既に1週間経ってしまったわけですが、前回の「軍師官兵衛」は
我が憧れの悲劇の女性、だしの名前が出てきたので、またも感想を少々書いておきたいと思います。
〈この記事は途中数行まで書いて放置してあったので付け加えてアップしようと思いました。書きたかったことを少し忘れてしまったかも〉
秀吉が関白になって、茶々にご執心になっていくと言うような話はどうでも良いのですが、この茶々が上手く使われていました。
道薫に向かって堂々と、なぜそのようなものになってまで生きているのだと言い放ち、そして道薫も「なぜ父母を危めた者にすがってまで生きているのだ。」と言うようなことを言い返すのです。これって、本当は誰もが知りたい今の常識では当てはまらない戦国女性の生き様の謎だと思います。
戦国の世は物の怪ばかり。
秀吉の怒りをかい、まさに手打ちになろうと言うときに官兵衛が高らかに笑って助けるのでした。
「その者は死にたいのでござる。」
とこのように、私が不正確なセリフであらすじを書いていっても仕方がない事なのですが、この道薫のお話は本当に興味深いものでした。
ちょうど10回前の23回の感想の中で、村重には村重の戦いがあり、それは生き抜くという戦いだったというようなことを書きました。
だけれど彼の戦いは信長の唐突な死によって終わってしまいました。
その後に押し寄せたものは、勝ったという満足であるわけもなく彼は自分を犬の糞、道糞と名乗るのでした。
しかし秀吉の御伽衆に加えられたことによって、名前を道薫に改めるわけですが、彼の心の中ではまったく変わっていなかったと言ってももよいでしょう。
「死ねないのだ。」と言う彼は、心底臆病者であったのか?
それは否だと思うのです。
いっかいの素浪人であった彼は、裏切られていた信長さえ、最初はあの男はそんな男ではないと言わしめた者として描かれているのです。
信じていたからこそ信長の村重一族に対する処遇は厳しかったと思うのです。
切腹・自刃・討ち死に・・・・
そんな言葉が飛び交う戦国の物語においては村重の行動と言動は異質なものにしか映らないかもしれません。
でも所詮人間なんて、今も昔も変わらないんじゃないかと思います。
生きることにも死ぬことにも、みんな理由がいるという面倒くささ。その面倒な生き物が人間なんじゃないかなと思うのです。
信長よりは長く生きたけれど、見たかった景色はこれではないと村重は感じていたはず。
ではではと切腹できるものでもなく、彼は生きながらに死んでいきました。
だけれどそんな彼を蘇らせたのは、だしが乳母に託した子どもと再会出来たからでした。
もちろん最初は父と喜んで名のれる訳もなかったのです。なにしろ子供の母を見殺しにしてしまったという負い目もあったでしょうし、何より今の自分の存在が父として誇れるようなものではなかったからでした。
だけどこの後、もう一度彼は官兵衛のサポートもあって、もう一度我が子に会い、その絵を見て百年氷のような心を氷解させるのでした。
でも肝心のここ、あまり良く覚えていないのです。官兵衛による〈主人公ですからね〉会心の一撃があったはずなのに、なんでなのか覚えてない・・・。
多分それはその後のシーンからラストまでがインパクトが強かったからなんだと思います。
復活した道薫は、秀吉の怒りをかった処罰として所払いを受けます。でもそれは官兵衛などの取り計らいにより異例の軽さだったと思われます。しかも今の茶の師匠である千利休から茶三昧の生活をすればイイよなんて言う言葉まで頂いて、とても処罰などとは思えない別れがやって来ました。
村重は復活の証のように官兵衛を
「官兵衛殿、いや官兵衛!!」と昔のように呼び捨てにするのです。
―昔のように。
「俺はもう一度、生き直してみるよ。」
そうして村重は去って行きました。
だけどこの後、この翌年に村重は死んだとナレーションが入りました。
「えっ!」
「そうなんだ!!」
と、我が家の反応。
生きると言った途端に死んだと言うのは、最大の皮肉か。それとも村重への最大の断罪か。
私は、やられたなあと思いました。なんて言うか宗教色が強い物語だと思いました。
村重は許された。だから死がようやく訪れたのだと思いました。
人間故にその生にも死にも意味を考えてしまう、私達はそういう生き者なのかもしれません。
と、しみじみとしていましたら、夫殿が
「分からないことだ!!」と言いました。
「村重がどういう気持で最後を迎えたなんて分からないし、息子に会えたのかもわからない。」と。
私、おめめパチクリ。
いったいどうしたことか。
夫殿よ、これはみんなみんなこの「軍師官兵衛」のライターさんの創作の物語じゃよ。
でも夫にそう言わしめたこの台本は、上手いんだな~。
これは物語ですよ。
きっとある時は自分でもうっすらと涙を浮かべながら、ある時は口元の広角を上げながら目をキラキラさせて書いていた部分だと想像の翼を広げるならば、そう思える部分であったと思います。
このライターさん〈前川洋一さん〉は官兵衛に最大の試練を与え、その後の官兵衛を作り上げていった村重にかなり思い入れがあったように感じました。ある意味裏ヒーローだったんじゃないかな。
故に村重はまだ野心いっぱいのキラキラしていた青年期から登場し、裏切りの心情もその後も丁寧に描かれたのではないでしょうか。
そしてまた今まで他のドラマに登場してこなかっただしという悲劇のヒロインを作り上げ、官兵衛をクリスチャンの道へと導きました〈このドラマの中では〉
布教というものもそうですが、例えば誰かに影響を与えるということについても考えさせられる部分でした。
自分が居なくなった世界でもまっすぐに生きたその姿の記憶が誰かに良い影響をあたえることが出来たならば、それはなんて素晴らしいことなのかと思ったのでした。
そして彼らの息子が、本当に名のある絵師になったなんて言うのも驚きでした。
すごいインパクトのある絵を描く人だったんですね。
その岩佐又右エ門については→ここ
〈少々・・・じゃなかったな〉