文理両道

専門は電気工学。経営学、経済学、内部監査等にも詳しい。
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書評:アインシュタインの宇宙 最新宇宙学と謎の「宇宙項」

2014-02-08 20:35:49 | 書評:学術教養(科学・工学)
アインシュタインの宇宙 最新宇宙学と謎の「宇宙項」 (角川ソフィア文庫)
クリエーター情報なし
角川学芸出版


 古典物理学と呼ばれる力学、熱力学、電磁気学は、19世紀には完成しており、かっては、これらを使えば、世界のあらゆることは解明できるかに思われていた。しかし、古典物理学には様々な問題が立ち塞がる。そこから、量子論、相対論が生まれてきた。現代の自然科学は、この二つの基礎の上に築かれたと言っても過言ではない。この2つの理論に大きな貢献をしたのがアインシュタインである。

 1905年は、まさに奇跡の年であった。彼が立て続けに発表した3つの論文、すなわち光量子仮説、ブラウン運動、特殊相対性理論は、その後の物理学の発展に大きな影響を与え、現代物理学の基礎を固めるものだった。

 光量子仮説は、量子力学の基礎となるものだったし、慣性系のみの理論である特殊相対性理論は、彼の手で加速度系も扱える一般相対性理論に拡張された。この一般相対性理論こそが、宇宙を記述するためのアインシュタイン方程式を与えるものである。まさに、アインシュタインこそ、20世紀における物理学界最大の巨人なのだ。

 本書は、アインシュタインの業績を核に、ブラックホール、宇宙の膨張、ビッグバン、大統一理論、宇宙創成のシナリオ、アインシュタインの宇宙項の復活などの様々な興味深いテーマを展開している。

 アインシュタインが、これらの理論の発展に直接、間接に大きな貢献をしていることは疑うべくもない。しかし、その一方では、宇宙は静的であるという信念にこだわるあまり、後進の学者たちを結構困らせていたようだ。例えば、フリードマンが導いた、宇宙が膨張したり収縮したりするという可能性を認めなかったし、ルメートルの算出した膨張宇宙の可能性に対しても、手厳しい評価を下している。他にも量子力学の確率的解釈を認めようとしなかったり、ブラックホールの可能性も否定しようとしたりと、困ったおっちゃんぶりもかなり見せている。だからと言って、それでアインシュタインの偉大さが、否定されるわけではないのだが。

 本書は、文庫版だが、かなりの盛りだくさんな内容である。よほど現代物理や宇宙論に詳しい人でない限り、すらすらと読むことは難しいだろう。しかし、だからこそ、知的好奇心を刺激されることは間違いない。この内容を、理解しておけば、星空をまた違った目で見ることができるのではないだろうか。

☆☆☆☆☆

※本記事は、「本の宇宙」と同時掲載です。

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