CLASS3103 三十三組

しがない個人ホームページ管理人の日記です。

【読書】劉邦

2015-11-09 20:45:35 | 読書感想文とか読み物レビウー
劉邦  作:宮城谷 昌光

先週末に3冊一気読みしてしまった
いわずと知れた、漢の高祖劉邦を描いた小説であります
しかも、安心と信頼の宮城谷版ということで
いやおうなく期待して読んだのでありました
やっぱり面白かった

よく思い返してみると、
項羽と劉邦の話については、
断片的にしか知らないといっていいのか、
物語としては、赤龍王、しかもファミコンのそれしか
知らないという身分でありまして、
なんというか、間抜けな知識なのでありますけども
それなりに見知った人物たちの躍動と
いかにも古代中国という展開が
大変楽しく読めたのでありました

物語は、劉邦が呂婦人を娶るあたりから、
垓下の戦いが終わるところまでという、
劉邦としては、一番いいところを切り取った内容で、
その後の、悲惨きわまりないといっていいのか、
どうしたんだ劉邦というそこは描かれておりませんでした
さりとて、その片鱗というか、素養というか、
元となりそうなことは、少しずつ混ぜられていたのですが
全体的に、大変優しい男として描かれていて
これが、宮城谷版かと楽しんだのでありました

物語としては、正史をなぞったといってしまっていいのか、
細かに戦いと、そこにいたる経緯が描かれていて、
もうこれは、書かれていることが史実であろうと
信じてしまうばっかりなのでありますが、
緻密で、理論的な展開に目がすべりまくるのであります
間違っていても、私では理解できない
雰囲気だけで十分楽しいのだからよいのだ

こうなってくると、楽しみなのは、各武将の描き方で、
なかなかステキだというか、イメージと違ったというのが
曹参、ショウカといった、大変重要なポジションの二人
それぞれが、官僚あがりということもあって、
劉邦に対して独特のというか、付き合いについての
割り切り方の不思議があってなかなか楽しかったのであります
決して、心を赦しあったとまでは
思えないような感じが、なにか新鮮でありました

期待どおりだったのは、張良、ハンカイ、カコウエイ、
特に、カコウエイは素晴らしく、
いかにも、劉邦と昔悪いことしていましたというか、
そういう仲だったというのが
ありあり描かれていて、これこそが劉邦のそれよなと
たまらん感じで読んだのであります
馬車で逃げるシーンなんか、とても大好き、
昔の仲間に、叱咤されるというのは
いい情景であります

そして、めっけもんというか、
韓信の描き方もかなり好きというか、納得でありまして、
この野心家ならば、その後、すぐ殺されたのも
わからんでないなという感じで、
非常に感心しきりの役でありました
ただ、呂婦人は結構綺麗に描かれて、
ほとんど出番もないというのが残念でしたが、
まずまず、劉邦が立つところが楽しめて
満足だったのであります

と、語りすぎて仕方ないところながら、
項羽、項梁、ハンゾウの描き方はそれぞれ楽しく、
項羽の人となりが結構意外な感じだと
どちらかというと呂布めいたものを感じたのでありますが
これもまた、楽しい読書に花を添えてくれたのであります
満足だ