CLASS3103 三十三組

しがない個人ホームページ管理人の日記です。

【読書】桃源郷――中国の楽園思想

2014-01-16 20:51:27 | 読書感想文とか読み物レビウー
桃源郷――中国の楽園思想  著:川合 康三

珍しくまじめな本を読みました
思想書の類や、エッセーとは異なり、
古文から、中国における楽園というものは
どう描かれていたか、どういう情景であるかを
調査し、つまびらかにした本であります
なんというか、このオリエンタルな感じは、
郷愁と呼んでいいのか、
なじむかのように、理解できて驚いたのであります

主に引用されるのは詩や句といったものなので、
情景たおやかなといっていいのか、
のほほんとした内容が多くとてもわかりやすい
多分、読み下しが丁寧だから一層そう感じたと思いますが、
高校生くらいで四苦八苦した漢文のそれこれとは
まるで違う面白さを感じることができました

古くは三国志の頃から引き合いにだされ、
まさか、曹否とか、曹植とかの詩歌が出てきて
そこには、テンプレートとしての楽園のようなものが描かれるが、
実際のところは、そういう思想はもたず
現実的に、そんな幻想郷は存在しないといった感じで
あれこれと語られていたことなんかも書かれ
なかなか面白かったのであります

中国で古代から夢見られたそれは、
現実での出世競争というか、闘争にも近いそれこれに
嫌気が差して隠居するといったことから、
逃避先のような夢として、そこに、
決して現実にはないような美しいというか
正しいと思われるそれこれが詰め込まれている
そんなことが説明されて
描かれている世界観は、なんというか、
今現在、私が読んでいてもいいなと思うような
平穏で、安穏とした世界であるというのが
なんとも、たまらないと思ったのであります

そんなわけで、すごくまじめな本なのにも関わらず、
笑うとか、興味深いとかとはまったく別の感情をもって
面白いと思わされた、不思議な本でありました
こういう世界を夢みつつ、
それがかなわないのを知っているというのが
なんというか、哀しいことであります

知人にこの話しをしたところ
共産主義的な世界観だといわれて
なにか、いろいろなことが腑に落ちたように想いまして
楽しい本読みができました