CLASS3103 三十三組

しがない個人ホームページ管理人の日記です。

【読書】ぼんぼん彩句

2023-08-18 21:08:57 | 読書感想文とか読み物レビウー
ぼんぼん彩句  作:宮部みゆき

ありそうでなかった形だと、読んでいて驚いたのでありました
一句あり、それが読まれた情景、背景を小説とする
そういう組み合わせの短編集で、これは短歌ではないし、俳句ともいいがたい、
何よりも、一句が、句の形ではあるものの、
いわゆる俳諧などに通じるものとは対極でもないが、まるで違う世界観の下読まれているという
ある種の下の句や上の句が、小説になっているという点が
秀逸というか、面白い試みだなと感心したのでありました

ほのぼのとしていたり、ほの寂しいといったり、
そういう穏やかとも違うが、切なさが句のいいところだと思っていたところ、
そうではない、ただの怨嗟や憎悪、あるいは、悲劇や危険をただ詠んだ
それが凄いなと、成り立ちからして違う句に引き寄せられたようでありました

と、まぁそう書いてしまうとアレだけども、
全体的に暗いというか、ちょっと悲惨といってもいいような話が多くて、
たいがいが人間の悪の部分とでもいったらいいか、
様々な形の悪が出てきて、それと遭遇して、救われることがない
と、言い切っていいかはさておき、やるせないものは
解消したりしなかったりが、結構中途半端なのが、なんというか
より心をえぐってくるなと、悲しい短編があったと思うと、
はた、それを総括するように、一見綺麗な句が〆るというのがクセになるでもないが
続いていくのがとても楽しかったのでありました

また、短編の方向性もみんな驚くほど違って、
共通といえるかどうか怪しいが、やっぱり、嫌な人、というののバリエーションが
ありとあらゆる形で出てくるのが見所といったらいいか、
クズ男だったり、毒親だったり、逆恨みや嫉妬だったりというのにかられた
ある種の化け物じみた人にまとわりつかれる、そういう悲劇があるのが
なんというか、後味最高に悪くて、素晴らしい小説だなと思うのでありました
前に読んだ、短編回廊の絵画に匹敵するものが句なんだなと感じて
凄く楽しんだのであります

全体的に救われない話ばっかりだけど、だからこそ、
救われる話の光が実に心地よく、悪いことの中で、それだけで救われるというか
少しだけ晴れるのがまた、いい読書体験になってよかったと思った
あとがきで、案の定、誰かが書いたまったく関係のない短歌から
短編をひねりだしたという作りになっているそうで、
こういう試みは大変よろしい、続編に期待したいと素直に思って読み終えたのでありました