石原都知事の辞任は、驚きました。
石原都知事にとっては、築地市場の移転は、どうでもよかったことかもしれません。
本来の知事であれば、自分がなした一大事業を完成を見届けたいと思うものです。
それを途中で、それもまさに土壌汚染の問題が噴出している最中に匙を投げ出すのは、無責任のなにものでもないし、それを感じられていないということは、そもそも関心がなかったということでしょう。
地元中央区、市場関係者は、翻弄されてきました。
今回の辞任は、移転を賛成する人にも、現在地裁整備に賛成するひとにも、責任あるはずの都知事による大きな裏切りの行為と思います。
ただ、とても良い転換の契機が訪れました。
いまこそ、都政を正して下さる政治家を、選んで行きましょう!!
さて、各紙は、どうとりあげているか、社説を見ておきます。
****朝日新聞(2012/10/26)******
http://www.asahi.com/paper/editorial20121026.html#Edit2
石原新党―国政復帰を言うのなら
東京都の石原慎太郎知事が、知事の辞職届を出した。
たちあがれ日本を母体に、近く新党を結成し、次の総選挙で国政復帰をめざすという。
石原氏は、日本維新の会を率いる橋下徹・大阪市長ともたびたび会い、連携を模索してきた。両党を軸に、民主、自民両党に対抗する第三極の結集をめざすということだろう。
混迷する政治に風穴をあけたい。そんな石原氏の思いは多としたいところだが、これまでの言動から、危うさを感じないわけにはいかない。
新党の代表に就く石原氏に、あらためて三つの疑問をただしておきたい。
第一に、石原氏の持論が、そのまま新党の政策になるのかどうかだ。
たとえば尖閣諸島の問題だ。
石原氏はこの春、「東京が尖閣を守る」として購入費の寄付を募った。島は混乱を恐れた政府が買い上げたが、結果として日中関係は悪化し、経済などに深刻な支障が出ている。
石原氏が、その責任を感じているふうはない。
きのうの記者会見でも、中国を挑発するように「シナ」と呼び、国政に復帰すれば島に漁船が避難する船だまりや灯台をつくると主張した。
こうした姿勢は、問題をいっそうこじらせるものだ。新党も同じ方針を掲げるのか。それでどんな日中関係を描くのか。石原氏は明確に語るべきだ。
さらに石原氏は、核兵器保有や徴兵制導入を主張したこともある。これも新党の政策になるというのか。
第二に、連携相手とたのむ維新の会との間で、重要政策が大きく食い違うことだ。
たとえば原発政策である。
石原氏は会見で、原発維持を強調した。一方、維新の会は「2030年代までに既存の原発全廃をめざす」という総選挙の公約素案をまとめた。
消費税をめぐっては、たちあがれ日本が増税に積極的なのに対し、維新の会は「消費税の地方税化」を争点に掲げる。
基本政策がこれだけ違うのに、どう連携できるのか。野合と言われないよう、きちんと説明してもらいたい。
第三に、知事の任期を2年半残して辞することの意味だ。
肝いりの2020年のオリンピック招致などを、道半ばで放り出すことになる。無責任ではないか。
都知事として高い支持率を誇った石原氏だが、政党の党首にふさわしいかどうか、こんどは全国民が見ている。
******東京新聞(2012/10/26)*****
http://www.tokyo-np.co.jp/article/column/editorial/CK2012102602000114.html
石原新党 政策本位の第三極に
2012年10月26日
石原慎太郎東京都知事が知事を辞職し、新党を結成して国政復帰を目指す意向を表明した。石原氏の参戦が乱立気味の第三極勢力にどんな影響を及ぼすか。あくまで政策本位の政治行動を望みたい。
「石原新党」をめぐっては数年来、浮かんでは消え、消えては浮かぶ状態が続いていた。それは民主党と自民党という二大政党に対する「失望感の裏返し」だった、と言ってもいいだろう。
臨時国会開会は決まったものの、永田町では野田佳彦政権と自民、公明両党が特例公債法案の扱いをめぐって対立し、こう着状態が続いている。国民に高まる「いらいら感」を見極めたタイミングは絶妙といえる。
三年前の総選挙では、民主党が掲げた「脱官僚・政治主導」「地域主権」の旗に多くの国民が期待を寄せた。だが失敗し、野田首相は公約を裏切って消費税を引き上げる法案を成立させた。
自民党は安倍晋三総裁の下で政権奪還を目指しているが、本当に党が生まれ変わったのか、国民は半信半疑だ。だから石原氏への期待も一定程度、集まるだろう。
石原氏は会見で霞が関の役所と官僚に対する不満をあからさまに語った。なぜ政府は発生主義、複式簿記の財務諸表を作らないのか。なぜ厚生労働省は東京都が独自に始めた認証保育所を認可しないのか。なぜ外務省は横田基地の日米共同使用に反対するのか。
石原氏は都政を預かった十三年間「国の妨害に遭って苦しい思いをした」と吐露した。自民党政権時代に閣僚を務め、さらに都知事の経験も加わって霞が関の岩盤の厚さを痛感したに違いない。
同じ問題意識は橋下徹大阪市長率いる日本維新の会や渡辺喜美代表のみんなの党、河村たかし名古屋市長の減税日本など第三極勢力に共通している。そこから「第三極の連携がどうなるか」がこれからの大きな焦点になる。
そこで石原氏にぜひ望みたいのは、連携や協力関係は政策本位であってほしいという点だ。会見で自ら紹介した「米国防総省を刺激しないで」という外務省高官発言にあるように、強硬な外交路線を懸念する声もある。
消費税の扱い、原発・エネルギー政策、尖閣諸島や竹島、北方領土問題、さらに環太平洋連携協定(TPP)についても、国民は「自分たちの意見を政党に託したい」と願っている。国民に明快な政策の選択肢を示せるかどうかが、石原新党の試金石になる。
*****読売新聞(2012/10/26)******
http://www.yomiuri.co.jp/editorial/news/20121025-OYT1T01498.htm
石原都知事辞任 国政復帰に何が期待できるか(10月26日付・読売社説)
東京都の石原慎太郎知事が急きょ記者会見し、辞任を表明した。
新党を結成し、次期衆院選に出馬するという。新党には、たちあがれ日本に所属する衆参両院議員の5人らが参加する。
石原氏は、国民の生活が第一の小沢一郎代表との連携は否定し、橋下徹大阪市長の率いる日本維新の会などと連携していく考えを示した。自民、民主両党とは一線を画し、保守勢力の結集による「第3極」を狙っている。
「最後のご奉公」という石原氏の行動が、与野党の不毛な対立で閉塞感の漂う国政に一石を投じることになるだろうか。
今回の新党構想について、石原氏は4月、「白紙に戻す」と語っていた。一転して新党結成へ動いたのは、執念を見せていた尖閣諸島の購入問題が国有化で決着したからだと見られている。
自民党総裁選で長男の石原伸晃前幹事長が敗北したため、自民党と対抗する新党の結成に支障がなくなったとの判断もあろう。
80歳の石原氏が健康面も気遣いながら、国政で何を実現したいのかは、必ずしも明確ではない。
石原氏は記者会見で、「硬直した中央官僚の支配する制度を変えなければ駄目だ」と官僚制度の在り方を激しく批判した。持論の憲法改正や沖縄県・尖閣諸島の実効支配の強化策なども力説した。
国政の現状に対する問題意識には、うなずける点もある。
ただ、かつて25年余も国会議員を務めた石原氏が、昨年4選を果たした知事を途中で辞め、国政復帰を目指すと言う以上、もっと具体的な政策と、それを実現する戦略を語ってもらいたい。
たちあがれ日本の平沼代表は「西は橋下、東は石原」の“二枚看板”で風を起こしたいようだが、そう簡単な話ではない。
橋下氏は、石原氏と一致する政策が多いとしながらも原発・エネルギー政策などで「軸がずれている」との見解を示した。やはり、政策のすりあわせが不可欠だ。
石原、橋下両氏ら人気の高い首長をトップに据える新党が、国民から一定の期待を集めている。
これは、「決められない政治」に陥っている既成政党に対する不信や不満が強いことの裏返しでもあろう。民主党内には、石原新党がさらに離党を誘発することに警戒感がある。自民党にも、保守票の分散への懸念があるという。
石原新党が今後仕掛ける「政界再編」が、果たしてどんな波紋を広げるか見定めたい。
(2012年10月26日01時41分 読売新聞)
*****日経新聞(2012/10/26)*****
http://www.nikkei.com/article/DGXDZO47694520W2A021C1EA1000/
石原新党は何をめざすのか
2012/10/26付
東京都の石原慎太郎知事が4期目の途中で都知事を辞任し、新党を結成して国政への復帰をめざす考えを明らかにした。次期総選挙に向け、たちあがれ日本を母体に保守勢力を結集し、民主、自民両党に対抗する第三極をつくるのが目標のようだ。
1999年、都知事に就任した石原氏はトップダウンで政策を推進した。ディーゼル車への排ガス規制、東京外郭環状道路の都内区間の事業化などはその存在なしには実現しなかったと言っていい。裏目に出たのが、早々に経営悪化した新銀行東京の設立だった。
若年者の高い失業率、災害に弱い都市構造、全国で最低の出生率など東京は様々な課題を抱えている。首都高速道路など社会資本の老朽化への対応も待ったなしだ。尖閣諸島の国有化の火付け役になり、2020年の夏季五輪の誘致活動もこれからが本番である。
こうした問題を残したまま、新党の結成に動くことには無責任との批判も招くかもしれないが、知事の座をなげうつわけで、党首となって新党を結成に動くこと自体は否定されるべきものでもない。
問題は、新党が何をするためのものかということだ。どんな政治理念のもとに、どのような政策を実現しようとするのか、という点を明確にする必要がある。
焦点は、日本維新の会などとの連携による第三極の結集だ。選挙の争点になるとみられるのが(1)原発政策(2)消費税(3)環太平洋経済連携協定(TPP)――の3点だが、経済・財政、安全保障の基本的な方向での一致が必要だろう。
哲学者のヘーゲルは「国家の大変革は、2度くりかえされるとき、人びとに正しいものとして公認されるようになる」「最初は偶然、2度目は現実」と書いた。マルクスはこのくだりを念頭に置き、歴史は2度現れる、1度目は悲劇、2度目は喜劇、と言い直した。
石原氏の2度目の国政挑戦が変革につながるのかどうか。悲喜劇にならないためには理念による結合が求められる。
******毎日新聞(2012/10/26)*****
http://mainichi.jp/opinion/news/20121026k0000m070132000c.html
社説:「石原新党」結成へ 「第三極」理念が問われる
毎日新聞 2012年10月26日 01時31分
突然の表明である。13年にわたり都政にあずかってきた石原慎太郎東京都知事が辞職を表明、自身を党首とする新党を結成し国政進出を図る考えを示した。
民主、自民両党に対抗する勢力の結集をめぐる動きが活発化することは確実だ。石原氏が前向きとみられる、橋下徹大阪市長が率いる日本維新の会との連携も焦点となる。いわゆる第三極の結集論議があくまで政策本位で進むかが問われよう。
いきなりの辞職表明ではあったが、石原氏による新党構想はかねてくすぶっていた。
25日午後3時からの緊急記者会見で石原氏は新党結成の目的に現憲法の破棄や中央集権の打破を挙げた。自らが仕掛けた尖閣諸島の都による購入問題は結局、政府による国有化という形で決着した。石原氏の長男、伸晃氏が自民党総裁選で敗北したため、親子が党首として戦う展開もなくなった。そんな状況も背中を押す要因となったのかもしれない。
改憲、対中強硬路線で知られる石原氏率いる新党の参入はとりわけ「安倍自民」にとって無視できぬ競合相手の出現となる可能性もある。だが、都知事としての行動が結果的に対中関係悪化の呼び水となっただけに、新党による国政進出に不安がつきまとうことも否定できない。
再挑戦している東京五輪招致などの懸案もある。任期を2年以上残して都政を去る以上、納得できる説明がいる。会見では「中央集権の官僚制度のシャッフル」「最後のご奉公」など言葉は躍ったが、政策の輪郭を伝えたとはいいがたい。具体的政策の早急な提示を求めたい。
今後、改めて注目されるのは「第三極」結集の動向である。石原氏が強調した官僚支配打破などは確かに橋下氏らの主張とも通じる。
だが、同じ改憲の立場ながら憲法問題で「(現行憲法は)廃棄したらいい」との石原氏の主張に橋下氏は「憲法を勝手に破棄するというのは権力者が絶対に踏み越えてならない一線」とこれまで反論してきた。
また、次期衆院選の焦点となるエネルギー政策について維新の会は2030年代までに原発ゼロを目指す公約案を検討しているが、石原氏の立場は異なるはずだ。
政策の方向が共通する新勢力の連携はむしろ自然かもしれない。だが、理念にかかわる部分の食い違いを放置して反既成政党の協力を掲げても政界再編を主導するような勢力たり得るかは疑問である。
石原氏の辞職に伴い、東京都知事選も実施される。首都のかじ取り役を選ぶこれも重要な場となる。新勢力以上に問われるのは既成政党の力量である。
*****産経新聞(2012/10/26)*****
http://sankei.jp.msn.com/politics/news/121026/stt12102603200005-n1.htm
石原新党 新憲法への流れ歓迎する 首相は年内解散を決断せよ
2012.10.26 03:20 (1/2ページ)[主張]
石原慎太郎東京都知事が知事を辞職し、新党を結成した上で国政に転じる意向を表明した。
石原氏は占領下に制定された現行憲法を「解決しなければならない主要矛盾」と指摘し、新しい憲法を作るべきだと訴えた。官僚制の打破とともに、憲法改正を次期総選挙の最大の争点に据えて戦う意思を強調した。
現在の政治の閉塞(へいそく)状況を転換しようとする石原氏の行動を高く評価したい。氏が投じる一石は、新たな政治状況をダイナミックに創出する意味を持ち、憲法改正を求める保守勢力を結集する重要な核となり得るからだ。
≪権利義務の均衡を欠く≫
野田佳彦首相も「私は新憲法制定論者」と自著で語っていた。石原新党を機に、国家的課題の解決に向けて、衆院の年内解散・総選挙を速やかに決断するときだ。
石原氏は現行憲法の矛盾点として、国民の意識に絶対平和という共同幻想を植え付け、権利と義務のバランスを失した「権利偏重」の規定が「日本人に我欲を培い、利己的にした」と指摘した。
今年5月3日の憲法記念日までに、自民党は自衛隊を「国防軍」とし、石原氏と行動をともにする「たちあがれ日本」は「自衛軍」とするなど、それぞれの憲法改正案を公表した。「みんなの党」も「自衛権の在り方」を明確化するとしている。
橋下徹大阪市長率いる「日本維新の会」も憲法改正を必要とする首相公選制などを打ち出した。にもかかわらず、民主党は平成17年に国民的議論の素材となる「憲法提言」を策定して以降、新たな憲法案を出していない。
これらの問題提起を野田政権も真剣に受け止め、早急に具体的な改正案をまとめる必要がある。
最近の中国による海軍力の誇示や尖閣奪取を狙う度重なる領海侵犯、北朝鮮の核・ミサイル実験などをみれば、「平和を愛する諸国民の公正と信義」をうたう現行憲法がもはや通用しないことは、誰の目にも明らかだ。
石原氏は、激しい時代の変化にも対応できる官僚システム作りの必要性も強調した。中央官僚は「継続性にこだわり、重要課題を先送りしてきたため」、いまだに尖閣諸島に大きな灯台や漁船が避難する船だまりもできていない事実を挙げ、この問題では自民党と協力する考えも示した。
自民党の安倍晋三総裁は尖閣に公務員を配置する方針を打ち出している。野田政権は尖閣を国有化した以外は中国に配慮し、何もしていない。尖閣をいかに守るかの具体策を行動で示すべきだ。
石原都政は足かけ14年に及ぶ。3期12年間に行われた都立高学区制全廃や国旗・国歌の指導徹底、道徳教育の充実などの教育改革は高い評価を得た。4期目の今年は「尖閣諸島を都が購入する」と発表し、尖閣国有化という重要な国策の決定につながった。
≪残された課題引き継げ≫
だが、4期目は大規模災害やテロなどの緊急事態の際、都民の安全や首都機能をいかに守るかの危機管理・防災対策など難題が山積していた。東京五輪再招致の課題もある。
辞任はこれらを途中で投げ出したと受け取られかねない。石原氏はこうした批判に応え、残された課題の引き継ぎもおろそかにしてはなるまい。
石原氏が橋下氏との「連携、連帯」を強調しつつ新党結成を打ち出したことは、政界流動化の加速につながる可能性が高い。
離党者が相次ぐ民主党は、衆院の単独過半数(239人)割れまで6人に迫り、国民新党(3人)との統一会派によって危機をしのごうとしている。だが、既に衆院議員の残り任期が10カ月余となった中で、野田政権は懸案を解決できず、国民の支持を失った。
与党から石原新党への参加者が相次ぐ可能性も否定できない。過半数割れで内閣不信任決議案が可決され、首相が解散か総辞職を迫られる事態も想定される。
離党者を防ぎ、政権基盤維持のための党内融和人事に走った結果が、田中慶秋前法相の辞任を招いた。「年内解散」を明示しないために自民、公明両党との協力関係も構築できていない。
「内向き」の政権運営を続けるのではなく、新憲法作りを軸とする国のありようを競い、国民の信を問う姿勢こそ国政の閉塞状態を打破する上で不可欠である。
石原都知事にとっては、築地市場の移転は、どうでもよかったことかもしれません。
本来の知事であれば、自分がなした一大事業を完成を見届けたいと思うものです。
それを途中で、それもまさに土壌汚染の問題が噴出している最中に匙を投げ出すのは、無責任のなにものでもないし、それを感じられていないということは、そもそも関心がなかったということでしょう。
地元中央区、市場関係者は、翻弄されてきました。
今回の辞任は、移転を賛成する人にも、現在地裁整備に賛成するひとにも、責任あるはずの都知事による大きな裏切りの行為と思います。
ただ、とても良い転換の契機が訪れました。
いまこそ、都政を正して下さる政治家を、選んで行きましょう!!
さて、各紙は、どうとりあげているか、社説を見ておきます。
****朝日新聞(2012/10/26)******
http://www.asahi.com/paper/editorial20121026.html#Edit2
石原新党―国政復帰を言うのなら
東京都の石原慎太郎知事が、知事の辞職届を出した。
たちあがれ日本を母体に、近く新党を結成し、次の総選挙で国政復帰をめざすという。
石原氏は、日本維新の会を率いる橋下徹・大阪市長ともたびたび会い、連携を模索してきた。両党を軸に、民主、自民両党に対抗する第三極の結集をめざすということだろう。
混迷する政治に風穴をあけたい。そんな石原氏の思いは多としたいところだが、これまでの言動から、危うさを感じないわけにはいかない。
新党の代表に就く石原氏に、あらためて三つの疑問をただしておきたい。
第一に、石原氏の持論が、そのまま新党の政策になるのかどうかだ。
たとえば尖閣諸島の問題だ。
石原氏はこの春、「東京が尖閣を守る」として購入費の寄付を募った。島は混乱を恐れた政府が買い上げたが、結果として日中関係は悪化し、経済などに深刻な支障が出ている。
石原氏が、その責任を感じているふうはない。
きのうの記者会見でも、中国を挑発するように「シナ」と呼び、国政に復帰すれば島に漁船が避難する船だまりや灯台をつくると主張した。
こうした姿勢は、問題をいっそうこじらせるものだ。新党も同じ方針を掲げるのか。それでどんな日中関係を描くのか。石原氏は明確に語るべきだ。
さらに石原氏は、核兵器保有や徴兵制導入を主張したこともある。これも新党の政策になるというのか。
第二に、連携相手とたのむ維新の会との間で、重要政策が大きく食い違うことだ。
たとえば原発政策である。
石原氏は会見で、原発維持を強調した。一方、維新の会は「2030年代までに既存の原発全廃をめざす」という総選挙の公約素案をまとめた。
消費税をめぐっては、たちあがれ日本が増税に積極的なのに対し、維新の会は「消費税の地方税化」を争点に掲げる。
基本政策がこれだけ違うのに、どう連携できるのか。野合と言われないよう、きちんと説明してもらいたい。
第三に、知事の任期を2年半残して辞することの意味だ。
肝いりの2020年のオリンピック招致などを、道半ばで放り出すことになる。無責任ではないか。
都知事として高い支持率を誇った石原氏だが、政党の党首にふさわしいかどうか、こんどは全国民が見ている。
******東京新聞(2012/10/26)*****
http://www.tokyo-np.co.jp/article/column/editorial/CK2012102602000114.html
石原新党 政策本位の第三極に
2012年10月26日
石原慎太郎東京都知事が知事を辞職し、新党を結成して国政復帰を目指す意向を表明した。石原氏の参戦が乱立気味の第三極勢力にどんな影響を及ぼすか。あくまで政策本位の政治行動を望みたい。
「石原新党」をめぐっては数年来、浮かんでは消え、消えては浮かぶ状態が続いていた。それは民主党と自民党という二大政党に対する「失望感の裏返し」だった、と言ってもいいだろう。
臨時国会開会は決まったものの、永田町では野田佳彦政権と自民、公明両党が特例公債法案の扱いをめぐって対立し、こう着状態が続いている。国民に高まる「いらいら感」を見極めたタイミングは絶妙といえる。
三年前の総選挙では、民主党が掲げた「脱官僚・政治主導」「地域主権」の旗に多くの国民が期待を寄せた。だが失敗し、野田首相は公約を裏切って消費税を引き上げる法案を成立させた。
自民党は安倍晋三総裁の下で政権奪還を目指しているが、本当に党が生まれ変わったのか、国民は半信半疑だ。だから石原氏への期待も一定程度、集まるだろう。
石原氏は会見で霞が関の役所と官僚に対する不満をあからさまに語った。なぜ政府は発生主義、複式簿記の財務諸表を作らないのか。なぜ厚生労働省は東京都が独自に始めた認証保育所を認可しないのか。なぜ外務省は横田基地の日米共同使用に反対するのか。
石原氏は都政を預かった十三年間「国の妨害に遭って苦しい思いをした」と吐露した。自民党政権時代に閣僚を務め、さらに都知事の経験も加わって霞が関の岩盤の厚さを痛感したに違いない。
同じ問題意識は橋下徹大阪市長率いる日本維新の会や渡辺喜美代表のみんなの党、河村たかし名古屋市長の減税日本など第三極勢力に共通している。そこから「第三極の連携がどうなるか」がこれからの大きな焦点になる。
そこで石原氏にぜひ望みたいのは、連携や協力関係は政策本位であってほしいという点だ。会見で自ら紹介した「米国防総省を刺激しないで」という外務省高官発言にあるように、強硬な外交路線を懸念する声もある。
消費税の扱い、原発・エネルギー政策、尖閣諸島や竹島、北方領土問題、さらに環太平洋連携協定(TPP)についても、国民は「自分たちの意見を政党に託したい」と願っている。国民に明快な政策の選択肢を示せるかどうかが、石原新党の試金石になる。
*****読売新聞(2012/10/26)******
http://www.yomiuri.co.jp/editorial/news/20121025-OYT1T01498.htm
石原都知事辞任 国政復帰に何が期待できるか(10月26日付・読売社説)
東京都の石原慎太郎知事が急きょ記者会見し、辞任を表明した。
新党を結成し、次期衆院選に出馬するという。新党には、たちあがれ日本に所属する衆参両院議員の5人らが参加する。
石原氏は、国民の生活が第一の小沢一郎代表との連携は否定し、橋下徹大阪市長の率いる日本維新の会などと連携していく考えを示した。自民、民主両党とは一線を画し、保守勢力の結集による「第3極」を狙っている。
「最後のご奉公」という石原氏の行動が、与野党の不毛な対立で閉塞感の漂う国政に一石を投じることになるだろうか。
今回の新党構想について、石原氏は4月、「白紙に戻す」と語っていた。一転して新党結成へ動いたのは、執念を見せていた尖閣諸島の購入問題が国有化で決着したからだと見られている。
自民党総裁選で長男の石原伸晃前幹事長が敗北したため、自民党と対抗する新党の結成に支障がなくなったとの判断もあろう。
80歳の石原氏が健康面も気遣いながら、国政で何を実現したいのかは、必ずしも明確ではない。
石原氏は記者会見で、「硬直した中央官僚の支配する制度を変えなければ駄目だ」と官僚制度の在り方を激しく批判した。持論の憲法改正や沖縄県・尖閣諸島の実効支配の強化策なども力説した。
国政の現状に対する問題意識には、うなずける点もある。
ただ、かつて25年余も国会議員を務めた石原氏が、昨年4選を果たした知事を途中で辞め、国政復帰を目指すと言う以上、もっと具体的な政策と、それを実現する戦略を語ってもらいたい。
たちあがれ日本の平沼代表は「西は橋下、東は石原」の“二枚看板”で風を起こしたいようだが、そう簡単な話ではない。
橋下氏は、石原氏と一致する政策が多いとしながらも原発・エネルギー政策などで「軸がずれている」との見解を示した。やはり、政策のすりあわせが不可欠だ。
石原、橋下両氏ら人気の高い首長をトップに据える新党が、国民から一定の期待を集めている。
これは、「決められない政治」に陥っている既成政党に対する不信や不満が強いことの裏返しでもあろう。民主党内には、石原新党がさらに離党を誘発することに警戒感がある。自民党にも、保守票の分散への懸念があるという。
石原新党が今後仕掛ける「政界再編」が、果たしてどんな波紋を広げるか見定めたい。
(2012年10月26日01時41分 読売新聞)
*****日経新聞(2012/10/26)*****
http://www.nikkei.com/article/DGXDZO47694520W2A021C1EA1000/
石原新党は何をめざすのか
2012/10/26付
東京都の石原慎太郎知事が4期目の途中で都知事を辞任し、新党を結成して国政への復帰をめざす考えを明らかにした。次期総選挙に向け、たちあがれ日本を母体に保守勢力を結集し、民主、自民両党に対抗する第三極をつくるのが目標のようだ。
1999年、都知事に就任した石原氏はトップダウンで政策を推進した。ディーゼル車への排ガス規制、東京外郭環状道路の都内区間の事業化などはその存在なしには実現しなかったと言っていい。裏目に出たのが、早々に経営悪化した新銀行東京の設立だった。
若年者の高い失業率、災害に弱い都市構造、全国で最低の出生率など東京は様々な課題を抱えている。首都高速道路など社会資本の老朽化への対応も待ったなしだ。尖閣諸島の国有化の火付け役になり、2020年の夏季五輪の誘致活動もこれからが本番である。
こうした問題を残したまま、新党の結成に動くことには無責任との批判も招くかもしれないが、知事の座をなげうつわけで、党首となって新党を結成に動くこと自体は否定されるべきものでもない。
問題は、新党が何をするためのものかということだ。どんな政治理念のもとに、どのような政策を実現しようとするのか、という点を明確にする必要がある。
焦点は、日本維新の会などとの連携による第三極の結集だ。選挙の争点になるとみられるのが(1)原発政策(2)消費税(3)環太平洋経済連携協定(TPP)――の3点だが、経済・財政、安全保障の基本的な方向での一致が必要だろう。
哲学者のヘーゲルは「国家の大変革は、2度くりかえされるとき、人びとに正しいものとして公認されるようになる」「最初は偶然、2度目は現実」と書いた。マルクスはこのくだりを念頭に置き、歴史は2度現れる、1度目は悲劇、2度目は喜劇、と言い直した。
石原氏の2度目の国政挑戦が変革につながるのかどうか。悲喜劇にならないためには理念による結合が求められる。
******毎日新聞(2012/10/26)*****
http://mainichi.jp/opinion/news/20121026k0000m070132000c.html
社説:「石原新党」結成へ 「第三極」理念が問われる
毎日新聞 2012年10月26日 01時31分
突然の表明である。13年にわたり都政にあずかってきた石原慎太郎東京都知事が辞職を表明、自身を党首とする新党を結成し国政進出を図る考えを示した。
民主、自民両党に対抗する勢力の結集をめぐる動きが活発化することは確実だ。石原氏が前向きとみられる、橋下徹大阪市長が率いる日本維新の会との連携も焦点となる。いわゆる第三極の結集論議があくまで政策本位で進むかが問われよう。
いきなりの辞職表明ではあったが、石原氏による新党構想はかねてくすぶっていた。
25日午後3時からの緊急記者会見で石原氏は新党結成の目的に現憲法の破棄や中央集権の打破を挙げた。自らが仕掛けた尖閣諸島の都による購入問題は結局、政府による国有化という形で決着した。石原氏の長男、伸晃氏が自民党総裁選で敗北したため、親子が党首として戦う展開もなくなった。そんな状況も背中を押す要因となったのかもしれない。
改憲、対中強硬路線で知られる石原氏率いる新党の参入はとりわけ「安倍自民」にとって無視できぬ競合相手の出現となる可能性もある。だが、都知事としての行動が結果的に対中関係悪化の呼び水となっただけに、新党による国政進出に不安がつきまとうことも否定できない。
再挑戦している東京五輪招致などの懸案もある。任期を2年以上残して都政を去る以上、納得できる説明がいる。会見では「中央集権の官僚制度のシャッフル」「最後のご奉公」など言葉は躍ったが、政策の輪郭を伝えたとはいいがたい。具体的政策の早急な提示を求めたい。
今後、改めて注目されるのは「第三極」結集の動向である。石原氏が強調した官僚支配打破などは確かに橋下氏らの主張とも通じる。
だが、同じ改憲の立場ながら憲法問題で「(現行憲法は)廃棄したらいい」との石原氏の主張に橋下氏は「憲法を勝手に破棄するというのは権力者が絶対に踏み越えてならない一線」とこれまで反論してきた。
また、次期衆院選の焦点となるエネルギー政策について維新の会は2030年代までに原発ゼロを目指す公約案を検討しているが、石原氏の立場は異なるはずだ。
政策の方向が共通する新勢力の連携はむしろ自然かもしれない。だが、理念にかかわる部分の食い違いを放置して反既成政党の協力を掲げても政界再編を主導するような勢力たり得るかは疑問である。
石原氏の辞職に伴い、東京都知事選も実施される。首都のかじ取り役を選ぶこれも重要な場となる。新勢力以上に問われるのは既成政党の力量である。
*****産経新聞(2012/10/26)*****
http://sankei.jp.msn.com/politics/news/121026/stt12102603200005-n1.htm
石原新党 新憲法への流れ歓迎する 首相は年内解散を決断せよ
2012.10.26 03:20 (1/2ページ)[主張]
石原慎太郎東京都知事が知事を辞職し、新党を結成した上で国政に転じる意向を表明した。
石原氏は占領下に制定された現行憲法を「解決しなければならない主要矛盾」と指摘し、新しい憲法を作るべきだと訴えた。官僚制の打破とともに、憲法改正を次期総選挙の最大の争点に据えて戦う意思を強調した。
現在の政治の閉塞(へいそく)状況を転換しようとする石原氏の行動を高く評価したい。氏が投じる一石は、新たな政治状況をダイナミックに創出する意味を持ち、憲法改正を求める保守勢力を結集する重要な核となり得るからだ。
≪権利義務の均衡を欠く≫
野田佳彦首相も「私は新憲法制定論者」と自著で語っていた。石原新党を機に、国家的課題の解決に向けて、衆院の年内解散・総選挙を速やかに決断するときだ。
石原氏は現行憲法の矛盾点として、国民の意識に絶対平和という共同幻想を植え付け、権利と義務のバランスを失した「権利偏重」の規定が「日本人に我欲を培い、利己的にした」と指摘した。
今年5月3日の憲法記念日までに、自民党は自衛隊を「国防軍」とし、石原氏と行動をともにする「たちあがれ日本」は「自衛軍」とするなど、それぞれの憲法改正案を公表した。「みんなの党」も「自衛権の在り方」を明確化するとしている。
橋下徹大阪市長率いる「日本維新の会」も憲法改正を必要とする首相公選制などを打ち出した。にもかかわらず、民主党は平成17年に国民的議論の素材となる「憲法提言」を策定して以降、新たな憲法案を出していない。
これらの問題提起を野田政権も真剣に受け止め、早急に具体的な改正案をまとめる必要がある。
最近の中国による海軍力の誇示や尖閣奪取を狙う度重なる領海侵犯、北朝鮮の核・ミサイル実験などをみれば、「平和を愛する諸国民の公正と信義」をうたう現行憲法がもはや通用しないことは、誰の目にも明らかだ。
石原氏は、激しい時代の変化にも対応できる官僚システム作りの必要性も強調した。中央官僚は「継続性にこだわり、重要課題を先送りしてきたため」、いまだに尖閣諸島に大きな灯台や漁船が避難する船だまりもできていない事実を挙げ、この問題では自民党と協力する考えも示した。
自民党の安倍晋三総裁は尖閣に公務員を配置する方針を打ち出している。野田政権は尖閣を国有化した以外は中国に配慮し、何もしていない。尖閣をいかに守るかの具体策を行動で示すべきだ。
石原都政は足かけ14年に及ぶ。3期12年間に行われた都立高学区制全廃や国旗・国歌の指導徹底、道徳教育の充実などの教育改革は高い評価を得た。4期目の今年は「尖閣諸島を都が購入する」と発表し、尖閣国有化という重要な国策の決定につながった。
≪残された課題引き継げ≫
だが、4期目は大規模災害やテロなどの緊急事態の際、都民の安全や首都機能をいかに守るかの危機管理・防災対策など難題が山積していた。東京五輪再招致の課題もある。
辞任はこれらを途中で投げ出したと受け取られかねない。石原氏はこうした批判に応え、残された課題の引き継ぎもおろそかにしてはなるまい。
石原氏が橋下氏との「連携、連帯」を強調しつつ新党結成を打ち出したことは、政界流動化の加速につながる可能性が高い。
離党者が相次ぐ民主党は、衆院の単独過半数(239人)割れまで6人に迫り、国民新党(3人)との統一会派によって危機をしのごうとしている。だが、既に衆院議員の残り任期が10カ月余となった中で、野田政権は懸案を解決できず、国民の支持を失った。
与党から石原新党への参加者が相次ぐ可能性も否定できない。過半数割れで内閣不信任決議案が可決され、首相が解散か総辞職を迫られる事態も想定される。
離党者を防ぎ、政権基盤維持のための党内融和人事に走った結果が、田中慶秋前法相の辞任を招いた。「年内解散」を明示しないために自民、公明両党との協力関係も構築できていない。
「内向き」の政権運営を続けるのではなく、新憲法作りを軸とする国のありようを競い、国民の信を問う姿勢こそ国政の閉塞状態を打破する上で不可欠である。