一公の将棋雑記

将棋に関する雑記です。

女流初段が女流五冠に勝つ

2023-08-11 23:50:58 | 将棋雑記
きのう行われた第50期女流名人戦リーグで、内山あや女流初段が里見香奈女流五冠を破ったのにはびっくりした。相撲では平幕が横綱に勝つことを金星というが、本局は女流初段が女流五冠に勝ったのだから、金星の上を行く大金星である。
そういえば、昨年も里見女流五冠は、脇田菜々子女流初段に負けていなかったか?
そこで、里見女流五冠が女流初段以下に負けた例を調べてみた。2010年度からである。

2015-08-31 第5期女流王座戦本戦 里見女流二冠VS伊藤沙恵女流初段
2021-01-08 第14期マイナビ女子オープン本戦 里見女流四冠VS塚田恵梨花女流初段
2022-08-23 第16期マイナビ女子オープン本戦 里見女流五冠VS脇田菜々子女流初段
2023-08-10 第50期女流名人戦リーグ 里見女流五冠VS内山あや女流初段

以上の4例。
伊藤女流初段戦は、意表の相居飛車。激しい攻め合いを伊藤女流初段が制したわけだが、相居飛車にした時点で、里見女流二冠の力が減殺されたのではなかろうか。
塚田女流初段戦は、里見女流四冠の向かい飛車。塚田女流初段が穴熊に囲い、元気よく攻めて、攻め切った。これは塚田女流初段会心の一局だった。
脇田女流初段戦は、里見女流五冠の向かい飛車。脇田女流初段が急戦からうまく指し、歩頭の銀の鬼手で、快勝した。
内山女流初段戦は、ネット中継されなかったので、いまのところ、内容は分からない。
女流初段でも女流五冠に勝つことがある。これだから将棋は面白い。
ちなみに西山朋佳女流三冠は、2011年7月16日に第5期マイナビ女子オープン予選1回戦で山口恵梨子女流初段に、2014年8月9日にマイナビ女子オープン予選決勝で、和田あき女流3級に負けている。
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810

2023-08-10 21:06:10 | 将棋雑記
大野八一雄七段は、その名前からきょう8月10日生まれと思われそうだが?、実際の誕生日は3月7日である。ただ、「810」は本人も愛着があるようで、メールアドレスの一部にも使用している。
大野七段は五段時代の第21期新人王戦(しんぶん赤旗、日本将棋連盟主催)で決勝に進出し、気鋭の森下卓六段(現九段)と優勝を争った。森下六段は当時勝ちまくっており、将来のタイトル保持者と目されていた。
第1局は1990年10月9日に行われた。将棋は森下六段の先手で、森下六段は当然矢倉。大野五段は矢倉中飛車を匂わせたが、右玉に落ち着いた。受けの棋風の大野七段らしい。
将棋は森下六段の攻め、大野五段の受けという展開になったが、森下六段の攻めが手厚い。大野五段も必死に受けるが、反撃含みでないため、森下六段がじわじわと優位を拡大していった。

以下、133手まで森下六段が勝った。
第2局は16日後の10月25日に行われた。先後変わって、相掛かり。森下六段が中盤に馬を作り、△3四馬と引き揚げた。5六には先手の飛車がいるのだが、馬の価値が高く、とても交換する気になれない。
大野七段は7筋に飛車を転回し、▲8六歩とこじ開ける。およそ大野五段らしくない指し方で、内心腐っているのが分かる。
森下六段、飛車取りに金を打つ。ここで大野五段が投了した。言っちゃあ悪いが、私でもここで投げる。もうバカバカしくて指してられない、というところ。

かくして大野五段の檜舞台は幕となった。そして大野七段の番勝負登場も、これが最後となった。
いっぽうの森下六段はこの後、名人戦をはじめ6つのタイトル戦に登場したが、ついにタイトルを獲得することはなかった。強豪森下九段にして、ノンタイトル。将棋の世界は厳しい。

最近は大野教室にとんとご無沙汰していて、しかもその間、私の頭はだいぶ禿げあがってしまった。いまとなっては会わせる頭がなく、よけいそれが足を遠のかせる。
いまの状況を整理して、ちょっと心に余裕ができたら、またお邪魔したいと思っている。
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タイトル戦の駒柱

2023-08-09 23:23:40 | 将棋雑記
第5期清麗戦第3局がきのう行われた。対局者は里見香奈清麗と西山朋佳女流三冠。
ともにきものでの対局で、きもの姿なら西山女流三冠の右に出る者はいないと思っていたが、里見清麗もなかなか似合う。実力、きもの姿とも互角。勝負の帰趨はまったく分からない。
そんな第3局は里見清麗の中飛車に、西山女流三冠の四間飛車。その後里見清麗が居飛車に戻し、対抗形のようになった。
この投了1手前、珍しく駒柱ができた。当ブログでは昨年の9月26日に、31手目にできた駒柱を紹介したが、今回の「駒柱の1手後に終了」というのも珍しい。だから駒柱もしっかり残っていた。

タイトル戦の駒柱も珍しいし、5筋に出現したのも珍しい。駒がぶつかっているのが1ヶ所しかないのも珍しいと思う。
「柱」には大黒柱、心柱など、どっしりした熟語はあるが、人柱という熟語もある。将棋界でいうと駒柱はあまり縁起がよくないらしい。むかし、駒柱ができた途端に投了し、駒柱を崩した棋士がいたという(河口俊彦八段「対局日誌」より)。
しかし個人的には、珍しさという意味で、縁起がいいのではないかと思っている。
本局の駒柱完成までの流れをザっと見ていくと、65手目、里見清麗が▲5九金寄として、5枚目が埋まる。
74手目、△5六歩の叩きに▲同馬と取って6枚目。
77手目、味よく▲5五銀と上がって7枚目。
82手目、△5三歩と合わせたところで8枚目。
そして88手目、飛車道を遮断すべく香を打って、駒柱が完成した。

念のため、5筋の駒数の推移を初手から記しておこう。

4455555556
6665556666
5666665555
5565555555
5555555666
6666666654
444455555
5556777
88888

こうした表示をしたのは、将棋界史上初だと思う。
清麗戦は、第4局以降も熱局を期待したい。
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夢はつづく

2023-08-08 22:53:57 | 女流棋戦
きょう8日は、第13期女流王座戦本戦2回戦、渡部愛女流三段VS野原未蘭女流初段戦が行われた。
渡部女流三段はLPSAのエースを長いこと張っており、いまもその地位はまったく揺らいでいない。第29期女流王位戦では里見香奈女流王位からタイトルを奪取。しかしその後は戴冠はなく、本人はもちろん、周りも消化不良となっている。渡部女流三段は上位にも勝つがアマにも負けることがあり、その不安定の克服がカギだ。
野原女流初段は2020年9月1日のデビューだから約3年になるが、毎年よく勝っている印象がある。女流二段には勝ち星昇段でなく、タイトル挑戦などの特例で昇段しそうな雰囲気はあるのだが、現実は里見女流五冠や西山朋佳女流三冠がいるので難しい。しかしとにかく、勝ち進んでいくしかない。
将棋は野原女流初段の先手で、力戦相居飛車となった。前日の加藤桃子女流四段VS堀彩乃女流1級戦も相居飛車だったが、女流棋士は対抗形というイメージがあるので、いまのところはまだ、相居飛車も新鮮である。
ちなみにきょうは第5期清麗戦第3局・里見清麗VS西山女流三冠戦が行われているが、こちらは期待通り?対抗形だった。
渡部女流三段、△9四銀と異筋に出る。ここは△9五銀を防いで▲9六歩としたいが、それは△8六歩▲同歩△同飛がある、とサイトの解説である。
しかしそのとき▲9五歩として、△8三銀なら▲8二歩があると思うのだが、どうか。先手が桂得にはなるが8筋がガラ空きなので、危険なのかもしれない。
本譜は華麗な攻め合いになったが、第一弾で△8八歩と打ち捨てたのが手筋。当ブログで何度も書いているが、渡部女流三段は歩の使い方がうまい。女流版「小太刀の名手」というところだ。
さらに進んで、△3七歩成▲同金と金を上擦らせたあと、△6六歩と合わせたのがまた好手。これは野原女流初段がくたびれる展開だろうなと思った。
だが数手後の▲6七歩に、△同銀成と切り込んだのが、上手の手から水が漏れた。
ここは△8八角成とこちらを先にすれば、変化の余地なく後手が勝っていた。本譜は粘りの順が生じ、私が渡部女流三段側を持っていたらここで正着に気づき、以下の指し手が乱れるところ。
しかし渡部女流三段は踏ん張った。野原玉に1七まで逃げこされたものの、的確に追い詰め、制勝した。
消費時間は、野原女流初段が2時間34分、渡部女流三段が3時間全部だった。このくらい考えれば、どちらも悔いはないのではなかろうか。
渡部女流三段は女流王座戦初のベスト4進出。次局は加藤女流四段と当たり、堀女流1級の敵を討つ。その先には西山女流三冠もいるからまだ道は険しいが、ぜひ挑戦権を勝ち取ってもらいたい。
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夢の終わり

2023-08-07 23:41:54 | 女流棋戦
7日、第13期女流王座戦本戦2回戦、加藤桃子女流四段VS堀彩乃女流1級戦が行われた。
堀女流1級は今年度11勝2敗と抜群の成績で、女流王座戦では前局、大豪中井広恵女流六段に競り勝った。本局で勝てば堂々のベスト4となり、女流初段に昇段する。たぶん、堀女流1級が初めて経験する大勝負であろう。
しかし本局、相手が悪い。加藤女流四段はタイトル9期の強豪で、女流王座は4期。あと1期でクイーン女流王座となる。しかも前期の五番勝負にも登場し、里見香奈女流王座と文字通りのシーソーゲームを演じた。今期はリベンジの焔を燃やしているのは想像に難くなく、堀女流1級は相当な苦戦が予想された。
将棋は加藤女流四段の先手。ここは堀女流1級が先手を取りたかったが、しょうがない。相掛かりとなった。
中盤、加藤女流四段が▲5五銀と立った手が名手。堀女流1級は△5四歩と突いたが、加藤女流四段は手順に▲6四銀と進出して好調だ。
堀女流1級はそこで△9四歩と突いたが、どの変化にも▲9五角の飛車取りがついて回るので、仕方なかった。ただ、ただでさえ模様が悪いのに、ここで1回休みをするようではもういけない。本局、形勢バーはむろん付かなかったが、この時点で「加藤75:25堀」くらいではなかったか。
以下は加藤女流四段の攻めが綺麗につながり、完勝となった。
堀女流1級は無念の敗戦。残念に思うのは、持ち時間を1時間以上も残したことだ。加藤女流四段も1時間9分しか使わなかったが、それは局面が分かりやすくなったから。
堀女流1級も▲5五銀を見て、39分+昼食休憩を合わせ△5四歩と突いたが、ここではもう悪かったようだ。とするなら、その前の局面でとことん考えてもらいたかった。
藤井聡太竜王・名人をはじめとして、男性棋士は序中盤でとことん考えて終盤1分将棋になるが、なるほど本局の展開を見るに、終盤まで時間を残しても、序中盤で将棋が終わってしまったら元も子もないのだ。
まあよい、今年度11勝の「貯金」はまだ残っている。第17期マイナビ女子オープンも本戦入りを決めた。
マイナビ女子オープンでは今回の反省を踏まえ、持ち時間を全部使って、勝ってもらいたい。
コメント (2)
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