Luntaの小さい旅、大きい旅

ちょっとそこからヒマラヤの奥地まで

「パピチャ 未来へのランウェイ」

2020-11-13 16:37:47 | 機内食・映画・美術展

上野から秋葉原を回って有楽町。
博物館に続いては久しぶりの映画館。なんと今年の2月に「パラサイト」を見て以来だ。

ヒューマントラストシネマ有楽町の小さなスクリーンで見たのは
 「パピチャ 未来へのランウェイ」 Papicha

映画の舞台は1990年代のアルジェリア。
登場する女の子たちは寮に住む大学生でクラブで踊ったり、おしゃれをするのが大好き。タバコを吸ったりちょっと不良がかっているが、ごく普通の女の子たちだ。

しかしこの時代のアルジェリアはフランスからの独立後の政治不安が激化、テロが横行し、イスラム原理主義グループの活動も盛んになるばかり。
主人公の女の子は普通の洋装をしているが、しだいにそんな恰好をするな、スカーフをかぶれ、と抑圧され、背景がよくわからないがジャーナリストのお姉さんは殺され、学校もひどいことになって、それらを語るのが普通の女の子目線だからこそ生々しく恐ろしい。

アルジェリアには2007年に行ったことがある
その時には内戦状態も落ち着いたということでタッシリナジェールの岩壁画が見たくて行ったのだが、何事もなく帰って来たものの道中のあちこちでやたらに検問はあるし、行程の一部ではツアーバスに警察の護衛が付いた。
その6年後には日本人9人が殺害される事件も起きて、アルジェリアはまた行きにくい国になってしまった。
しかしそれ以前のアルジェリア国内がいかにひどい状態だったか、この映画を見るまでわかっていなかったとはまったく能天気だった。

服装についていえば、2007年のアルジェリアではアルジェでこそスカーフもかぶらず普通のスカート姿の女性たちもいたが、地方に行けば頭にスカーフ、長いコートを着ている人ばかり。
特に保守的なムザブという地方では頭からすっぽりと白い大きな布をかぶって片目だけを出している姿も見たが、このスカーフは映画の中でも重要なアイテムとして登場するので感慨深かった。

この映画の監督はアルジェリア内戦時にフランスへ移住した女性だそうで、ちょっと冗長じゃないかと思うシーンもあるものの、自身の経験に基づいているからこそメッセージが明確で強い。
主役を演じた藤田ニコルによく似たリナ・クードリという女優もアルジェリア出身だそうで、国を出て活躍しているからこそ「私はこの国を離れる気はない」という主人公のセリフが悲痛に響く。

ちなみに「パピチャ」とは「常識にとらわれない自由な女性」という意味のスラングとか。
この映画、アルジェリアでは上映禁止だそうだ。


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