2回戦 ●有森浩三七段
7月1日 第32期竜王戦ランキング戦5組昇級者決定戦3回戦 ○竹内雄悟五段
7月か8月 第28期銀河戦予選 ○室岡克彦七段
7月か8月 第28期銀河戦予選 ●野月浩貴八段
8月8日 第32期竜王戦ランキング戦5組昇級者決定戦4回戦 ●田村康介七段
8月29日 第13回朝日杯将棋オープン戦一次予選1回戦 ○勝又清和六段
8月29日 第13回朝日杯将棋オープン戦一次予選2回戦 ○横山泰明七段
9月26日 第13回朝日杯将棋オープン戦一次予選3回戦 ○伊藤真吾五段
10月4日 第68期王座戦一次予選1回戦 ○室岡克彦七段
10月8日 第61期王位戦予選1回戦 ○山本博志四段
10月24日 第68期王座戦一次予選2回戦 ●遠山雄亮六段
10月28日 第61期王位戦予選2回戦 ○田村康介七段
10月31日 第13回朝日杯将棋オープン戦一次予選決勝 ●佐々木大地五段
11月25日 第61期王位戦予選3回戦 ○及川拓馬六段
12月25日 第61期王位戦予選4回戦 ●丸山忠久九段
1月7日 第33期竜王戦ランキング戦5組1回戦 ●金井恒太六段
1月17日 第46期棋王戦予選1回戦 ●室岡克彦七段
1月31日 第70期王将戦一次予選1回戦 ○及川拓馬六段
2月17日 第70回NHK杯トーナメント戦予選1回戦 ○中田宏樹八段
2月17日 第70回NHK杯トーナメント戦予選2回戦 ○井出隼平四段
2月17日 第70回NHK杯トーナメント戦予選決勝 ○杉本和陽四段
3月10日 第33期竜王戦ランキング戦5組昇級者決定戦1回戦 ○瀬川晶司六段

以上、驚異の17勝11敗となった。一時は12勝11敗となり、順位戦復帰の目はほぼ絶望となったが、そこから怒濤の5連勝は見事である。
NHK杯予選は、中堅の実力者と、若手四段2名をほふった。ことに杉本四段には昨年の同棋戦で敗れているので、雪辱を果たした格好だ。
改めて、順位戦復帰のおもな条件は、

①年度18勝12敗
②いい所取り30局以上で勝率.650以上

である。つまり今月中に2局指せれば、1勝1敗でよい。
そして残る対局は

第70期王将戦一次予選2回戦 中座真七段
第33期竜王戦ランキング戦5組昇級者決定戦2回戦 窪田義行七段

である。順番は王将戦が先になる。竜王戦は微妙なところだが、連盟だって鬼じゃないので、王将戦で負けたら、竜王戦も組んでくれるだろう。
それが無理なら、NHK杯本戦を今月中に組んでくれてもよい。順位戦復帰なるか、という対局を全国放送で観るのもオツなものである。
それで仮に連敗したとしても、川上七段にはまだ希望がある。6月以降に限れば、2敗を足しても「16勝10敗」。今度は②の条件が適用され、あと4連勝で順位戦復帰が叶うのだ。
いずれにしても、王将戦で勝ってしまうのが簡明だ。中座七段戦は連盟の携帯中継が付くだろうが、私は契約していないので関係ない。AbemaTVで中継してほしいところである。
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「将棋ペン倶楽部」2020年春・会報73号

2020-03-18 00:13:08 | 将棋ペンクラブ
「将棋ペン倶楽部」2020年春号(会報73号)が送られてきた。今号は私の原稿が載っているので、より楽しみにしていた。早速読んでみる。
恒例の「新春対談」のゲストは、杉本昌隆八段。聞き手はもちろん、木村晋介・将棋ペンクラブ会長である。杉本八段が、自身の振り飛車、著作、藤井聡太七段のことなど、大いに語っている。木村会長の聞き手もよい。
ほかは、美馬和夫氏ら11名による寄稿である。湯川博士氏の随筆もあり、タイの将棋で、銀の動きをする駒について考察している。
美馬氏のそれは、「柏研究会」。石田和雄九段門下の棋士・奨励会員、アマ強豪らで行っていた研究会の模様を記している。
今回美馬氏は、親しくしている奨励会員から退会の連絡を受け、そのショックで話を差し替えたという。だがこれが抜群に面白かった。私もブログで覚えがあるが、何日も構想を立てて書いた文章より、当日にサッと書いた文章のほうが面白いケースがある。今号は美馬氏の文章が一押しである。
ほかは、F氏の提言もよかった。私は「その通り!」とヒザを打った。
拙稿は以前記した通り、1月下旬に和光市で行われた「新春CI寄席」である。博士氏からの電話では、多少手直しをしたとのことだったが、一読した限り、その跡は分からなかった。
実は読む前まで、多少の危惧があった。私はあくまでも「落語が少し好きな将棋ファン」で、落語の世界には不案内である。そこに、落語に長けた博士氏が手直しをしたら、私の身の丈を越えた文章になってしまうのでは、と思ったのだ。
だが幸い?それはなく、安堵した。
ただ今回、記述に迷ったところがあった。石畑梅々の講談「男の花道」だが、出だしを改めて記すと――徳川十一代将軍家斉の時代、東海道の宿場町・金谷宿に、歌舞伎役者の三世・中村歌右衛門が投宿していた。歌右衛門は目を病んでいたが、同じ宿に、眼科医・半井源太郎が投宿していることを知る……。
となって話は進んでいくのだが、いろいろ資料を見ると、まず半井が登場し、そこに目を病んでいる歌右衛門が出てくるのだ。つまり、視点が逆なのである。
だが梅々の講談は、歌右衛門→半井の順番で登場した記憶があった。話の正解は逆なのだろうが、私はおのが記憶を信じ、あくまでも梅々の話を是として、書き進めた。
また、梅々の締めの言葉がいまひとつ思い出せず、ここもうろ覚えのセリフを書いた。こうして活字になって、もう訂正はできない。ここが印刷物の怖いところである。
本文は合計70ページで、まずまずの量。ただ、後半の随筆陣のレイアウトがややきつめだったので、もう少し余裕を持たせる手はあったかもしれない。雑誌は4ページの倍数が理想だが、今号はあと2ページの余りがあったからだ。ただまあ、余白がないほうが、締まりは出る。

冒頭に、交流会のお知らせも載っていた。
まず4月19日(日)は浜松積志協働センターで、浜松交流会。将棋大会も兼ねているようだ。指導対局は神谷広志八段である。
5月3日(日)は大阪市福島区民センターで、関西交流会。森信雄七段が参加予定だ。
5月24日(日)は、御徒町将棋センターにて関東交流会。指導棋士は佐藤紳哉七段、宮宗紫野女流二段、堀彩乃女流1級である。
今年は新型コロナウィルスの影響で各種イベントが中止になっているが、さすがに4月中旬になれば大丈夫だろう。
逆にいえば、そのころになっても、まだ政府が活動の自粛を求めているようなら、世界はもう終わりである。私はとっくに終わっているが。
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前竜王の降級

2020-03-17 00:48:22 | 男性棋戦
11日に行われた第33期竜王戦ランキング戦1組出場者決定戦・5位決定戦1回戦で、広瀬章人八段は阿部健治郎七段に負け、2組降級が決まった。
広瀬八段は前期の七番勝負敗者、いわゆる「前竜王」である。しかし竜王戦に本戦シードはないので、一律ランキング戦からの参加になる。そして竜王戦は第19期から1組の降級者が3名から4名に増えたため、2連敗で即降級となったわけだ。
ちなみに順位戦A級は竜王戦1組に相当するが、「前名人」が即降級した例はない。それだけ竜王戦のシステムが厳しいといえる。
では、「前竜王」が即2組に降級した例を記そう。

第4期 羽生善治棋王 ●脇謙二七段→●南芳一王将→●加藤一二三九段(残留決定戦)
第27期 渡辺明二冠 ●屋敷伸之九段→●藤井猛九段
第28期 森内俊之九段 ●佐藤天彦七段→●藤井猛九段
第33期 広瀬章人八段 ●佐藤天彦九段→●阿部健治郎七段

以上4例。
第4期は、羽生棋王が3連敗し2組に降級。前竜王でも降級してしまう、これが竜王戦のシステムなのかと、みなが改めて驚愕したのであった。
第10期は、羽生五冠(前竜王)が●村山聖八段→●米長邦雄九段(出場者決定戦)となったが、残留決定戦で伊藤果七段、中村修八段に勝ち、辛くも残留を決めた(第18期までは、2連敗者4名でミニトーナメントを行い、勝ち抜いた1名が残留するというものだった)。
なお伊藤七段(現八段)は、順位戦は最高位でC級1組だったが、竜王戦は第1期の4組からコツコツ昇級を重ね、第8期に1組に昇級した。翌第9期は、米長邦雄九段に勝つ活躍を見せた。
第27期は、竜王9連覇の渡辺二冠が連敗で、即降級してしまった。
藤井九段との5位決定戦は千日手になり、指し直し局は藤井九段の先手中飛車で相穴熊となった。中盤、藤井九段のと金攻めが冴え、藤井九段優勢。その終盤戦を見てみよう。

第1図から、▲7三歩△8三飛▲5五歩△4五金▲5三と△7三飛▲4二と△同銀▲5二と△3三銀右▲5四歩△5一歩▲4一と△5二歩▲5三歩成△同歩▲4三歩(投了図)まで、藤井九段の勝ち。
終盤は歩(と)の符号だけでイビアナに勝ってしまった、珍しい例である。

「前竜王」は第33期までのべ16名に上るから、2割5分の確率で落ちたことになる。かように1組は恐ろしいクラスだが、竜王戦はどのクラスからでも挑戦できる。広瀬八段の巻き返しを祈る。
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