CLASS3103 三十三組

しがない個人ホームページ管理人の日記です。

【読書】あばれ狼

2023-08-05 21:08:30 | 読書感想文とか読み物レビウー
あばれ狼  作:池波正太郎  

また毛色の違う短編集なんだが、任侠股旅物と真田太平記外伝みたいな話で
これはかなりお得といった感じの収録で、大変面白かった

特に、股旅ものが今まで読んだことなかっただけに斬新で、
読んでその人情話に惹かれていくんだが、盗賊が出てくるあたりとか、
話しの展開が、どこか、股旅ものよりは、やっぱり、池波正太郎の物語だと思わせる節があって、
大変興味深かったのである、これが池波任侠というやつかと
作品が少ないだけに貴重なものを読んだと思うのであった

実在の話かどうかわからんが、親子の縁というものを基本的に親の方しか知らない
そういう人情もので構成されていて、誰ぞの仇やら、なんだかんだというところに
なぜだかわからない情がかけられてという話になっていくのが切なくてよかった
渡世の生きざまと同時に死にざまというのが、ここでよかろうという舞台をもって語られるというところが
厭世的だけどすごくかっこよくて、こういう話としての完成度というか、
仕方なさみたいな、まぁともかく面白いのでありました

しかし、相変わらずといっていいか、どうも、女性に何か思うところがあるんだろうかと
唸ってしまうような展開が多いのが特徴だと思うのだけど、
そういうのも含めて、池波人情劇であるなと思い知らされる
母親が薄情という描き方でもありそうだが、それは、もっと俗な感じでいくと、
母親も、女という個人であるという話でしかないと
つっぱねているようでもあって、そこに憐憫を覚える男というのが、むしろ、親子の情というのに
過ちをもっているのかもなんて思ったりしたのであった
親子であるということと、人間個人であるということが並立するが、当然しないことがあるという
その混同されがちなところを上手に書くなという印象をもったのであった、
そのせいか、時折、人情が薄いんじゃありやせんかと思うときもあるんだが
そういうところも含めての、人間感動なんだろうと
とくとく読むのである

真田の外伝もかなり面白くて、これまた残念なことに
真田太平記を読んでないから、この面白さの半分も理解できなかったのが口惜しいんだが、
主君と家臣の在り方、そこに人情と出世欲というのがあわさる姿がよく、
また、それがよくよくわかるからこその、老練とのいうべき真田の謀略みたいなのが冴えていて
面白い小説であった