最近、続けざまにインドを舞台にしたミステリー小説を読んだ。
まず1冊目
「ボンベイ、マラバー・ヒルの未亡人たち」 The Widows of Malabar Hill
舞台はタイトルにある通り、1919年のボンベイ。主人公はオックスフォード卒でインド初の女性事務弁護士。本人はインドでも少数派のパールシー、つまりゾロアスター教徒で、イスラム教徒の家で起こった殺人事件に関係して3人の未亡人たちと絡むことになるのがみそ。
主人公は開明的な家の出身ながら結婚に失敗していて、その背景が殺人事件の展開と交互に明かされる仕組み。
家から一歩も出られず、男性との接触も一切できないムスリムの未亡人たちの描写も含め、100年前のインド女性の状況が本筋のいささか他愛ないミステリーより興味深い。
2冊目は英語版を読んでから翻訳が出ていると知ったこちら。
「カルカッタの殺人」 A Rising Man
こちらは同じ1919年ながら東のカルカッタが舞台。主人公はイギリスからインドに赴任したばかりの警察官で、インド人の部下を使いながらイギリス支配下のインドで白人の殺人事件を解決しようと奮闘する。
ミステリーとしてはこちらの方が本格的ながら、やはり独立運動が盛んになりつつある背景や少数のイギリス人による支配の論理などに興味が行く。
前者の作者はインド系とドイツ系の両親の元、イギリスで生まれてアメリカで育った国際人の女性作家。
後者はスコットランド生まれで会計士をしていたインド系イギリス人。
どちらもインドにルーツを持ちながら西洋人の目で100年前、独立以前のインドを描いているのが面白く、インド人はこれらの本をどう評価するのだろう。
どちらもシリーズ化されているようなので、特にカルカッタの方はまた読んでみよう。
こちら、ちょっと訳ありのイギリス人警部と、ケンブリッジ出のお坊ちゃんインド人部長刑事のチームがいかにもBBCのTVドラマになりそうで面白いのだ。
←人気ブログランキングへ一票、お願いします。