文理両道

専門は電気工学。経営学、経済学、内部監査等にも詳しい。
90以上の資格試験に合格。
執筆依頼、献本等歓迎。

書評:TUGUMI

2014-02-21 20:40:51 | 書評:小説(その他)
TUGUMI(つぐみ) (中公文庫)
クリエーター情報なし
中央公論社


 これが私のよしもとばなな初体験、「TUGUMI(つぐみ) 」(中公文庫)。まだ著者名の表記が「吉本ばなな」のころの作品で、1989年の山本周五郎賞受賞作であり、1990年には、牧瀬理穂主演で映画化もされている。病弱なためにわがままいっぱいに育てられた美少女・つぐみとのひと夏の体験を、1歳上の従姉である白河まりあを語り手として描いた青春小説だ。

 まりあは、漁師町で旅館をやっている叔母夫婦の家に、大学の夏休みを利用して遊びに行く。ここは、以前まりあが、父親の愛人だった母親といっしょに住んでいた場所だったが、父親が先妻との離婚が成立したために、現在は、家族そろって東京で暮らしている。

 叔母夫婦は、来年の春には、旅館を畳んでペンションを始めることを決めている。これは、まりあが、その漁師町で過ごしてた最後の夏の物語だ。

 つぐみが病弱なのは生まれつきで、体の機能にあちこち欠陥を抱えている。だから、直ぐに熱を出して寝込んでしまう。町一番の美少女だが、驚くほど我儘で傍若無人でいじわるで毒舌だ。ただし外面だけは良いらしい。

 しかし、まりあも、つぐみの1歳上の姉の陽子も、さんざんつぐみに振り回されているのに、決して彼女のことを嫌ってはいない。常に死に身近ながらも、ものすごいパワーを見せる。いたずらだって、仕返しだって、全力でやる。 悪知恵は働くわ、口は悪いわで、とんでもない性格なのだが、読んでいくうちに、彼女の我儘さのなかにも、まっすぐさがあることに気付くのである。それをまりあも陽子も感じているのだろうか。

 強烈な個性ながら、不思議に可愛らしさを感じさせるつぐみ。そんなつぐみと彼女を取り巻く人々の物語は、どこかノスタルジックでもある。

☆☆☆☆☆

※本記事は、「本の宇宙」と同時掲載です。

コメント
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