王女のための骨董遊戯 | |
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幻冬舎ルネッサンス |
「王女のための骨董遊戯」(冬野真帆:幻冬舎ルネッサンス)、滅亡寸前の国・フローリー生まれの少女が、骨董兵器である巨偶機を操り、大活躍するという話である。
骨董兵器というから、もしかすると、「いい仕事してますねぇ~」の人が、古伊万里の皿でも投げて戦うのかと思いそうだが、もちろんそんなことはない。骨董兵器とは、大昔の文明の遺産で、使用することはできても、今の技術では作ることができないというものだ。そのうえ、「フェニックスの聖衣」ではないが、灰になっても復元すると言う優れものでもある。
中でも巨偶機というのは、1体で100万の兵に匹敵する戦闘力を持つが、若い女性しか乗り込むことができない。昔は、男性が操縦していたのだが、3千年前に世界を焼きつくした神雷により、そのような仕様になってしまったという。
この神雷をきっかけに、男性は争いの元凶だということで、主導権を奪われ、高等教育も受けさせてもらえないという、みじめな存在になってしまっている。しかし、女性が主導権を持つ世界になっても、相変わらず戦乱は続いているのだ。人の本性とは、結局こんなものだということなのだろうか。一般男性なら、高等教育を受けさせてもらえない位だが、これが王子に生まれると悲惨である。ひどい虐待を受け、まるで実験動物のように扱われてしまうのだ。こっ、怖い~!
ヒロインは、フローリー生まれのメリエラという少女。大国ジグモンディの12機部隊の一員である。12機部隊とは、ジグモンディの皇女レストアールを頂点にした、巨偶機を操る部隊のことだ。この部隊では、自分より上位者を「お姉さま」と呼ぶ慣習があるらしい。う~んw
「保護」という名目で、ジグモンディに捕えられたフローリーの王女。しかし、王女に会った時に、メリエラの封印された記憶が蘇る。彼女は、王女からフローリーの国機である巨偶機の乗り手として選ばれた叙任騎士だったのだ。
王女を逃亡させたまでは良かったのだが、何者かが王女を攫ってしまう。現れたのは、女性しか搭乗できないはずの巨偶機を操る男たち。
国を救いたい王女の心。虐げられた王子たちを助けようとする一団。様々な思惑が交差し、やがて世界に転機の可能性が訪れる。驚くべきどんでん返しも仕込まれていて、なかなか凝った構成だ。ストーリーは、この手の作品には付き物で、少し軽めなのだが、読みだしたら一気読みしてしまうくらい面白い。
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※本記事は、「本の宇宙」と同時掲載です。