CLASS3103 三十三組

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【読書】作家刑事毒島の嘲笑

2023-01-11 20:55:16 | 読書感想文とか読み物レビウー
作家刑事毒島の嘲笑  著:中山七里

やられた
気づいていたはずなのになんて思いながら読み終えたんだが、
短編連作で、作家兼業の刑事という風変りな男と、公安刑事の二人組で
思想犯めいた事件を追うというお話だったんだが、
黒幕について、あれかなとあたりを付けていたら、そっちじゃなかったかと
ちょっと考えてみれば、こんなクラシカルな手にひっかかるなんてと
思ったりしながら読んでしまったんだが
なかなか、ミステリ小説を楽しませてもらったと
そう思う一作でありました

事件と犯行については、さして大きくないというか、
最初からなんか違和感がある、思想犯めいたそれと見せかけて、結局痴話げんかじゃないが
ごくありふれた、思想と関係のない事件のカモフラージュ的に利用していたと
そんな感じが多かったんだが、それはそれとして、
作家という仕事や、思想という概念というものが、
かくも嘲笑われるというのがこの本というか、登場人物の真骨頂というところで、
正直読んでいると、ヤな話だなと思ってしまうのも仕方ない感じでありました
結局のところ、本当はどうであろうが、思想とかに関わる話というのが
なんか、どう読んでも気持ち悪いというか、座りがわるい話なんだなと
改めて思い知ったようでもありました

そういう嘲笑をする作家刑事のシニカルというか、
割り切った考え方、法に触れたから捕まえる、そのあとの情状酌量なり、法制度の落ち度なりは
裁判官が頑張ってねというのは、一定以上に納得というか、共感できるなぁと
あしざまに思想という名前のもとで好き勝手やる輩というものを見て
思わされたりしてしまうのも、そもそも、この本の術中にはまっているようでありました

モノとかコトの本質というのから、
どんどんと乖離させられてしまう、政治思想というものの魔物というか、
なんか便利で、おもちゃのように扱われるそれについて、
嫌悪を抱いてしまうという、今の言論と呼ぶのか、そういう空気みたいなのを
もっと大きくバカにしようでもないが、なんとも、
底意地の悪い話だったなぁと思いつつも、これもまた、
今の世の中というものを、ある程度描いている姿かもなぁなんて思わされたりしたのである

しかし、表紙は毒島なのか、そうだとすると
読んだ印象と違いすぎるんだが、こういうの最近多いなぁと
自分の想像する切れ者像が、世間受けのそれ乖離してそうなことを考えたのであった