土星の衛星タイタンに生命体がいる! 「地球外生命」を探す最新研究(小学館新書) | |
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「地球外生命」の存在の可能性について論じた「土星の衛星タイタンに生命体がいる!」(関根康人:小学館新書)。本書のタイトルだけを見れば、いかにもタイタンに生命体が存在する事が証明されたかのような印象を受けるが、もしそんなことが発見されれば大ニュースとなっている。本書は、あくまでも、その可能性について論考を重ねているだけで、タイトルの最後の「!」は、「?」とした方が正しいと思う。
ところで、生命とは結局、化学反応、すなわち酸化・還元反応により活動のためのエネルギーを得ているものだ。このためには、必ずしも酸素は必要がない。実際に、地球上にも多くの嫌気性細菌が存在している。生命活動を維持するためには、酸化剤と還元剤となる物質が生命体に供給されればよいのだ。
しかし太陽系の惑星では、地球より太陽に近い金星は灼熱地獄であり、逆に太陽から遠い火星は極寒地獄で、とても生命存在の可能性は期待できそうにはない。だが、木星や土星の衛星についてはその可能性があるかもしれないという。
なぜ、太陽から火星以上に通い木星や土星の衛星に期待が持てるのか。木星や土星の膨大な質量に起因する潮汐力を熱源に、表面の氷の内部に、液体の海が存在しているからである。例えば、木星の衛星エウロパや土星の衛星エンセラダスがそうだ。
そして、タイトルにある。土星の衛星タイタン。タイタンに、90%以上の窒素と数%のメタンからなる厚い大気に覆われ、三つの海と無数の湖を持っている。その姿は地球とそっくりだそうだ。ただし、海に満ちているのは、海水ではなく液体のメタン。液体があるといっても、極寒の世界に変わりはない。著者は、もしここに生命が存在するとすれば、どんなものなのかと想像の翼を広げる。
まだまだ、生命の起源については、分からないことだらけだ。もし、本当に、これらの衛星に生命体が発見されれば、生命の起源の謎に大きく迫ることができるかもしれない。地球からの距離の問題や予算の問題といった多くの課題があるが、夢のある話ではある。本書を読んで、地球外生命の可能性について思いを馳せるのもなかなか楽しいものだ。
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※本記事は、「本の宇宙」と共通掲載です。