私が友人に、イギリスではタクシーに乗ったことが冒険だったと言うと、不思議そうな顔をされたりしました。
「どうしてよ。行き先ぐらいは言えるでしょう。」
そりゃあ、言えますよ。
でもね、私には行き先が言えればタクシーの90%をクリアしているとは思えないのですよ。 それは「トラウマ・タクシー」の中でも書きましたが、外国のタクシーに対して怖いと思ってしまうトラウマがある。また、何かアクシデントが起きた場合、それに対応できる語学力がまるっきりない。そして、タクシーに乗った理由が行き当たりばったりのメチャクチャな思いつきで、アクシデントに合う確立が高かったとなれば、やっぱりそれは冒険だったと言えると思います。
今回の旅行で、私がイギリスに行く素敵な相棒を得ることが出来たのは、その彼女にもイギリスに来てみたい理由があったのです。彼女の子供は、このカンタベリーに在る大学に留学中でした。イギリスにいる子供の様子を垣間見てみたかったのだと思います。でも、カンタベリーに行ったのは月曜日、子供は学校を抜け出して会いに来てくれる事なんかありませんでした。なんたって小学生からずっと皆勤賞の青年です。頼みもしないのにやって来た親に、授業を休んで会いに来るなんてことはあり得ない事なのでした。偉いですよね。
ありえない事と言えば、もともと留学中の子供に会いに行くと言うのも「時代」と言うものかも知れませんね。でも、親としてはどんな街どんな環境の所に行ったのか興味があるのは、よく分かることでした。
ですが、ツアー参加で行った私たちには自由がありません。今頃になって思い返すと、もう少し旅慣れていれば、違うやり方もあったのかもしれません。でも、そういう知識もない私たちだったのですよ。
カンタベリーに着いたとき、彼女がガイドの女性にここからその大学へはどのくらいなのかと聞きました。ガイドの女性は
「とっても近いんですよ。そうねえ、自転車で15分くらいかしら。」
自転車で15分・・・・
こういう時、人は「近い」を強調したくて少し短めに言うのだと思います。そうするとだいたい20分から30分。ならば、車で15分。(少し長め)
私はその時は口には出しませんでしたが、ふと、そこに行かせてあげたいと思ってしまいました。
留学している子供の学校を見ることは、誰でも出来ることではありませんが、ただ見るだけであっても嬉しい事だと思います。
でも、なんとなく友人と言葉が噛み合いません。たぶん二人とも迷っていたのだと思います。ツアーと言う団体行動な訳ですし、私には勇気が足りず、彼女には遠慮があったのかもしれません。
私たちはカンタベリー大聖堂を見学したり、写真を撮ったりお土産を買ったりしました。前の記事にも書きましたが、カンタベリーはとっても賑やかな町です。日本で言ったら門前町の賑わいといった所ではないでしょうか。カンタベリー大聖堂を見た後は、みんなはその賑やかな街をぶらついたりするのだと思います。
時計を見たら、まだ集合時間まで50分ありました。
そこで、先程の計算が頭をもたげてきました。
車で往復30分、10分の余裕、5分の見学・・・・
「行ってみますか~?」
街を見学するぐらいなら、いっそチャレンジしてみるかと言う気持ちになってきました。
―アア、でも大丈夫かな。
言っているそばから心の声もこぼれてしまいます。
「じゃあ、ガイドさん探す?」と友人が言いました。その瞬間腹が決まりました。だって、それは絶対に無理な選択です。時間切れ、行こうと思った気持ちは泡になってしまうと思いました。
「平気!きっと何とかなる。」得意の根拠のない「大丈夫宣言」です。
その後、5分でタクシー乗り場までダッシュです。しかもそのタクシー乗り場を探すのも勘ですよ。なんてメチャクチャな私たち。
本当はここからが私にとっての大冒険です。でも、冷静に考えてみると(後からならいくらでも冷静になれますが)言いたい事はこれだけなんですよね。
―私たちは●●大学に行きたい。でも、15分で行く事が出来ますか。11時15分までに帰ってくることが出来ますか。
簡単じゃないですか。
Let’s 英作文タイム!!
We want to go to the ** university. However, can you go in 15 minutes?Can you come back by 11:15?
でも、私は焦ってしまうと冠詞と前置詞がいい加減な人なので、たぶん「in」はすっ飛ばし、「by」でいいものを「until」を使ってしまうし、
「however」なんて思いだしもしないで、「しかし、だけど」はみんな
「but」・・
でも、通じたからなんでもいいのさ。
ところが意外と渋滞。イギリスはロンドンに近くなればなるほど渋滞が多いですが、この街も結構ドキドキでした。
その時私と友人が暗い顔して考えていた事・・・・
私・・・・・「ごめんなさい~!時間切れデース。ユーターンして下さ~い。」をとりあえず英語で運転手さんに言っている図。
友人・・・・「ごめんなさーい!申し訳ありません。すみません。」とツアーのメンバーに土下座している図。
だけどそんな二人の心配をよそに、突然その大学にはたどり着きました。良かった~!!
運転手さんに待っていてと伝えましたら、降りて来て写真をバチバチ撮ってくれました。
「見た~!?感じた~!?O.K~!?」
と言うノリでダッシュで帰ってきました。
そうして集合時間前には私たちは澄ました顔をして、何事もなかったかのように立っていました。
レベル高き者達には、階段を普通に下りるが如き普通の出来事でも、レベル低きものには、蛙がぶなの梢ををジャンプするが如きで、違う風景を見る楽しさがあったというお話でした。
間に合わないではないかと思い、
はらはらしました!
間に合ったんですよ!!
でも、本当にドキドキしましたよ~。
ツアーでやたら群がっているのに、何で、私たちは三人でタクシーなんかに乗ってしまったんだろうと、不思議な気持ちにもなりました。
冒険少女・・・違いました・・冒険元少女Sのお話でした。