一公の将棋雑記

将棋に関する雑記です。

第64期王位戦第4局「名角」

2023-08-18 00:50:08 | 男性棋戦
第64期王位戦第4局が、15日・16日に行われた。ここまで藤井聡太王位の3勝。佐々木大地七段は文字通り後がないが、ここから4連勝をしようと思うと気が遠くなる。1局でも多く対局数を増やし、主催者への面目を保つつもりで頑張れば、道はわずかに開ける。
第4局は佐々木七段の先手で、相掛かりになった。今年度藤井王位は17勝3敗と「平常運転」だが、この3敗は後手番でのもの。よって本局、いつもよりは佐々木七段への勝利期待値は上がっている。
初日は藤井王位が動き、最終手は佐々木七段が飛車取りに金を上がった。これに藤井王位が時間を掛け、封じる。飛車を切れば大決戦。横に逃げればじっくりした展開、というところ。藤井王位には飛車切りや、飛車のタダ捨てのイメージがあるが、それはハッキリ勝利を確信したときに限られる。今回は飛車を切ったとしても後手に明快な勝ちはないし、そこまで精査するには時間がなさすぎる。それなのに封じたということは、飛車を横に逃げたのではないか?
果たして藤井王位の封じ手は、飛車を横に逃げる手だった。そこから何手か進み、藤井王位は飛車をさらに横に動かした。
これに対しては、飛車の横に角を打つのがABEMA AIの推奨手となった。その心は、飛車の動きを遮断したあと、銀を上げて飛車を取りに行くのだ。
それはそうなのだが、飛車の横に角を据える手に違和感がありすぎて、佐々木七段は指さないと思った。
ところが、佐々木七段はタイム5分で角を打った。これには本当に驚いた。このとき、ひょっとしたら佐々木七段が勝つのではと思った。
藤井王位は47分の熟考で角を合わせる。その2手前の消費時間が2分だったから、藤井王位が意表を衝かれたのは明らかだ。
だが不思議なのは、佐々木七段がこの角を取るのに47分考えたことだ。私なぞは、すぐに角交換し、再度角を打てばいいのではと思うが、そう簡単な話でもないのだろう。
だが実戦はやっぱり佐々木七段が角を打ち直し、有利になった。……というのは、私が形勢バーを見ていたからで、それがなければどっちがいいかまったく分からない。
事実、その後は藤井王位に形勢の針が触れたこともあったのだ。だが、AI推奨の異筋の桂を藤井王位が逃し、はっきりと佐々木七段が優勢になった。
この後は佐々木七段が徐々に差を拡げ、最後は好点に角を打って、藤井王位、がっくりとこうべを垂れて投了。勝ち将棋鬼のごとしで、中盤、飛車の横利きに打った角が、最後は詰みの重要なピースとなった。
佐々木七段は、待望のシリーズ初勝利。同じ負けるにしても、0勝4敗と1勝4敗はえらい違いだ。ストレート負けは誰でもできるが、藤井王位から勝ちをもぎとるのは、同じプロでもなかなかできないことだからだ。
第5局は22日・23日。藤井王位の絶対的優勢に変わりはないが、次も落とすようだと、第6局は三度後手番になり、あれあれ?ということになる。これだから番勝負は恐ろしい。
コメント (3)
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