裁判中に、ものごとが進行してしまっては、裁判の意義がなくなります。
守るべきものが壊されてしまっては、それを守るために裁判をしていたわけであって、訴えの利益がなくなったとして、裁判自体も敗訴になる可能性があります。
そのような事態を止める手法が、「仮の救済」の制度。
他の国では、訴訟がなされるとそれ自体で、その裁判の訴えに関わることは、一時ストップするとのこと。
日本では、「仮の救済」の申立てを裁判所にし、それがみとめられると、裁判の判決が出されるまでは、ストップする制度となっています。
「義務付け・差止訴訟」(国、行政に何かをすることを求める場合、例、生活保護申請を認める場合)の仮の救済は、行政訴訟法37条の5の規定があり、以前ご紹介いたしました。
http://blog.goo.ne.jp/kodomogenki/e/bc05ffb863a766e06c55c7ea0ea9a10e
もうひとつ、「取消・無効確認訴訟」(何かをしようとする国、行政に、その何かをするなととめる場合、例、撤去命令を出したが、その撤去命令を取り下げろという場合。建築確認を出したが、その建築確認を取り下げろという場合。)仮の救済の規定があります。行政訴訟法25条2項以降です。
25条の2項の仮の救済の申立てが認められるためには、積極要件(申立人に証明責任(疎明責任)があります。)に当てはまることと、消極要件(訴えの相手方に証明責任(疎明責任)があります。)に当てはまらないことが必要です。
積極要件
1)適法な本案訴訟提起
2)重大な損害を避けるため緊急の必要性
消極要件
3)公共の福祉に重大な損害を及ぼすおそれがあること。
4)本案について理由がないとみえること。
******行政事件訴訟法******
(執行停止)
第二十五条 処分の取消しの訴えの提起は、処分の効力、処分の執行又は手続の続行を妨げない。
2 処分の取消しの訴えの提起があつた場合において、処分、処分の執行又は手続の続行により生ずる重大な損害を避けるため緊急の必要があるときは、裁判所は、申立てにより、決定をもつて、処分の効力、処分の執行又は手続の続行の全部又は一部の停止(以下「執行停止」という。)をすることができる。ただし、処分の効力の停止は、処分の執行又は手続の続行の停止によつて目的を達することができる場合には、することができない。
3 裁判所は、前項に規定する重大な損害を生ずるか否かを判断するに当たつては、損害の回復の困難の程度を考慮するものとし、損害の性質及び程度並びに処分の内容及び性質をも勘案するものとする。
4 執行停止は、公共の福祉に重大な影響を及ぼすおそれがあるとき、又は本案について理由がないとみえるときは、することができない。
5 第二項の決定は、疎明に基づいてする。
6 第二項の決定は、口頭弁論を経ないですることができる。ただし、あらかじめ、当事者の意見をきかなければならない。
7 第二項の申立てに対する決定に対しては、即時抗告をすることができる。
8 第二項の決定に対する即時抗告は、その決定の執行を停止する効力を有しない。
(仮の義務付け及び仮の差止め)
第三十七条の五 義務付けの訴えの提起があつた場合において、その義務付けの訴えに係る処分又は裁決がされないことにより生ずる償うことのできない損害を避けるため緊急の必要があり、かつ、本案について理由があるとみえるときは、裁判所は、申立てにより、決定をもつて、仮に行政庁がその処分又は裁決をすべき旨を命ずること(以下この条において「仮の義務付け」という。)ができる。
2 差止めの訴えの提起があつた場合において、その差止めの訴えに係る処分又は裁決がされることにより生ずる償うことのできない損害を避けるため緊急の必要があり、かつ、本案について理由があるとみえるときは、裁判所は、申立てにより、決定をもつて、仮に行政庁がその処分又は裁決をしてはならない旨を命ずること(以下この条において「仮の差止め」という。)ができる。
3 仮の義務付け又は仮の差止めは、公共の福祉に重大な影響を及ぼすおそれがあるときは、することができない。
4 第二十五条第五項から第八項まで、第二十六条から第二十八条まで及び第三十三条第一項の規定は、仮の義務付け又は仮の差止めに関する事項について準用する。
5 前項において準用する第二十五条第七項の即時抗告についての裁判又は前項において準用する第二十六条第一項の決定により仮の義務付けの決定が取り消されたときは、当該行政庁は、当該仮の義務付けの決定に基づいてした処分又は裁決を取り消さなければならない。