よく間違って使われる日本語を、本来の意味や使い方などといっしょに漫画で紹介した、
「えーっ! これ、言い間違い!? (知っていないと恥ずかしい日本語)」(かおり&ゆかり:飛鳥新社)。
歳の功のためか、知っているものもだいぶあるのだが、案外と誤解していたことも多く、なかなかためになる。一読すれば、話の種にできそうなものがたくさん見つかるだろう。双子だという著者のお二人の描く漫画も、ほのぼのとしたタッチでなかなか楽しい。
ただ言葉の場合は、何が正しいのかというのは、なかなか難しい。同じ日本語でも、時代と場所で変化していくからだ。時代とともに変化する例としては、源氏物語のような古典文学と現代の小説を比べてみれば良いだろう。言葉の時間変化を間違っているというのなら、今でも、「とっても可愛らしい」というのを「いとかなし」なんて言わないといけなくなってしまう。
もっと卑俗なところろでは、若者たちが良く使う「ヤバい」という表現がある。これは、元々「危ない」といったような意味で、あまりまっとうな事をしていない人たちの間で使われていたスラングだったのだが、今の若者は、「すごい」事を表すための褒め言葉としても使うと言うから驚きだ。
言葉の場所による変化の方は、方言をあげれば十分だろう。山口弁では、機械が故障する事を「破れた」という。例えば「冷蔵庫が故障した」ことを「冷蔵庫が破れた」というのだが、これを他の地方の人が聞くと、冷蔵庫に穴でも開いたのかと思うらしい。でも、方言が正しい日本語でないと言われると、地方の人は怒ることだろう。
結局、言葉というのは、あるコミュニティの中での約束事でしかないのだ。だから、犬のことをこれから「ほじゃほじゃ」と言おうとするのなら、コミュニティ内でコンセンサスさえ得られれば良い。「世論」の読み方も本来は「せろん」なのだが、間違って「よろん」と読む読み方が社会に定着してしまい、今はどちらも辞書に載っている。
だから、本書にある「正しい」使い方というのは、本来はこうだと言う位に考えた方が良いかもしれない。もしかすると、あと何十年後には、本書にある間違った使われ方が、堂々と辞書に掲載されているかもしれないのだから。
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※本記事は、
「本の宇宙」と同時掲載です。