「大阪府子どもを性犯罪から守る条例」が平成24年10月1日施行されました。
以下、8条、9条の内容が禁止されます。
条例の文言が、漠然不明確、過度に広範な場合、条例の機能を果たすことが難しくなる場合があります。
子ども達を性犯罪から守ることは、絶対に必要なことです。
一方、子ども達は、地域に見守れながら、育つ存在です。
地域の子ども達への声掛けもまた、大切であり、それへの影響がない条例であることを望みます。
(不安を与える行為の禁止)
第八条 何人も、親権者、未成年後見人、学校等の職員その他の者で現にその監督保護をするもの(以下「監督保護者」という。)が直ちに危害の発生を防止することができない状態にある十三歳未満の者に対し、挨拶、防犯に関する活動等の社会通念上正当な理由があると認められる場合を除き、次に掲げる行為をしてはならない。
一 甘言又は虚言を用いて惑わし、又は欺くような言動をすること。
二 義務のない行為を行うことを要求すること。
(威迫する行為等の禁止)
第九条 何人も、その監督保護者が直ちに危害の発生を防止することができない状態にある十三歳未満の者に対し、社会通念上正当な理由があると認められる場合を除き、次に掲げる行為をしてはならない。
一 いいがかりをつけ、又はすごむこと。
二 身体、衣服等を捕らえ、又はつきまとうこと。
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○大阪府子どもを性犯罪から守る条例
http://www.pref.osaka.jp/houbun/reiki/reiki_honbun/ak20115831.html
平成二十四年三月二十八日
大阪府条例第二号
大阪府子どもを性犯罪から守る条例を公布する。
大阪府子どもを性犯罪から守る条例
次代の社会を担う子どもが、健やかに成長し、安全に安心して暮らせることは、府民全ての願いである。
しかしながら、子どもの心身に重大な被害を及ぼす犯罪が後を絶たず、とりわけ子どもに対する性犯罪は、その人権及び尊厳を踏みにじる決して許すことのできない犯罪であり、身体的及び心理的に深刻な影響を与え、子どもの健やかな成長を著しく阻害するばかりでなく、その家族はもとより地域社会にも重大な影響を及ぼすことになる。
また、犯罪に至らないまでも、子どもや保護者、地域社会に不安を与える事象の発生も少なくない。
これらの状況を踏まえ、子どもに対する性犯罪を未然に防止し、その安全を確保するためには、私たち一人ひとりが子どもを性犯罪から守ることに対する理解を深め、府、市町村、事業者、府民等が一体となった取組を展開することが不可欠である。
社会全体で子どもを性犯罪から守ることを基本に、子どもが性犯罪の被害に遭わない、その加害者を生み出さない社会の実現を目指し、この条例を制定する。
(目的)
第一条 この条例は、子どもに対する性犯罪を未然に防止するため、府、事業者及び府民の責務を明らかにするとともに、子どもの安全を確保するための取組を推進し、及び必要な規制等を行い、もって子どもが健やかに成長し、安全に安心して暮らせる社会の実現に資することを目的とする。
(定義)
第二条 この条例において、次の各号に掲げる用語の意義は、当該各号に定めるところによる。
一 子ども 十八歳未満の者をいう。
二 性犯罪 次に掲げる罪をいう。
イ 刑法(明治四十年法律第四十五号)第百七十六条から第百七十九条まで、第百八十一条、第二百二十五条(わいせつの目的に係る部分に限る。以下この号において同じ。)、第二百二十八条(同法第二百二十五条に係る部分に限る。)、第二百四十一条及び第二百四十三条(同法第二百四十一条に係る部分に限る。)の罪
ロ 盗犯等の防止及び処分に関する法律(昭和五年法律第九号)第四条(刑法第二百四十一条前段の罪又はその未遂罪を犯す行為に係る部分に限る。)の罪
ハ 児童買春、児童ポルノに係る行為等の処罰及び児童の保護等に関する法律(平成十一年法律第五十二号)第七条第三項の罪
ニ イからハまでに掲げるもののほか、自己の性的好奇心を満たす目的で犯した罪
(府の責務)
第三条 府は、市町村、事業者、府民等と連携して、社会全体で子どもを性犯罪から守るために必要な施策を実施する責務を有する。
2 府は、事業者及び府民が、子どもを性犯罪から守るために行う自主的な活動を促進するため、必要があると認めるときは、助言その他の必要な支援の措置を講ずるよう努めるものとする。
(事業者の責務)
第四条 事業者は、社会の一員として子どもを性犯罪から守るために積極的に行動するよう努めるとともに、府が実施する子どもを性犯罪から守るための施策に協力するよう努めるものとする。
(府民の責務)
第五条 府民は、日常生活における子どもの安全の確保に努めるとともに、府が実施する子どもを性犯罪から守るための施策に協力するよう努めるものとする。
(適用上の注意)
第六条 この条例の適用に当たっては、性犯罪の被害を受けた子ども及びその関係者の名誉又は平穏な生活を害することのないよう十分配慮しなければならない。
(啓発活動等)
第七条 府は、子どもに対する性犯罪を未然に防止し、その安全を確保することについて、府民の理解を深めるために必要な広報その他の啓発活動を推進するものとする。
2 府は、子どもを性犯罪から守るための教育を充実するよう努めるものとする。
(不安を与える行為の禁止)
第八条 何人も、親権者、未成年後見人、学校等の職員その他の者で現にその監督保護をするもの(以下「監督保護者」という。)が直ちに危害の発生を防止することができない状態にある十三歳未満の者に対し、挨拶、防犯に関する活動等の社会通念上正当な理由があると認められる場合を除き、次に掲げる行為をしてはならない。
一 甘言又は虚言を用いて惑わし、又は欺くような言動をすること。
二 義務のない行為を行うことを要求すること。
(威迫する行為等の禁止)
第九条 何人も、その監督保護者が直ちに危害の発生を防止することができない状態にある十三歳未満の者に対し、社会通念上正当な理由があると認められる場合を除き、次に掲げる行為をしてはならない。
一 いいがかりをつけ、又はすごむこと。
二 身体、衣服等を捕らえ、又はつきまとうこと。
(禁止行為に係る通報)
第十条 前二条に規定する行為に該当すると認められる行為を発見した者は、監督保護者に連絡し、又は警察官に通報するよう努めるものとする。
2 前項の規定による連絡を受けた監督保護者は、前二条に規定する行為に該当すると認められる行為が発生した旨を警察官に通報するよう努めるものとする。
3 第一項の規定による連絡又は通報を行う者は、前二条に規定する行為に該当すると認められる行為を受けた者の不安の軽減を図るよう努めるものとする。
(不安を与える行為の禁止等に関する配慮事項)
第十一条 第八条及び第九条の規定の適用に当たっては、挨拶、防犯に関する活動等を阻害することのないよう十分配慮するものとする。
(住所等の届出義務)
第十二条 子どもに対し、第二条第二号イからハまでに掲げる罪を犯し、これらの罪に係る刑期の満了の日から五年を経過しない者で府の区域内に住所を定めたものは、規則で定めるところにより、当該住所を定めた日から十四日以内に、次に掲げる事項を知事に届け出なければならない。
一 氏名
二 住所
三 性別
四 生年月日
五 連絡先
六 届出に係る罪名
七 刑期の満了した日
2 前項の規定による届出をした者は、同項各号に掲げる事項に変更を生じたとき(次項に規定する場合を除く。)は、その日から十四日以内に、その旨を知事に届け出なければならない。
3 第一項の規定による届出をした者が新たに府の区域外に住所を定めることとなった場合は、その旨を知事に届け出なければならない。
(社会復帰に関する支援)
第十三条 知事は、前条第一項の規定による届出を受けたときは、訪問等により届出の内容を確認した上で、その確認が得られた者(以下「社会復帰支援対象者」という。)に対し、社会復帰に関する相談その他必要な支援(以下「社会復帰支援」という。)を行うものとする。
2 社会復帰支援を行うに当たっては、社会復帰支援対象者の意に反して、その家族、近隣住民その他の関係者にその事情を知られないよう十分配慮しなければならない。
(警察本部長に対する協力の依頼)
第十四条 知事は、前条の規定に関し、警察本部長に対して協力を求めることができる。
(個人情報の管理)
第十五条 知事は、社会復帰支援を行うために第十二条第一項の規定による届出により収集した個人情報(大阪府個人情報保護条例(平成八年大阪府条例第二号)第二条第一号に規定する個人情報をいう。)について、別に定めるところにより、適正に管理しなければならない。
(規則への委任)
第十六条 この条例に定めるもののほか、この条例の施行に関し必要な事項は、規則で定める。
(罰則)
第十七条 次の各号のいずれかに該当する者は、三十万円以下の罰金又は拘留若しくは科料に処する。
一 常習として第八条の規定に違反した者
二 第九条の規定に違反した者
第十八条 第十二条第一項又は第二項の規定による届出をせず、又は虚偽の届出をした者は、五万円以下の過料に処する。
附 則
(施行期日)
1 この条例は、平成二十四年十月一日から施行する。
(経過措置)
2 第十二条の規定は、この条例の施行の日前に第二条第二号イからハまでに掲げる罪を犯し、これらの罪に係る刑期が満了した場合については、適用しない。
*****大阪弁護士会******
http://www.osakaben.or.jp/web/03_speak/kanri/db/info/2012/2012_4f55c6709de0d_0.pdf
大阪府子どもを性犯罪から守る条例制定に反対する会長声明
今般、大阪府議会に上程された「大阪府子どもを性犯罪から守る条例」(以下「条例」と
いう。)では、①保護年齢を13歳未満の子どもとして「子どもに不安を与える行為」、「子
どもを威迫する行為」を犯罪として罰則を設け(いわゆる「声掛け規制」8条、9条、1
7条)、かつ、②性犯罪刑期満了者に対し、居住地、氏名、読み仮名、性別、生年月日、連
絡先、罪名、出所年月日を知事に届け出なければならないとし、違反者には過料の行政罰
を科すことを新たに提案している(「住所等の届出義務」12条、18条)。
まず、「声掛け規制」は、挨拶や防犯などの活動に配慮し(11条)、これら社会通念上
正当な場合を除くことになっているが(8条、9条)、社会通念上正当な理由がある場合と
それ以外の場合とを明確に外観上区別することは出来ない。具体的にどのような行為を行
えば処罰されるのかが不明確であることは、罪刑法定主義との関係で許されない。しかも、
条例は、市民に対して警察への通報を求めている(10条)。つまり地域住民は、子どもと
関わりを持つ大人に対しては、まず疑いをもつことが求められ、とりあえず通報すること
を奨励されかねない。このような条例は、地域のコミュニティの破壊につながり、逆に子
どもの成長の機会をも奪いかねない。
次に、届出義務を課される情報は、「罪名、出所年月日」が含まれる以上、全体とすれば
前科にかかわる事実に他ならず、高度にプライバシー性の高い情報である。このような情
報に罰則を伴った届出義務を課すことは、一連の最高裁判例(前科にかかわる事実を公表
されない利益が法的保護に値すると判示した平成6年2月8日判決(ノンフィクション「逆
転」事件)、及び個人情報について自己の欲しない他者にみだりに開示されない期待が法的
保護に値すると判示した平成15年9月12日判決(早稲田大学江沢民主席講演会名簿提
出事件))に照らしても許されないことは明白である。条例は、「社会復帰に関する相談そ
の他必要な支援」を行うと規定している(13条)が、これだけではプライバシー侵害を
正当化はできない。そもそも、条例にいう「社会復帰に関する支援」とは何を指すのか全
く不明のままであるし、条例の前文、第1条「目的」には、「社会復帰」の文言すらない。
しかも、条例では、「社会復帰に関する支援」について「警察本部長に対する協力の依頼」
を定めている(14条)。警察が協力する「社会復帰に関する支援」とは、結局は対象者の
監視を意味するのではないかと大いに疑問が残る。さらに、条例は、届出情報について、「適
正に管理しなければならない」(15条)と規定するだけである。届出情報が漏洩した場合
の被害が甚大であることは容易に推察されるところ、条例の管理規定はあまりにも不十分
である。そもそも、どのように厳格な管理を行うにしても、情報漏洩のリスクがなくなる
ことはないことを看過してはならない。
本会は、本年1月25日付けの意見書において同趣旨の意見を述べたところであるが、
以上のとおり、この条例は問題点が多いうえ、出所後の子どもを対象にした暴力的性犯罪
者の再犯率は必ずしも高いと言うことはできず条例を基礎づける立法事実もない。したが
って、その制定には反対である。
2012年(平成24年)3月6日
大阪弁護士会
会 長 中 本 和 洋
*****産経新聞(2012/9/30)******
http://sankei.jp.msn.com/region/news/120930/osk12093021500011-n1.htm
性犯罪前歴者の住所届け出義務付け 大阪府で子供を守る条例 1日から施行
2012.9.30 19:32
大阪府が18歳未満の子供に対する性犯罪前歴者に居住地の届け出を義務付ける全国初の条例が10月1日施行される。条例をめぐっては法務省が対象者の罪名や刑期満了の時期について府の照会に応じることを了承しているが、出所者が居住地を届け出ない限り、府は把握できないという課題があり、施行後の実効性にも注目が集まる。
条例は橋下徹知事(現大阪市長)が大阪の性犯罪認知件数が全国最悪という状況を受け制定を目指した。対象は18歳未満に対する強姦や強制わいせつなどの罪で服役し、10月1日以降に刑期を終える出所者。氏名▽住所▽連絡先▽罪名など7項目を府に報告するよう定めており、違反者には5万円以下の科料が課せられる。届け出期間は出所後5年間。
運用は大阪府内に居住する意思を示した出所予定者に対し、刑務所が条例の趣旨を説明。出所後、府に同意書とともに7項目を届け出ると、府が刑務所に罪名などを照会する仕組みになっている。
府は届け出を基に住居や就労などを支援するほか、府の委嘱を受けた臨床心理士らが再犯防止のための専門プログラムで支援。必要に応じて専門機関での治療も行う。
ただ、出所者が届け出ないまま府内に居住しても府にその情報を得る手段はない。府の担当者は「条例は決して前歴者を排除するものではない」と強調。「出所者をサポートすることで再犯を防ぐことが、子供を守ることにつながる」と話している。
*****産経新聞(2012/9/30)******
http://sankei.jp.msn.com/region/news/120930/osk12093021510012-n1.htm
「遊ぼう」「お菓子をあげる」…声かけ規制 子供への性犯罪防止へ
2012.9.30 19:32
今回の大阪府の条例のもう一つの特徴は、子供への「声かけ」などを規制し、罰則を盛り込んだことだ。同種の条例は、小1女児誘拐殺人事件を受けて平成17年に施行した奈良県に次いで2番目。声かけは性犯罪の前兆行動とされており、大阪府警は子供に対する性犯罪被害の未然防止策としても期待を寄せる。
子供を狙った強制わいせつ事件は多発傾向にある。府警によると、平成23年の18歳未満に対する府内の強制わいせつ事件は過去5年で最多の506件に上った。被害者の多くは小学生以下の児童で、下校時間帯に集中しているという。
こうした事件の多くは、「遊ぼう」「お菓子をあげる」などの声かけがきっかけとなる例が目立つ。府警が今年8月に強制わいせつ容疑で逮捕した男(25)は、小学生の女児に「猫を探して」と声をかけて団地の階段に連れ込み、体を触るなどのわいせつ行為におよんでいたという。
23年の13歳未満の子供に対する声かけ事案の認知件数も、強制わいせつと同様に過去5年で最多で、前年比68件増の609件に上っている。
条例では常習的な声かけや、言いがかりをつけたりつきまとったりする行為を禁じ、違反者には30万円以下の罰金または拘留などの罰則を設定。また、行為を目撃した場合には警察に通報するよう求めている。捜査関係者は「これまで声かけなどの行為に対しては、法的根拠がなく取り締まりが難しかった。条例施行で性犯罪の予防的効果も期待できる」と話している。