Luntaの小さい旅、大きい旅

ちょっとそこからヒマラヤの奥地まで

「ミケランジェロ・プロジェクト」&「大列車作戦」

2020-05-12 16:44:23 | 機内食・映画・美術展

先日読んだ「The Monuments Men」の映画化、ツタヤにDVDがあったので引きこもりのお供に借りてみた。

 日本語タイトルは「ミケランジェロ・プロジェクト」だが、原題は原作通り「The Monuments Men」。

原作、というか実在の人物とは登場人物の名前を変えているが、本で取り上げられている主要メンバーはほぼ網羅されていて、その配役が監督・主演のジョージ・クルーニーをはじめ、マット・デーモン、ビル・マーレイ、ジョン・グッドマンから「ダウントン・アビー」のヒュー・ボネビルまで、渋いけれど豪華。
原作の弱みである各メンバーがバラバラに行動しているので全体に散漫な印象も、実際よりも主要メンバーが集合して活動しているように変えているのでチーム感は出た。

しかし盛沢山のエピソードをかなり詰め込んでいるので、せっかくの豪華メンバーながらそれぞれの見せ場は少なくてもったいない感じ。
中で紅一点、フランスの美術館内でドイツ側の動きを見張っていた女性を演じたケイト・ブランシェットはその意志の強そうな所とか、この映画の中で一番印象的。どんな役を演じてもうまい人だ。

坑道の中に大量の金塊や美術品が目の届く先まで積まれている場面など映像ならではの所はあるし、全体に軽くユーモアをまじえているので気楽に見られる映画ではある。
しかし軽すぎて悲惨な戦場であったはずのノルマンディーへの上陸からドイツ軍を東へ追っていく過程まで、まるでピクニックに行っているか、せいぜいボーイスカウトのキャンプみたい。

あくまで娯楽映画に仕上がっているので、これは映画を見てから原作を読んだ方がいいかもしれない。


そしてもう一本、原作の中に軽く触れられている列車による美術品持ち出し阻止のエピソード。
 これを映画化した「大列車作戦」The Trainは1964年の作品。
ツタヤにお取り寄せながらちゃんとあって感激。
こちらは監督がジョン・フランケンハイマー、主演がバート・ランカスターなのでバリバリ硬派なアクション映画。

連合軍によるパリ解放の直前、盗難美術品をジュ・ド・ポーム美術館に集めていたドイツ軍将校がこれを列車でドイツに移送しようとした。これをこの美術館で見張っていたのがミケランジェロ・プロジェクトにも登場するフランス人女性で、移送計画をフランスのレジスタンスに通報し、フランス国鉄内のレジスタンス勢力が列車の進路を変えたり、車両を脱線させたりして見事に妨害したという、これは史実。

映画はこのエピソードを元にしながら登場人物の名前も変えるなど史実通りではないフィクションだそうだが、ドイツ国境へ向かうはずの列車の進路をポイント切り替えで変更すると、同乗しているドイツ人たちにばれないよう途中通過駅の駅名表示を次々に変えてしまうところなど、まるで犯罪か詐欺の映画のようで面白い。

1944年のお話なので登場するのは蒸気機関車。これをクライマックスでは進路妨害のために派手に衝突して脱線させたり、空爆シーンでは駅がめちゃくちゃに破壊されたりするのだが、なんとこれらはフランス国鉄で廃棄予定の本物をぶっ壊して、一発勝負で撮影したのだとか。今では考えられないことだろう。

サボタージュがばれると鉄道員をはじめレジスタンスのメンバーは次々に殺されてしまって、ここいらへんは上の映画とは対照的な厳しさ。
しかし考えてみるとこの映画が製作された1964年は終戦から20年しか経っていない。ナチスの恐怖もまだ生々しかったのだろう。

迫力満点のアクション映画で美術品は途中忘れられたようになるが、なぜフランス人は命を懸けて美術品を守ろうとするのか、なぜドイツ人将校は無理に移送しようとしたのかもちゃんと触れられている。
古いけれど見ごたえのある映画だ。


ところでどちらにも登場する美術館勤務のフランス人女性、本名はローズ・ヴァランといって戦後も略奪された美術品の返還に尽力し、その功績を認められたとか。
本人が書いた手記もあってその中に移送列車阻止のエピソードも登場するらしいが、残念ながらフランス語版しかないよう。
この人の話だけでも一本映画が作れそうだ。


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