ももへの手紙 (角川文庫) | |
クリエーター情報なし | |
角川書店(角川グループパブリッシング) |
瀬戸内海に浮かぶ大崎下島をモデルにした、架空の島・汐島を舞台に、一人の少女が変な妖怪たちとの触れ合いを通じて成長していく物語。2012年にアニメ映画として公開された同名作品のノベライズ版、「ももへの手紙」(沖浦啓之/百瀬しのぶ:角川文庫)だ。
主人公のももは、小学6年生の少女。海洋学者だった父親を事故で亡くし、母親と一緒に、東京から汐島に引っ越してきた。ももは、父親とケンカしたままの状態で、父親が亡くなった事をずっとひきずっている。ところが、島では、イワ、カワ、マメという3匹の変な妖怪が、ももにつきまとってくる。この妖怪たちが視えるのは、ももと、クラスメートの陽太の5歳の妹の海美の二人だけのようだ。
最初はイワたちを怖がっていたももだが、結局は彼らに振り回される毎日。何しろ無芸大食で、興味があるのは食べ物と、島の子が持っているかわいいグッズ。人の家の野菜やグッズを盗んでくるのだから、ももも頭が痛い。しかし、意外な事に彼らには、ある役目があったのだ。
最初は、島に馴染めなかったももだが、島の子供たちや妖怪との交わりを通じて、しだいに逞しくなっていく。そして、嵐の日に母親が喘息の発作で倒れたときの、ももと妖怪たちの大活躍。この時ばかりは、無芸大食の3匹が頼もしく見えた。都会からやってきた一人の少女が、島の子供として成長のステップを上っていった。そんなももがとても可愛らしくいじらしい。
ところで、舞台のモデルとなった、大崎下島であるが、御手洗地区というところは、江戸時代からは、風待ち、潮待ちの港として大いに栄えたところである。 今でも当時を彷彿させる観光名所が残っており、「安芸灘とびしま海道」といって、呉市から島伝いに橋も架かっているので、興味がある人は、ぜひ訪れて欲しい。
☆☆☆☆
※本記事は、「本の宇宙」と同時掲載です。