
昨年の10月に65歳で亡くなられた連城三紀彦さん。詩人・文芸評論家の郷原宏氏の追悼文を読んだのがきっかけで、是非作品を読んでみたいと思っていました。
「文章がうまいミステリー作家」。デビュー時の作品を、「何よりも文章が美しかった」「文体に大正ロマンを思わせる典雅な抒情が感じられる」と書いておられたからです。’84年に直木賞を受賞した作品『恋文』は、「端正で抒情的な文体」と評してあって、またまた私の気は引かれました。
思いついたときには書店に並んでいなくて、ようやく決めて読んだのが『造花の蜜』でした。地方紙で連載された小説だったことを知りましたが、私には初めての「文学としてのミステリーを追及した連城三紀彦」作品です。
久しぶりに読む推理小説でしたが、何がわかってくるのかと、筋立ての中に入り込んでいっきに読み終えました。最終章、思っても見ない、驚きの結末でした。
作品の解説は連城ファンだというドラマ脚本化の岡田惠和氏。「某古本チェーン店の、不当な程の安価なコーナーに連城本があると、なぜだか納得できない気持ちと、いたたまれない気持ちで、つい購入」してしまうらしく、『少女』が4冊、『恋文』は5冊が自宅の本棚に並んでいるのだそうです。
で、私も今日、某古本チェーン店をのぞきましたら『恋文』がありました。他に4篇、解説にも紹介されていた『ピエロ』も収められていまして、次はこれっ!と即決。
読書の楽しさとして、ただ夢中で読むという体験は初歩的な楽しみ方でしょうけれど、欠かせない要素です。