文理両道

専門は電気工学。経営学、経済学、内部監査等にも詳しい。
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書評:日本の物語文学

2014-02-03 18:47:12 | 書評:学術・教養(人文・社会他)
日本の物語文学 (放送大学教材)
クリエーター情報なし
放送大学教育振興会


 放送大学のテキストである「日本の物語文学」(島内裕子ほか:放送大学教育振興会)。古来より我が国に伝わる様々な物語について、その概略、位置づけ、特徴などを説明したものである。

 日本の物語の歴史は、「竹取物語」に始まると考えられている。この物語が成立したのは9世紀後半から10世紀初頭と推測されているが、作者は分かっていない。本書は、この「竹取物語」から始めて、「伊勢物語」、「源氏物語」と続き、近世の「浮世草子」や「読本」までの広いジャンルをカバーしている。中でも「源氏物語」の比重は大きく、全15章のうち、3章が「源氏物語」の解説となっている。

 本書の特徴の一つは、これらの物語を、「宝物の獲得と喪失」という視点で読み解こうとしているところだ。例えば、「竹取物語」では、子供という「宝物」を得られなかった老夫婦が、かぐや姫という宝物を手に入れて幸福になる。しかしやがてかぐや姫は月に帰り、老夫婦は宝物を失ってしまう。この宝物は、「如意宝」とも書かれ、これの獲得と喪失による6つの「話型」パターンが提示される。こういった視点のフレームワークを持つことは、日本の「物語文学」ならずとも、内外の多くの作品を読む上で役に立つのではないかと思う。

 同じ日本語とは言え、古文で書かれた作品を読むのは大変である。そのため、我が国の古典はそれほど読まれているとは言えない。しかし、本書を読んで、すばらしいものが、まだまだたくさん埋もれているという印象を受けた。

☆☆☆☆

※本記事は、「本の宇宙」と同時掲載です。
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