京の辻から   - 心ころころ好日

名残りを惜しみ、余韻をとどめつつ…

肉と毛皮を土産にやってくる

2022年07月08日 | 映画・観劇

映画「チロンヌㇷ゚カムイ イオマンテ 白川善次郎エカシの伝承による」を見た。
1986年、北海道の美幌峠で大正時代から75年ぶりにキタキツネのイオマンテ(霊送り)が行なわれた。
このアイヌコタン(集落)の祭祀を記録した映像に、長老の祈りの言葉をアイヌ語で書き起こして現代日本語訳を付け、語りを加えるなどして補修されたドキュメンタリー。

アイヌの人々は、キタキツネは肉と毛皮を土産にして神の国から人間の国にやってくると考える。そして家族のように大切に育ててきたキツネの魂を、父と母のいる神の国へと送り返す。お返しにはたくさんの供物を持たせ、歌や踊り、酒やイナウ(木幣)を捧げ、頭骨を飾り、繰り返し繰り返し祈りの言葉を唱えて霊魂を送る。この儀式がイオマンテと呼ばれ、その様子が映し出される。


猟で仕留めたキツネではないだけに別れの辛さが滲むが、そこには死と再生の物語が浮かび上がる。〈神の国に戻ったキツネがもてなされた様子を語ると仲間はうらやましがり、肉と毛皮を土産に人間の国を訪れたいと願う〉と考えるのだそうな。
アイヌの人々にとっては草も木も神、「自然はみな神様」。「民俗の記録は古いものほど原型が残っている」「鶴やキツネに扮しての輪舞や狩猟の歌など、アイヌの芸能の原点だと思う」と北村皆雄監督が語る記事を読んだ。

祭祀を司った75歳の日川善次郎エカシ(長老)は1990年に亡くなった。長老の当時中3生だった孫君、「こうした踊りやらをずっと続けたいと思いますか」と尋ねられていたが、終始無言だった。小6の弟は「思わない」と答えていた。35年経って、兄は居酒屋を営み、弟は東京で働いていると知った。
「記録して置かないと、貴重な祭祀の姿がうずもれてしまう」と北村監督。
精神文化の継承の難しさを思う。

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2 コメント

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活動 Reiさん (kei)
2022-07-09 11:33:32
古布絵作家の宇梶静江さんの著書が現在書店でみられますが、
アイヌの精神性を伝える活動などもなさっているようです。
東京でアイヌ料理店を営む店では、開店9年目の節目に様々なルーツを持つ人たちが集まり、
建物の神に感謝を捧げる儀式「チセノミ」を始めたとか。
長老のお孫さんが東京で仕事をされているとありましたが、きっと何かの形で…。
’20年にはアイヌがテーマの初の国立施設「民俗共生象徴空間(ウポポイ)」も開業し、
民族の誇りを取り戻す環境整備が徐々に進んでいる、そうです。
「差別」という言葉を一度だけ映画の中で若い人の口から耳にしました。

私が知るのは新聞などの記事からがほとんどですが、
『熱源』を読んでから、以前よりそうした記事が目に留まるようになりました。
西條奈加さんの『六つの村を越えて髭をなびかせる者』を読んでみたいと思っています。
その前には読みかけのものを読んでから…、いつになりますか。
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イヨマンテ (Rei)
2022-07-09 09:33:46
厳粛な儀式なのですね、
二人のお孫さんには、日川善次郎さんの思いは
引き継がれなかったようですね。
昔「イヨマンテの夜」と言う歌謡曲がありました。
いい歌でした。今でも口ずさめます。

それにしましてもアイヌ関連の映画など
特殊なと思いますが
伝承する団体などがあるのでしょうか?
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