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馴染みの深い豊かな緑。
わが庵は古本紙屑「ほととぎす」
しきりにホトトギスが鳴き、喉元の仕組みはどうなっているのやら、軽やかな声が転がってくる。
荷風は「蟲の声」と続けているのだが、今日のわが庵はホトトギスに尽きた。
『方丈の孤月』を読みながら『方丈記』の原文を岩波古典文学大系で繰り返し味わっているが、長明の庵跡とされる方丈石が伏見区にある法界寺の裏、日野の山の奥にある。どんなところ? 周囲の眺めは? その場に立ってみたい。それだけの好奇心だが、推し進めた先には「なるほどー!」が待っているはず。自己満足が得たいのだ。行き方を調べてみた。
「巨岩があるだけよ」
素っ気ない物言いに、言わなきゃよかったとどこかで思うが、これもいつもの事。相棒とすべく誘いはするが、快い返事がない。
何ごともタイミングってものがある。
梅雨に入れば足場は悪いし、カンカン照りには自信なし。ああ、連れがほしい。
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タチアオイの花のやわらかさに気持ちを穏やかにして一日を終わらなくては。