文理両道

専門は電気工学。経営学、経済学、内部監査等にも詳しい。
90以上の資格試験に合格。
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書評:炎と茨の王女

2014-02-07 21:46:14 | 書評:小説(SF/ファンタジー)
炎と茨の王女 (創元推理文庫)
クリエーター情報なし
東京創元社


 美しい少女のイラストが目を引く、「炎と茨の王女」(レイ・カーソン/杉田七重:創元推理文庫)。こんな可愛らしい女の子が、この作品の主人公かと思って読み始めると、きっと読者は戸惑いを覚えることだろう。

 なにしろ、主人公のルセロは、オロバジェ国の第二王女ながら、無類の食いしん坊。かなり横に広がった体形のようだ。姉は美しいのに本人はまったく容姿に自信なし。しかし、戦略書を一冊暗記する位読みこんでいるうえに古代語にも堪能。ただものではない予感を抱かせる。

 そのうえ、彼女には、他の人に無い物がある。臍にゴッドストーンを帯びて生まれたということだ。ただし、誰もこれがどういうことなのかを知らない。 

 そのヒロインが、隣国の王・アレハンドロと結婚。ところが彼の国への道中、敵に襲われ、いきなり侍女が死亡する。正に、波乱の幕開けだ。結婚した王は、イケメンだけが取り柄。ヘタレで優柔不断でおまけに愛人持ち。なぜか、ルセロと結婚したことは秘密になっている。

 ルセロは、アレハンドロの愛人である女伯爵の領地に滞在している時に、ゴッドストーンを帯びているために、砂漠の民に拉致されてしまった。ところが、ここから王女の大冒険が始まる。砂漠の民はすでに敵との戦乱の中にあった。王女は、そこの民たちから信頼を得て、悪霊団を組織し、敵と対決することになるのだ。

 この体験が王女に大きな変化をもたらすことになる。巨大だった体は砂漠の生活の中で引き締まり、見違えるように美しく大変身。ここでやっぱり表紙イラストの少女は、ヒロインだったと納得するだろう。どの位美しくなったかというと、結婚した王と再開したときに、彼女と気が付かず、鼻の下を伸ばしているほどだ。

 もっと変わったのは内面的なところである。自分に自身がない代りに、体重だけはあった少女が、敵との戦いの中で逞しく成長していく。これはそんな物語なのである。久しぶりに面白いファンタジーを読んだ。続きがまだあるようなので、今から発売されるのが楽しみである。

 ところで、ルセロ、自分に最初の頃から友情を示してくれたヘクトール卿に、「美しい王妃になられて」と言われたときにこう答えている。

 「一か月、二か月、焼き菓子を食べ続けてれば、また元の黙阿弥」

 いや、このままダイエットを続けた方が良いと思うぞ(笑)

☆☆☆☆☆

※本記事は、「本の宇宙」と同時掲載です。

コメント
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